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教室長コラム

花まる学習会アルゴクラブ教室長による、子どもの成長に関したコラムです。

ぜひご覧ください。

~年末特別版:アルゴの教室より、実況中継~ 読む▼

早いもので、アルゴクラブの授業も折り返し地点を過ぎてしまいました。4年生は、あと半年も経たぬ間に卒業です。本当にあっという間です。
今回は「年末特別版」と題して、授業を通じて感じた子どもたちの成長の軌跡を綴ります。
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「そこひいちゃったかー…」
このセリフは平面図形パズル「ジオ」の問題を解いている際に1年生のSさんが放った一言です。それは、問題開始から数分たち、ヒントを与えようとした時でした。
彼女の心理としては、“そこがわかってしまったら、あとのところもわかってしまうからつまらない”といったところでしょうか。裏を返せば、今自分は、どこがわかっていなくて、でもどこがわかればこの問題が解けるか、要点を理解している証拠です。
絵を見て、頭の中で補助線を引き、ピースを適材適所に置いていかなければ正解にたどり着かないジオの問題。徐々に補助線の引き方がわかってきているからこそ、出た言葉だったのでしょう。
私が与えたヒントを、結局両目を手で覆って、見なかったSさん。最後は、「やっぱりここに引けばよかったんだね」と満足げな表情を浮かべて完成させました。
 
「いい方法あみだした!」
2年生の授業で行った白黒迷路。類題も3回目になり、難易度も少々上がってきた。「わからないかも…」「今日の問題はレベル高い…」という弱気な声もちらほら聞こえてきました。そんな弱気な雰囲気はすぐに教室に伝染します。多くの子が、「できないかも」と思ったその時です。その言葉を打ち消すかのように、「あみだした!簡単にゴールにつく方法!ゴールできた!」と喜ぶ声が聞こえてきました。いつも、ナンバーリンクや詰めアルゴでは、手が止まりがちなNくんです。
「ゴールから進んでいけばいいんだよ。わかるところまではスタートから行って。それを連結させればクリアできる!」と誇らしげに教えてくれました。自分で考え出した道だからこそ余計に嬉しかったのでしょう。心からの喜びは弱気発言同様、クラスに良い空気をもたらします。
そこから教室中が「できた!」「よっしゃあ」の大合唱。小さな成功体験は、教室の雰囲気をも、一瞬にして変えてしまう力があることを、Nくんは証明してくれました。
 
「全国大会を終えて」
11月に行われた全国大会。南浦和校からは4名が大舞台に立ちました。翌週、全国大会を終えて初めての授業の時のこと。全国に出た子どもたちの表情が合わせたかのように、明るいことに気が付きました。何か、重い肩の荷が下りたような、大きなプレッシャーから解放されたかのような晴れ晴れした表情。
大会前、「緊張していない」とは言っていましたが、やはり見えないプレッシャーが子どもたちにはかかっていたのだと思います。
子どもたちは大会前の彼らとは全くの別人でした。純粋に、ただ目の前のアルゴゲームを楽しんでいる様子が見て取れます。
アルゴゲームに勝敗は付き物。ですが、大前提として、数字を使って相手の心理や、論理性を考え抜いていくことを心底楽しんでほしいと心から思います。 
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ここには、書ききれませんが、子どもたちは毎週、変化し続けています。教具やプリント問題、アルゴゲームに対して、頭を常にフル回転させている子どもたち。それが、「できたー!」「やったー!」「この問題、どうすればできるのー?」などの言葉となって外に発信されます。考えぬく爽快感・快感を知っているからこそ、毎回の授業で楽しそうな表情を浮かべるのだと思います。
成長とは、小さな心の変化。それは目に見える大きな変化の時もあれば、目には見えない小さな変化の時もあります。たとえ小さな変化だったとしても、いずれ目に見える成長へとつながる日が来ます。そう信じて、今後も子どもたちと全力で向き合って参ります。  

『悔しさは、振り切らずに』  2016年 11月 読む▼

昨年度勝ち取った優勝旗をシグマチームが返還し、最後には再びシグマチームが優勝旗を授かる。アルゴ杯2連覇・名人戦個人第3位・ペア王戦第2位と、華々しい成績を残し、全国大会の幕が閉じました。
入賞し喜ぶ子がいるその裏で、悔しい思いを抱えて仲間のもとに帰る子たちがいます。3年生のMくんもその一人でした。
 
 閉会式終了後、花まる学習会の選手で一度集まろうと考え、子どもたちに声をかけていきました。真っ先に会えたMくんにまずは、どうだった?と尋ねると
「ああ、まあ」
と生返事。ほかの子にも急いで声をかけるつもりだったので、矢継ぎ早に、今日は早く帰る必要があるか?と確認すると
「たぶん、すぐ帰る。」
という返事。集合したいから残っていてほしいと伝えると、Mくんはうなずきご両親のもとへ向かいました。

他の子にも声をかけていると、Mくんのお母さんが私のもとへ。
「Mが今、泣いて悔しがっていて…。頭もいたいから帰るといっているんです。もう先生にも合わせる顔がないって。まさかMが泣くほど悔しがるとは、思っていませんでした…。」
ご両親のもとに戻って緊張の糸が切れたのか、抑えていた思いがあふれてしまった。悔しい。
 
常日頃ニコニコしていて、こうでしょ!こうしたほうがいいよね?と前向きに考えているMくん。確かに、代表に選ばれてからの授業や居残り特訓では、ニコニコしているよりも引き締まった顔をしているほうが多かったかもしれません。それだけ強い気持ちを持っていた。だからこそ、悔しい。

私はMくんに話しました。
「泣いていいんだよ。泣くほど悔しかったんだろう。それだけMが本気だったってことだな。それがカモンはうれしいし、すごいことだと思っているよ。
 この悔しさはそのままとっておこう。でも帰る前に、最後に、みんなで一度挨拶をして帰ろう。」
Mくんとともに花まる代表選手のもとへ向かいます。
最後の集合写真では、Mくんは入りたがりませんでした。そんな晴れ晴れしい場所にいる気分ではない。
「M、悔しさを形に残していくんだ。これからも強くなっていくために。」

頑張ったじゃないか、よくやったじゃないか。そう声をかけることもできたかもしれません。悔しい気持ちも、すぐにこの場を去りたい気持ちも、よくわかります。ですが涙を流すほどの悔しい感情を簡単に流してしまうよりも、自分の中に留めて、見つめてほしい。
 集合写真を撮っている間、Mくんは悔しさは押し殺していました。自分の中にしまい込むように。
「また今度の授業でな。」
という言葉に、かすかに頷いてくれました。
 
 翌日、お母さんに電話で話を伺いました。
「実は家に帰ってから、『今日一番初めにやることだよね』と言って、すぐに感想の作文を書き始めたんです。自分の中のもやもやした気持ちを書きたかったみたいで。『よしっ!』ってスッキリしていました。
 反省会みたいなこともして、もう前を向いています。本当に、精一杯頑張ったんだと思います。いい舞台で、いい経験をさせていただきました。」
 
悔しい気持ちにしっかり向き合って、言葉にして、飲み込んだMくん。彼の中にしっかりと残った「悔しさ」が宝物として残り続け、今すぐに、そしてこれから先も、実りゆく糧になることを、切に願っています。

『独り言』  2016年 9月 読む▼

授業中に子どもの様子を見ていると、挙手と同時に答えを言ったり、考えながら独り言を言ったりする子がいます。「これがそこにあぁなるから……わかったっ!」と周囲を全く気にすることなく、自己完結していく子どもたち。まるで頭の中を実況中継しているようで面白い。その姿を見つけると、思わず近くで耳をそばだててしまいます。
しかし、お母さん心理で本音を言えば、独り言ではなく、内言できないものか。落ち着きがないように見えてしまう。授業やテストを意識して、静かに考えてほしい。そんなところではないでしょうか。こちらの話は一切耳に入らず、ぶつぶつ何かを唱えている我が子をどうしていいか分からない、というご相談をいただくこともしばしばあります。

私は現場の感覚で、独り言と内言は同じものであると考えています。脳がまだ発達途上であるため、内言をうまく使えない幼児期に独り言が多く見られる。独り言も内言もそれを発する以前に、内容は無意識のうちにできており、発することによってその内容を意識できるのだろう。
そんなことを考えているときに、上記の考えは「ワーキング・メモリ(作業記憶)」という言葉と結びつきました。短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。具体的に言うと、繰り上がり・繰り下がりの筆算や2桁の掛け算などを頭の中で行う際に使う一時的な記憶力のことです。
思考力を伸ばす上で切り離せない能力であり、その容量が大きいことが地頭のいい子の特徴でもあります。ここで何が言いたいかというと、先述の独り言は、短期記憶情報を一時保管しておく場所が、独り言(有音)による耳保管なのか、内言(無音)による心保管なのかが違うだけ、ということ。つまり、今子どもたちが発している独り言は、次第に内言に変わり、ワーキング・メモリを鍛えていることにつながると言えるでしょう。

 先日の授業。Tのキレっぷりは昔から変わらずなのだが、難易度の高い問題に対峙した時の反応に変化が見られた。かつてのTであれば、思っていることが全て拙い言葉に変換されて、ボヤきと共に溢れていただろう。粘って考えた挙句、それでも分からなければ、何かしらの理由をつけてその場では解ききらなかったかもしれない。ただ、その日のTは違った。無言で何やら指を動かしている。よくよく見てみると、口が動いている。声は出ていない。無音で独り言。それに合わせるかのように指が連動している。自分が使える全ての道具を総動員して、目の前の山を登ろうとしていた。まさに思考力が試され、それと同時に鍛えられている瞬間だった。
ヒントを出そうとしていた講師と目が合い、首を横に振った。今、自力でその山を登ろうとしているTにヒントやアドバイスは不要だと感じ取った。しばらく見ていると、それまでの動きが小さくなっていく。目はキョロキョロと問題の上を行き来し、口元が緩み始める。次の瞬間、
「…よっしゃ。」
小さく声が漏れた。

 独り言は健全な成長過程であることは間違いありません。むしろ、重要な思考パーツを組み立てたり、整えたりする役割を担っていると言えます。大人にとっての当たり前は、子どもにとっても当たり前というわけではありません。独り言が多く、一見落ち着きがないように見える子どもたちの頭の中は、今日も思考の世界で自由にのびのびと遊びまわっています。

『「期待しない」という愛情』  2016年 7月 読む▼

7月10日、お茶の水でアルゴカップが行われました。各教室から多くのお子様が参加してくれました。アルゴカップ前日、教室では「明日は普段の練習の成果を出せるように、めいっぱいがんばってね!」と伝えました。アルゴゲームが得意な子は、口々に「優勝したい!」と言っていました。大会当日、私もスタッフとして子どもたちを迎えました。ほとんどの子が試合前の受付から緊張していました。会場全体も張り詰めた空気がただよっています。私は、このアルゴカップの雰囲気が大好きです。このアルゴカップの雰囲気が子どもたちを成長させてくれます。自分が納得いく結果を出せた子、悔しい気持ちを残した子、さまざまだと思いますが、どちらの気持ちも成長の糧になるはずです。

 今大会で、人一倍気合いを入れて参加したKくん。アルゴカップ開催の話をしてからずっと「絶対優勝したい!」と言っていました。Kくんは、とても負けず嫌いな性格で、授業内にお友達がキューブの高積み40段に成功すると、1週間猛特訓をして、次の週までにできるようにしてきます。1年生のころは、アルゴゲームで負けるたびに悔し涙を流していました。逆にうまくいったときはものすごくうれしそうにしています。

今大会での開会式前、私はKくんに気付き手を振りました。いつもなら「バズ~!」と言いながら、手を振り返してくれるのですが、大会当日は、軽く会釈をするだけでした。その後、Kくんが席に着いたところで、私はお母さんのところへ挨拶に行きました。「こんにちは!がんばってくださいね。」と伝えると「ありがとうございます。私は勝っても負けてもどちらでもいいですよ。」とクールな言葉が返ってきました。「えぇ~!Kくん、昨日すごい気合い入っていましたけど、お母さん、期待してないんですか?」と聞いてしまいました。するとお母さんは「子どもに対しては、期待しないんです。好きだからこそ、期待しないようにしているんです。」とおっしゃっていました。深い言葉に私も言葉が出ませんでした。

大会では、Kくんが見事優勝しました。表彰後、大喜びだったKくんに対してお母さんは「よかったね。自分が納得いく形で終えることができて。」と声をかけていました。おそらくKくんが優勝できなくても「よかったね。次がんばれるね。」と声をかけていたことでしょう。私は進学部問のスクールFCにも所属をしています。受験現場ではやはり親御さんや我々講師は「がんばって受かってね」と声をかけます。子どもたちはアルゴゲームであろうが受験勉強であろうががんばっています。そこに対して、「期待しないで、ありのままを受け入れる」ことができるお母さんを見て、現場の指導者として子どもたちにかける声かけを考えさせられました。

『生み出す』  2016年 6月 読む▼

花まるアルゴクラブには、「作問タイム」というものがある。
「ジオ・Iキューブ・マジカルスティック」という教具を使って作る図形問題や数式問題から、ナンバーリンクや詰めアルゴという論理的に順序立てながら解き進めるプリント問題まで、その種類は様々である。 
 
自ら、ああでもない、こうでもないと試行錯誤を重ねて作った問題が、月末の「お便り問題」に掲載されれば、自身が通う教室にとどまらず、花まるアルゴクラブに通うすべての子どもたちに解いてもらえる。実際にお便りに問題が載った時の子どもの表情は、言葉では言い表せないほど、充実感に満ち満ちたものである。有名人にでもなったかのような、そんな誇らしげな表情が実にまぶしい。 

「お便り問題に自分の名前を載せたい!」。そんな気持ちが、確かに作問へのモチベーションを高めている。 
 
4月に入会した3年生のS。4月末のお便り問題を見て、一言つぶやくように言った。
「これ、結構むずかしいなー。スティックが作ったの?」
Iキューブを使って解く「トライアルキューブ」という問題。どこにどのキューブを置けば良いのかわからず、思っていた以上に苦戦していた。しかし、表情は明るい。試行錯誤を繰り返しながら、思うように正解にたどり着かない現状を楽しむかのように、夢中になって問題に挑んでいる。そんなSに、私から伝えた。
「問題の下を見てごらん。校舎名と名前が書いてあるでしょう。アルゴに通っている友だちが作ったんだよ。」 
 
その一言に、Sは思わず「えっ!」と大きな声を出した。そこから、Sの作問意欲がぐんぐん増したことは言うまでもない。2週間後、教室にてカラーでプリントされた2枚の紙を渡された。その紙には、ジオとIキューブを使って作り出した問題が、所狭しと並んでいた。一つ一つタイトルが書かれており、「動物と乗り物シリーズです!」と自慢げに教えてくれた。

あまりによく作られたその2枚の紙によく目を通すと、端っこに「NO.1」と書かれている。どういうことかとSに聞くと、「作品集にするの。NO.2、NO.3もこれから出来るよ!」という返答が返ってきた。家では、誰に言われるでもなく、教具を持ち出しては、黙々と問題作りに没頭しているという。
 
完成度にもよるが、言わずもがな、「何かを0から作り出す」ということは容易なことではない。世に放たれている「ヒット商品」と言われるものも、もとを辿ればどこかの誰かが「こんな商品が世の中にあったらいいな」「誰かの手に渡ればいいな」という想いから作られたに違いない。 
そこには決して強制や、義務は存在しない。アソビの感覚を持ち続け、「自分の意志・好奇心・意欲」の中でこそ、生み出されるものだ。
 
今年度は、子どもたちの作問に対する意欲が非常に高いと感じる。その小さな積み重ねが、子どもたちのソウゾウ(想像・創造)力をぐんぐん高めていく。そのどれもに自身の想いが詰まっており、また「誰かの手に渡る時」を想像する他者性が盛り込まれている。そんな作品のすべてを、認め続けていきます。
  
Sの作品が花まるアルゴに通う子どもたちの手に渡る日は近いかもしれない…。

『裏返し』  2016年 5月 読む▼

始まって2ヶ月。1年生は本当に遊びのようにアルゴゲームを行っています。勝敗を気にする子もいますが、
「そしたらここは3でしょ~!」
とわかっちゃったことを誇らしげに言ってしまったり、
「だからさー、ここが5なんだから、ここは、ね!」
「そうそうそこはあれだよね!」
と他の子に教えてあげたり、勝ち負けではなく自分がわかっていることがうれしくてたまらなく、その感動をみんなに聞いてほしい!という子ばかりです。これから1年間かけて、遊びの中で考えることを楽しむ、という土台を育みます。
2年生以上のクラスでは、毎月末に月例大会を実施します。決勝戦の雰囲気は息をのむほど。決勝戦後は感想戦も行うのですが、見ていた子どもたちが
「この1はこの時にわかったじゃん!」
「こっちにアタックしたほうが良かったよね。」
と意見を言いたくなるほど、考えています。

勝負事、となると、良くも悪くも力が入ります。そういうときこそ、子どもの心は露わになりやすい。
 2年生のTくん。1年生の時はまさに冒頭のような無邪気さでアルゴに取り組んでいました。年度末の花まるアルゴカップを経て、さらに気合が入ってきたところ。授業ではたくさん発言をし、いつも笑顔で意欲的。まさに教室のムードメーカー。そんなTくんが4月末の月例大会で、いつにもまして饒舌になりました。
「え~カモン~。別に勝たなくってもいいんでしょ?」
「適当にやろ~。ねーこれアタックしてもいいよ~。」
 いつものTくんからは、考えられない言葉でした。私が真顔で驚いてしまうほど。どうしたのだろうかと思い、ゲーム中ではありましたが呼び出しました。すると
「え、嫌だ」
と呼び出しを拒否。いやいや、ちょっとお話したいだけ。そう伝えて別室に移動する最中、Tくんはもう涙をボロボロこぼしていました。
「どうしたの?」
ますます泣き出すTくん。ようやく口にしたのは
「負けそうだったから…」
 
「そうだったんだね。負けたら、悔しいのかな。」
うなずくTくん。
「つまりね、Tは勝ちたいっていうことだよね。」
うなずくTくん。
「でもねT、アルゴゲームは、負けることだってあるよ。それは、どうしようもないよ。でもできるだけ、勝てる人になりたいか?」
私の目を見て、うなずくTくん。
「じゃあ、アドバイスをあげる。適当にやらないこと。Tが適当にやっている間、一生懸命考えている人がどんどん強くなっていくよ。Tだって、一生懸命考えれば同じだけ強くなっていくはず。わかるね?」
涙は収まりました。
「T、適当だなんてかっこ悪いことは言うな。真剣に考えている奴が、一番かっこいいぞ。」
そういって、席に戻しました。
 
結局Tくんは決勝に勝ち上がれず。しかし決勝戦を見る目は真剣で、自然と手は口元に運ばれていました。
翌週、いつものお調子者に戻っていたTくん。しかしアルゴゲームの時に
「T、わかっているよな?」
と尋ねると、にやりとした顔でうなずきました。

 ただ無邪気に楽しんでいた時期から、勝負事として真剣に取り組みたい時期に進んだTくん。卑屈な発言は、「こうありたい」という気持ちの裏返しです。自分に期待があるからこそ、不安にもなる。向くべき方向は後ろではなく前だ、と分かれば、進んでいけます。

『自分で決めて最後までやりきる』  2016年 4月 読む▼

新年度が始まりました。皆それぞれ学年が上がり、期待と不安が入り混じった緊張を感じているかと思います。アルゴクラブでも1年生や新入会の子が入塾し、昨年度とはまた違うメンバーでの授業がスタートしました。今年度もどうぞ宜しくお願いいたします。
話は遡って、およそ1ヶ月前。4年生が卒業していきました。4年生まで精一杯通い続けた子どもたち。その中にNという女の子がいました。

Nは周りの友だちに優しく、積極的にコミュニケーションをとる子でした。しかし、自分にはどこか自信がなく、授業中はマイナスワードのオンパレード。「こんなのできないよ」「私できない!」「やんなくてもいいや」 など…。秋頃には休みがちになり、「授業の内容についていけない。分からないことが多くなった。土曜日に別の習いごともあり、大変。」という理由でアルゴを辞めたいとお母様からメールが届きました。

 すぐに電話をして、真意を聞きました。とにかくモチベーションが下がっている…。お母様と話をしている中で、最終的にはN自身が続けるかどうかを決めるということにしました。その後、何度も授業のときにNと話をしました。そして、自分で「続ける」という決意をしました。それからというもの、少しずつNの気持ちにも変化があったように感じます。授業内の発表する場面では今までよりも積極的に手を挙げたり、「これ簡単、やり方分かる!」と前向きに考えたりするようになり、表情も明るくなりました。

数ヶ月経ち、アルゴの最後授業を迎えました。授業では毎回『本日の授業で感じたこと』を書きま

す。普段の授業では一言二言書いて提出してくるN。しかし、最後の授業の日は違いました。自分が成長した姿を自分の言葉で綴っていました。

「3年間アルゴをやってきて友だちがたくさんできて、苦手だった算数も今では自分の得意なきょうかになりました。 アルゴカップではシグマ賞(ポイント王)、1位、2位、3位、4位にはなれなかったけど、とても楽しかったです。先生たちがやさしく、時にはきびしく考えてくれたことが一番の思い出です。アルゴでの授業を学校での生活にいかして、むだのない2年間をすごしたいです。」

正直、驚きました。自分の言葉で素直に書かれた最後の感想には、様々なことへの想いがギュッと凝縮されていました。

授業後にお母様に電話をすると、帰り道に泣いていたといいます。私たちの前では全く見せなかった涙。我慢していたのですね。お母様は1つのことをやりきったNを褒めてくれました。

 自分で決めてやりきったことで「自信」を得ることができたのだと思います。そしてこの「自信」はこれからの支えになっていくでしょう。

今年度も始まったばかりですが、アルゴに通う子どもたちがこの1年間でどんな成長を遂げていくか今から楽しみです。「自ら考え、やり遂げられる子」になっていくように指導を続けて参ります。

『自ら間違える』  2016年 2月 読む▼

教室の子どもたちが授業開始まで主に何をしているかと言うと、夏期授業に行った『アルゴナイト』『マジカルバトル』『Iキューブ ラストワン』。多くの子が対人ゲームを好んで行っています。盤は1つしか用意していないので、対戦する二人を数人の子どもが取り囲み、各々考えながら試合を観戦しています。人と行う試合の奥深さを肌で感じているのでしょう。
1~2年生であれば、試合後はあっさりしたもので、すぐに次のゲームに取り掛かります。勝負の高揚感を得たくてたまらない。しかし3~4年生にもなれば、自然と感想戦が始まります。
「ここはさ~、こうしないといけなかったでしょ」
「でもこっちに置かれたら…」
そういったやり取りが、実力を高めていきます。
 
ある日の居残り特訓、3年生の男の子Rと1対1でIキューブラストワンを行いました。私が普段子どもとラストワンを行うときは、一度勝ったうえで
「じゃあ勝つためにはどうしたら良かったのかな?ここに置いた時点で負けちゃうから~」
と私主導で感想戦を行います。しかしその日は、Rが自ら感想戦を始めました。
「あぁ~そこに置いたら負けるか~。ちょっとまって、じゃあこっちに置いたら、でもここに置かれてダメか。ん、じゃあこいつをこっち?あ~でもそれもこう置かれるし…」
口よりも早く手が動き、ピースの出し入れを繰り返す。対戦相手であったはずの私はお構いなし。それは感想戦というよりは、さながら一人検討会でした。私はRが見落としている可能性をたまに伝えてあげるくらいで、ほとんど口を挟まず。私でも見えていなかった逆転できる手を導き出すこともありました。
 
感想戦は、場合分けを繰り返し行っていきます。これができるようになるためには、ある程度の『経験値』が必要です。なぜかというと、場合分けは『自ら間違える』ことが前提となるからです。経験値をまだ積めていない子がまず求めるのは『正解』です。何をすべきだったのか、という正解が知りたい。むしろ、間違えてしまうことについては目をつぶりたくなる。まだ間違えるということに直面できないのです。

Rが1年生のころは無邪気を人の形にしたような、いわば幼い子でした。勝負事についても、勝てないことを嫌がり、実力で勝てないことをごまかすためにわざと自分を不利にする。それでも、アルゴは楽しくて、勝ちたいと思い続け、そうして3年生の今。場合分けを行い「これは間違い」と自分で判断する。何度も繰り返し、最終的に勝ち筋を見つけて「これか~!」と満足する。この『最後に分かればいい=答えではなく、考えていること自体が楽しい』という感覚が、経験総量を増やし、論理的思考力の定着を飛躍的に伸ばしました。
何がきっかけでそうなったのか、というターニングポイントは、なかったように思います。何か大きな出来事があったから、大きな悔しさがあったから、そんなことは特にない。ただただ、考えることの快感、勝負の高揚感を得続け、それが3年生という心身の成長に合わせて発露しただけ。そう考えています。
 
「うちの子、できるようになっていますかね?全然そう感じなくて…」
とご相談いただくことがあります。私は授業の姿を見ているので
「お、ここでしっかりその可能性を考えられるようになったんだな」
「自然と筋道立てて考えられるようになったな」
と日ごろ感じております。同時に
「私生活や学校の勉強では見えにくいだろうな」
とも。3年生が一つの発露の時期。さらに言えば4年生ともなると、骨っぽい考え方ができるようになったとはっきり感じられます。そこでどのくらいの成長が見られるかは、2年生までに『いかに楽しんでいて』『経験を積んでいけるか』にある。Rにそのことをはっきり証明された、感慨深い特訓でした。
 
さて、そのRとの特訓の、最後の10分。私からの特別講座として、戦略指導を行いました。場合分けが定着していなければ、聞いてもちんぷんかんぷんになるだけ。しかしRは、一つ一つの指導を全力で吸収していました。笑顔は無いけれど、頭はフル回転しているのが目の前で見ていて強く伝わってくる。大人の顔をしていました。

『たった1つのきっかけから』  2016年 1月 読む▼

新年あけましておめでとうございます。2016年もあっという間に1ヶ月が過ぎました。アルゴの教室は昨年と変わらず熱気に溢れています。
今回は、ご家庭で「自主トレ」に励んでいる子どもたちの話をさせていただきます。

好きなことにのめり込み、やる気に満ちている2年生のY。彼が自ら自主トレをやるようになったのは2年生になってすぐのこと。きっかけはアルゴノートを配布し、1週間の記録を書くことになってからでした。
「2年生になったので、家で自主トレやお手伝いをしたら記録を書いてきてね!」
その一言でYのスイッチが入りました。2年生になってからというもの、花まる・学校の宿題のあとにはアルゴの自主トレをやるルーティーンができました。家のルールとして宿題などのやるべきことをやってから、好きなことに取り組むことができます。アルゴの自主トレは、好きなことの中に組み込まれました。
自主トレを始めた当初はIキューブやジオで形を作っていました。そこから少しずつレベルアップしていきます。授業で行ったIキューブのゲームを取り組むときは、授業で話したことを自分なりに意識しながら取り組み、その他にもIキューブやマジカルスティックを使って、自分が大好きな電車にまつわる問題作成も行うようになりました。箱しまいでは「おれ、いろんなしまい方ができるもん!」と授業の中でも自信を覗かせており、しまい方にもこだわりをもって取り組んでいます。お母様に話を聞くと、親戚などが集まると、アルゴゲームをする機会を設けているようです。意識的に作っているこの時間がモチベーションにもつながっているように感じます。

もう一人は素直ですぐに吸収する力をもっている2年生のS。彼女は「研究」と題して、普段授業で行った内容の最高記録を目指そうと自主トレでチャレンジしてきます。きっかけは授業でみんなに向けて言った一言。
「今回の記録は12マスでした!実はIキューブマンションの過去最高記録は14マスです!」
教室がどよめきました。そして、Sはその言葉で火がついたようです。
次の週、彼女から写真つきの紙を渡されました。そこには「マンションのけんきゅうけっか」という言葉とともにIキューブマンションの記録14マスの写真が貼られていました。圧巻だったのは「15マスはできないかもしれないけれど、12、13、14マスのくみあわせは考えてみるといい」と自分の言葉として結果を書き残していたことです。
自主トレの成果を出してくれたときには「すごいね~!」とみんなの前で認め、褒めて受け取りました。その後も継続して毎週考え続け、あらゆる可能性を考えた末の「研究結果」を持ってくるようになっています。最初に受け取ったときのことが自信にもなったのです。

他にも授業でやった内容に家族みんなで挑戦したK、惜しい記録から更なる記録を目指そうと果敢にチャレンジしたM、長い間考え続けてIキューブ箱しまいの究極をつきつめたU、作問したIキューブの作品を絶対に見せたいと自らメールを送ってきたG、などそれぞれで頑張った報告をいただきます。
どんなきっかけで、どのタイミングで子どもたちが思考の世界にのめり込むかは分かりません。その日が来るまで待っていただきたい。ただ、そのきっかけは私たち大人が作ってあげることはできます。私たちからはもちろん声をかけ、授業の中でも成長を促していきますが、ぜひご家庭の中でもきっかけ作りをしていただきたいです。「やり方教えてよ~」「○個できるかやってみない?」と声かけは様々あります。1日に数分、1週間に数分でも考える時間を作っていくことができたらいいでしょう。子どもたちの考える意欲、考える力を引き出すため、今年も多くのきっかけを作って参ります。
自主トレの結果、作問などがございましたらぜひ教室長までお持ちください!お待ちしております。
本年もよろしくお願いいたします。

『「悔しい」が人を成長させる』  2015年12月 読む▼

人生で「挫折」を経験したことはありますか。私が、「挫折」と聞いて、一番に思い出すことは、中学2年生のときのある事件です。幼少期からサッカーが大好きで、朝から晩まで、ボールを追いかけていました。中学2年生のときには、先輩の試合にも出場しました。全国制覇を目標に日々練習をしていた先輩たち。迎えた大会準々決勝。PK戦の末、敗れました。それも私が外した1本のシュートが原因で。その失敗から「あの悔しい思いを二度としたくない。」という気持ちになり、毎日チーム練習後に一人でシュート練習を繰り返すようになりました。

 11月23日に兵庫県灘中学校でアルゴ全国大会が開催されました。花まる学習会からも選りすぐりのメンバーが出場しました。結果は、団体戦総合優勝・ペアアルゴ準優勝・名人戦準優勝・名人戦第3位ととても輝かしいものでした。全国大会終了後、会場内で集合写真を撮るため花まる学習会のメンバー全員が集まりました。表彰された子は誇らしい笑顔をしていました。惜しくも決勝戦に出場できなかった子も「おめでとう!」「すごい!」と仲間を称えていました。歓喜の雰囲気の中で一人、大粒の涙を流している3年生のKくんがいました。「悔しい」その感情を抑えられずにいたのでしょう。お母様も「まさか、ここまで悔しがるとは思いませんでした。」とおっしゃっていました。

 Kくんは、全国大会明けの授業の際、晴れない顔をして教室の前で立ち止まり、なかなか入ってきませんでした。もしかしたら教室の仲間から、結果を聞かれるのが怖かったのかもしれません。渋々、着席し授業が始まりました。私は、Kくんがどう対応するか、見ていました。案の定、みんなから「どうだった?」と聞かれると、黙って下を向いてしまいました。現場で大粒の涙を見ていたので、痛いほど気持ちはわかります。一緒に教室の外に出て2人きりで本人に伝えました。「みんなの代表で出場したのだから、結果は聞かれるよ。でも負けたことは悪いことではないし、恥ずかしいことでもないよ。『全国大会で戦った相手は強くて、勝てなかったよ!』と胸を張って報告してあげな。」と。Kくんは、力強くうなずき、教室に戻りました。その後、悔しさが完全になくなったわけはありませんが、Kくんは明るい雰囲気で授業に取り組んでいました。子どもが傷ついて、落ち込んでいるとき、なんて言葉をかけてあげるべきか。躓いたり、失敗したりすることは悪いことではありません。大切なことは、そこから立ち上がることです。今では、来年の全国大会に向けて気合いを入れて取り組んでいます。

以下、Kくんが全国大会後に書いてくれた作文の一部抜粋です。
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あと1勝して、合計で3勝していれば予選通過ができたかもしれない。だから、とても悔しかったです。
来年の大会までに強くなることを考えてみました。一つ目は、アルゴの授業中に強い子を研究する。二つ目は、練習量を増やす。三つ目は、片付けやお母さんのいうことを聞いて運を味方につける。
来年、全国大会に行けたら、ペア戦もあるので、それでも勝てるようにしたいです。
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全国大会を経て、何より大切なものを手に入れたKくん。「悔しい」という感情を、次の努力につなげようとする前向きな姿勢に感動しました。引き続き、Kくんの成長を見守っていきます。

『自分にベクトルを向ける』  2015年11月 読む▼

ひと月前のこと。アルゴ全国大会に向けて、代表選考時期に差し掛かっていました。毎回のアルゴゲームの時間を「予選」とし、各教室で熱い戦いが繰り広げられました。
3年生のTくんは、人一倍今回の全国大会出場に懸けている男の子。家でも、一日多い時は3時間もアルゴゲームに費やします。“一番になりたい”そんな強い思いがTくんを突き動かしました。

Tくんを真剣勝負の世界に誘ったのは、過去2回開催された「花まるアルゴカップ」でした。第一回大会の前は、大会に出ることすらためらっていたTくん。昔から、「反骨精神」「負けず嫌い」という言葉とは程遠く、あまり感情を表に出さず、比較的控えめな性格だったというTくん。授業で行っているアルゴゲームでも、勝っても負けてもあまり感情を表に出すことはありませんでした。しかし、Tくんには冷静に状況を捉えて、確実にわかるところから当てていく堅実さがありました。そんなTくんに花まるアルゴカップの話を持ちかけると、「勝てなかったら嫌だしなあ…」と後ろ向き。それでも、ご家族の励ましもあり、出場することに。そこでTくんは、真剣勝負の世界に魅了されます。準決勝まで勝ち進み、あと一歩のところで決勝進出を逃したTくん。大会後、本人のところに駆け寄ると、思いも寄らない言葉が返ってきました。「始めて、“悔しい!”と感じた。自分より強い人がこんなにいて、驚いた。次はもっと練習して絶対優勝したい!」その目はすでに次の大会を見据えていました。

その日から、Tくんは、勝負の世界にのめり込んでいきました。家でも暇があればアルゴゲームを行いました。持ち前の冷静さと、確実なアタック力を武器に、クラスでアルゴ王(その日最も勝ち数を獲得した子に与える賞)に輝く日も多くなってきました。自然と「全国大会出場」という目標も頭に浮かぶようになりました。
着実に力をつけ、自信がついてきたTくん。全国大会出場という目標に向けて、来る日も来る日も練習をし、どうすれば選ばれるのか考えました。アドバイスをもらうため、頻繁に質問に来るようにもなりました。
Tくんは、勝っても負けても一切言い訳をしません。絶対に誰かのせいにはしない。「自分のどこに負けた原因があったのか」それをじっくり考えることの出来る男の子です。全国大会出場者発表日まで、ひたすら練習に明け暮れていました。

そして運命の出場者発表日。両手を合わせて祈るTくん。出場者をアナウンスした瞬間に、机に向かってうつ伏せになりました。Tくんは、惜しくも代表には選ばれませんでした。当然目からは大粒の涙。
授業後、Tくんの元に駆け寄ると、作ったような笑顔を浮かべてこう言いました。「やっぱり○○くんが選ばれたのか。○○くんはすごいよ。一緒に対戦するとほとんど勝てないんだよね。悔しいけど、どうすれば勝てるか、もう一度考える!どうすれば勝てるか考えることが楽しいし、絶対いつか追い越したいから。」最後の最後まで誰かのせいにすることはありませんでした。人一倍努力をし、人一倍悔しい思いもしたTくん。そのベクトルを全て自分に向けることができる強さがTくんの最大の強みなのです。

アルゴゲームでは「勝ち負け」がはっきりわかれ、時には非情な事実と向き合わなければならない時もあります。そんな時、人は得てして、誰かの、何かのせいにしてしまうものです。それでも、必死で前を向き、自分自身にベクトルを向けることができれば、きっと大きな飛躍を遂げるでしょう。それはこの先の人生で必ず必要となる力です。アルゴクラブではその精神力、勝ち負け以上に大切な「考える楽しさ」を伝え続けていきます。

『不真面目な態度と考える癖』  2015年10月 読む▼

彼の周りは、いつも誰かが笑っています。いや、彼が笑わせています。「今は集中する時間だよ」と彼に投げかけても、自然と口から出てきてしまう言葉が、集中している子をも笑わせてしまう。3年生のYは人を笑わせる才に長けています。
1年生の頃はもう少し違った様相でした。どちらかといえばあの頃の1年生たちは、しっかりやることが良いと考える子が多かったのでしょう。Yの面白おかしい発言に対して
「おい、ちゃんとやれよ!」
と突っかかる。Yの性分ですから、日ごろから正すように言われることも多く、喧嘩も幾度かあるようでした。そういうことを繰り返していけば、精神的にタフにもなります。すでに1年生のころから、いくら言われてもYは動じないようになっていまいした。それどころか、どれだけ注意しても聞いてくれないYに業を煮やし、喧嘩不介入であった教室長の私に向かって
「Yがちゃんとやりませ~ん!」
と告げ口を繰り返す子に対して、
「いちいち先生に言いやがって、お前は1人じゃ何もできねえのかよ。」
と言いのけて、その子の羞恥心を揺さぶり成長させたこともありました。2年前の出来事ですが今でも鮮明に覚えています。

ある日の授業、彼を注視する機会がありました。その前週はどうにも彼の騒々しさが目立ち、一叱りしたところでした。「来週は黙ってやる」と彼自身が目標を立てたからこそ、期待していました。さてどうかと見ていると、努力はしているものの、気が抜けると面白い発言をしたくなってしまう様子。おっとっと、と自分で口を押えたりしている姿が、結局他の子の笑いを誘っていました。
それ以上に目についたのは、彼の思考の流れでした。誰かのアクションに対するリアクションがとても速い。誰かがアタックミスをすれば「じゃあそこだね~」とノータイムで正解の場所を言う(本来言ってはいけませんが)。推測していなければできないこと。見方によっては不真面目といえる彼が、『常に考え続けている』ことがはっきりと表れていました。

私は、何かをしている最中、考えてわかろうとすることが、意識しなくてもできている習慣を『考える癖』と呼んでいます。3年生になり、Yはそれを『論理的に考える癖』まで昇華していました。彼がここまで伸びた要因は2つ。
1つ目は、やっぱりアルゴが好き、ということ。アルゴが楽しいと思っているから、考えたくなってしまう。
2つ目は、彼が常に人を笑わせていること。彼自身が誰かに叱られようと、楽しいと思う言動を抑制せずにしてきた中で、みんなも楽しいと感じるポイントがわかってきたのでしょう。そうして『誰かが楽しいと思うためには』ということを常に自然に考えるようになった。私が聞いていても、Yの言動一つ一つが確かに面白い。

真面目に大人しく授業を受けるべき、というのは大人の色眼鏡。どんな態度でも、考え続けていれば癖になり、思考力はどんどん伸びていく。ゲームが、パズルが、クイズが、大好き。そういう子がたくさんいるアルゴクラブ。今日もじっとしていられないYが、周りの人を楽しませながら、考え続けて成長していきます。

『勝負への熱い想い!』   2015年9月 読む▼

7月に行われた第2回花まるアルゴカップ。緊迫感ある雰囲気で行われた第2回大会は前回以上の盛り上がりを見せていました。そんな中繰り広げられた子どもたちのドラマ。それをいくつか紹介させていただきます。

 

◆2年生 Y 『男泣き』
大会前日の授業終わりに、「明日頑張ってね!」と伝えると、「うん!優勝を目指す!」と返事が返ってきた。Yはすごく前向きな男の子。いよいよ当日。会場に来た彼の表情は自信に満ちていてとても逞しかった。いざ、大会が始まると、1回戦ではなんと3勝をあげ、文句なしに準決勝へ。しかし、大会はそんなに甘くない。準決勝敗退。大会が終わり、お母さんと話した。「よく頑張りましたね!」と伝え、Yにも「よく頑張ったな!」と心から称えた。すると、目から大粒の涙が…。いつも前向きな彼が一言も発することなく、その場をあとにした。「悔しかったみたいです…。」とお母さんが一言添えて帰っていった。悔しさが溢れていた。
そのYはすでに次の目標に向かい、前を見ている。その気持ちがあれば今後更に強くなれる、必ず。

 

◆3年生 K 『呆然と…』
第1回花まるアルゴカップで準優勝のK。前日「今回の目標は?」と聞くと、「今回は、絶対優勝するから!」と自信をもって答えた。その自信とは裏腹に本番の予選1回戦は1勝のみ。きっと準決勝に上がれるか内心不安でドキドキしていただろう。そして、発表を迎えた。結果は…滑り込みで準決勝進出。
準決勝では実力を発揮し、2大会連続の決勝進出を果たした。精神的な面でも強いK。彼の実力は本物だと感じたのと同時に、「優勝も見えてきた」と私は思った。決勝戦、試合が始まる。Kは次々とアタックを成功させ、ポイントをとっていく。しかし、最後のところでは外してしまい、結果勝利には結びつかなかった。決勝の中でアタック成功のポイントは1番多かったが、ゲームには勝てなかった。
4ラウンド目が終わった後、「ではみんな、カードを真ん中に置いてください!」と審判が4人に声をかける。しかしKはその声が全く聞こえていなかったのか、カードには触れず、その場で座ったまま呆然としていた。それだけ悔しかったのだと本人を見て感じ取れた。大会後、お母さんと話をする。勝負に全力を注いでいたKに対し、お母さんは涙を浮かべているように見えた。彼にとって、第1回大会とはまた違う悔しさを味わった大会となった。

 

◆4年生 T 『みんな見ている』
3年生からアルゴに入ったT。彼のすごいところは、なんと言ってもアルゴのために1時間ほどかけて1人でお茶の水に来ていることにある。Tにとっては小旅行のような感覚ではないか。寝ていて乗り過ごしてしまったことがあり、それも今では良い思い出。3年生当初はゲームになかなか勝てなかったことが続いた。それでも休むことなく、通い続けた。日に日に増していく、前向きな強い気持ち。それが成長の証である。今大会では4年生の部で3位に入った。休まないで通い続けた日々の頑張りを実力で、結果で証明した。大会後に話を聞くと、「3位は本当に嬉しかった。けれど、前回と同じ子に負けたから悔しかった。」と喜びと共に悔しさを滲ませた。Tの常に前に向かっていく気持ち。これからも成長し続けていく。そして、一生懸命に頑張っているTを私たちみんなが見ている。

 

出場した子どもにはそれぞれのドラマがあった大会。ここに書ききれないほどです。
全員共通しているのは「悔しさ」、 「前向きさ」、 そして「勝負への熱い気持ち」。この気持ちが本当に大事なのだと感じています。そして今月からは全国大会予選が始まっています。引き締まった表情で取り組んでいる子どもたち。「熱い勝負」を繰り広げている子どもたちに負けじと私も「熱い想い」を乗せて、エールを送ります。

 

『はじめの一歩』   2015年6月 読む▼

新年度の授業が始まって早3ヶ月。子どもたちは教室の雰囲気にも慣れ、「なんでこうなるんだろう」「どうすればよりよくなるのかな」と、“なんで、どうして、どうすれば”の問題意識を持って、真剣に取り組んでいます。アルゴゲームに負けて、思わず悔し涙を流す子も少なくありません。これも、勝負にこだわり、もっと強くなりたい!という強い意志があるからこそ。“本気で考えるって、楽しい”その想いが表情ににじみ出ており、頼もしさを感じます。 
一方で、アルゴゲームで負けたり、プリント問題で難問の壁にぶつかったりする中で、弱気になる子もいます。「ぼくなんて…」と、ついマイナスな発言が聞こえました。

 

2年生のMは1年生からアルゴクラブに通っています。「Iキューブ」を使って、様々な立体を作っていく時間が大好きなM。チームのお友達と協力して、ゲームに挑戦していくのですが、中でも、H~Sまであるキューブを、アルファベット順に高く積んでいく「アルファベットタワー」が大好き。「この前は途中で崩れちゃったけど、家でたくさん練習してきたから、今日は最後まで積めるよ!」と自信満々。成功した時には、全身を使って喜びを表現していました。
なかなか高く積み上がらず困っている友達にも、そっと「こうやって積んだほうが、バランスがいいよ」とアドバイスをしてくれます。 

 

ところが、2年生から新しく始まったプリント問題の時間になると、見る見るうちに表情が曇り始めます。問題を解くだけではなく、「どうすれば、初めて聞いた人でもわかるような説明ができるか」という観点で、論理的に考えていく時間。「解くことができる」ことと、「人にわかりやすく説明をすること」は、難易度が大きく異なります。周りの友達が次々と手を上げる中、Mは困った様な表情を浮かべます。
授業後、そっとMのそばに行き、「一生懸命考えて、正解にたどり着けたんだね。今度はそれを発表して、みんなに聞いてもらおう」と伝えると、「間違っていたら嫌だし、緊張するし、説明下手だし…。でも今度手を一回挙げてみる」と弱気な発言とともに、小さな目標も教えてくれました。

 

翌週、いつものように「はい!はい!」と元気な声が飛び交う中、「…はい」と自信のなさそうな声が聞こえました。待ってました、Mです。私も、“勇気をもって、はじめの一歩を踏み出してほしい”“自分の考えを堂々と周りのみんなに伝えて欲しい”という願いを込めて、Mを指しました。緊張して、なかなか言葉が出ない。それでも、勇気を振り絞って、最後までやりきりました。

 

授業後、安堵の表情を浮かべて、「みんな聞いてくれてよかった~。やっぱり説明はむずかしいね!」と満足気。徐々に他者性が身につきはじめ、周りの目が気になってくる時期。それでも、「毎週解き続けている」という積み重ねが、Mに自信と勇気を与えてくれました。前に進むためには、小さな努力を積み重ねるほか道はないということを、教えてくれました。

『2つ目の気持ち』   2015年5月 読む▼

1人が勝ち、3人が負ける。ルール上、それはゆるぎありません。負けたら悔しい。悔しさから泣く子もいます。勝ちたいと思えば思うほど、その気持ちは強くなる。

2年生のAくんは、負けるとより一層悔しさを表に出す子でした。その悔しさを強く感じるからこそ、勝った時の喜びも人一倍。
そんなAくんが、1ポイントも取れなかった時がありました。運も実力の内、0ポイントの時は往々にしてあります。途中で自分のカードがすべてオープンされてからは、ずっとうつむき、手を握りしめていました。
最後のポイント報告。自分の名前と獲得したポイント数を、順番に審判へ報告します。
Aくんは悔しさのあまり、言葉を発することができませんでした。順番に報告しているから、Aくんが言わなければ先に進めない。審判である私からも促すことはしない。彼自身が悔しさを飲み込むのを見守りました。

そうやって周りの子が戸惑う中、Aくんの次に言うはずだったBくんが言いました。
「Bです。0ポイントです。」
Bくんも0ポイントでした。悔しさもあったはず。しかし彼は続けて言いました。
「ほら、0ポイントって、だれにでもあることなんだよ。だから、大丈夫だよ。」
「…Aです。0ポイントです…。」

Bくんがしたことは、Aくんの気持ちを理解し、「ぼくも同じだよ」と寄り添い共感し、「それでもいいんだよ、大丈夫だよ」とメッセージを伝えること。同じ立場のBくんが言ったからこそ、Aくんに強く伝わりました。
まるで他人が自分かのよう。寄り添うBくんの姿に、私は強く心を打たれました。

「相手の気持ちを考える力」は、どんな状況でも求められます。人と関わって何かを行うときはもちろん、問題や設問に対峙するときまで。何を聞かれているのか、何を求められているのか?それは、作問の意図を読み取ることにも関わる力です。
アルゴゲームにおいてその力は、より高いレベルの考え方につながります。アタックの意図を読み取り、相手の手持ちカードや思考を推測する。簡単にできることではありません。相手の気持ちを考える経験を積み重ねるからこそ、その域に達することができます。
そのための、チームワークと礼儀・マナー。相手がどう感じるかという、自分の気持ちだけでなく「2つ目の気持ち」を考えながら、授業に取り組みます。いきなりできなくたっていい。迷惑をかけることだってあるかもしれない。そうやって経験を積み重ねて、2つ目の気持ちを感じ考える力を養っていきます。

 

『子どもの涙は』   2015年2月 読む▼

この仕事をしていると、つくづく子どもの涙は「愛情の証」だな、と感じます。

先日立て続けに、道端で転んでしまった子を見ました。2歳位の男の子は、転んでから1秒間、泣く様子はなかった。そこから2秒後、お父さんが抱えようと体に触れた瞬間、火が付いたように号泣。1年生の女の子は、友だちと笑顔でバタバタと走ったために転倒。転んだ瞬間は斜め下を見て驚いた顔でしたが「大丈夫!?」と話しかけられ、その友だちが視界に入った途端に大泣きを始めました。どちらの子も、泣き始めるまでに数秒固まったままでした。あのまま誰にも声をかけられなかったら?もしかしたら「痛いなー」くらいでまた歩き始めたかもしれません。痛みにあっけにとられていたこともありますが、寄り添って、愛してくれる人がいるから、本能的に「泣いてもいい。助けてほしい」と涙がでるのでしょう。

その一方で、悔しさの涙は、すっと流れる。そういう現場を目の当たりにしました。

Aちゃんは、1年生からアルゴクラブを続けてきました。お話が本当に大好きで、教室に来るたびに「この間ね…」と伝えたくて仕方がない。時にはアルゴゲーム中にそういう話をし始めるほど。可愛らしい女の子です。2年生になり、その可愛らしさは相も変わらず、もうじき3年生を迎えます。

たくさん考えてきて、わかっちゃった!という快感を積み重ね、この段に入ってとうとう、曖昧だった論理的な考え方も定着してきました。発表に挑戦しようという気持ちも強くなり「こう発表したらいいかな?」と相談してくるほどです。

先日の授業、笑顔で手を上げたAちゃんの発表は、おしい!というものでした。悪くはない。ただ、今の君たちなら、こういう考え方も身につけてほしい。私の想いとしては、特にAちゃんには、ある程度のレベルの話も届くようになったからこそ、このチャレンジを糧にしてほしい。私が予測しきれなかったのは、それが1日の中で3度も起きたこと。あと一歩!と言う発表が3度も。確実にAちゃんは、掴みかけているのです。

着席したAちゃん、じっとプリントを見つめました。そして、すっと涙が流れました。声を上げることもなく、うつむくこともなく、じっとプリントを見つめたまま。私は、少し待ちました。彼女のその涙が、どういう涙か判断するために。「次は迷路!出してください」全体に向けた言葉に、Aちゃんも動きました。静かに涙を流しながら。

私は隣に座って「悔しかったんだね」というと、頷く。「発表したいと思った気持ちが立派。悔しいと思う気持ちも立派。すごいねAちゃん。がんばっているんだね。」大きく頷くAちゃん。じゃあ迷路やろっか、というと、まだうっすら涙を携えながら、集中して取り組み始めました。

彼女は、確実に一段登りました。そう感じたのは、翌週も、翌々週も、笑顔で手を上げて発表しようとするAちゃんの姿を見たから。その姿に、私が涙しそうな思いでした。すごいねAちゃん。これからもたくさんチャレンジしてね。

『挑戦し続ける』   2014年12月 読む▼

「何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」
早いもので2014年も残すところあとわずかとなりました。みなさんにとってどんな1年だったでしょうか?
今年は1年を通じて特にスポーツ界が盛り上がった年でしたね。2月には、ソチオリンピックが開催され、男子フィギュアスケートの羽生結弦選手が金メダルを獲得し、日本中を熱狂させました。また、スキージャンプでは、葛西紀明選手が史上最年長でメダルを獲得し、“レジェンド”という言葉が流行語にノミネートされたことも記憶に新しいですね。6月にはサッカーのワールドカップも開催されました。残念ながら、日本代表は予選敗退となりましたが、日本中の期待を一身に背負い、誇りをかけて戦う姿勢は我々の視線をクギ付けにしました。ひとつのものに夢中になり、最後の1秒まで諦めず戦い続ける。大舞台で躍動し、世界を相手に戦うために、日々泥臭い練習に全力を注ぎ続ける。そんな姿が見ている我々の心を打ったのでしょう。 

先月、アルゴクラブでは全国大会が行われました。結果云々ではなく、“その1日”のために毎日毎日努力を重ね続けた子どもたちに、最大限の賛辞を送りたいと思います。残念ながら代表に選ばれなかった子たちも、「来年こそは」という強い思いで毎回の授業に向き合っています。
10月の授業での一幕。残念ながら代表に選ばれなかったMくん。代表者を発表した直後。弱い自分を皆に見られたくなかったのでしょう。「トイレに行ってきます。」と今にも泣きそうな震えた声で私に言いに来ました。しばらくして戻ってくると、涙を浮かべながら、でも精一杯の笑顔で「今日は絶対アルゴ王になる!」と伝えてくれました。悔しさを押し殺して必死に前をMくんの姿は私の心に強く焼きついています。
年に1度しかない全国の舞台に立つために、毎週毎週必死に努力を積み重ねていく。花が咲くかはわからないし、時には心が折れそうになることもあるでしょう。それでも前を向き、日々小さな成長を積み重ねていくことでしか扉は開かない。Mくんはそんな大切メッセージを伝えてくれたのです。

冒頭に書かせていただいた言葉は、シドニーオリンピックでマラソン競技日本人初の金メダルを獲得した高橋尚子さんの言葉です。長い人生、一回花を咲かせるために何年もの努力を積み重ねなければいけない。そのために日々の継続を絶対に怠らない。そんな想いが込められています。

2015年。また子どもたちの挑戦が始まります。信念を持ち「勝負の世界」に身を投じ、日々の努力の積み重ねの大切さを味わってほしいと心から願っています。

『背中を見せてゆく』   2014年10月 読む▼

全国大会の代表が決定しました。
悔しがる子、喜ぶ子、あこがれの目を向ける子…反応は様々ですが、何が終わったわけでも、始まったわけでもありません。
「代表になりたい」
そう思った時の熱量で、日々のアルゴゲームに挑めるか。引き続き、指導にあたってまいります。
 
さて、A教室でも予選を行ったのですが、4年生に関して言えば、1つ様相が異なっていました。全国大会のペア王戦を想定して、ペア戦での予選だったはずなのですが、1ゲーム終わるごとに、彼らは自主的に感想戦を行っていました。
5人いる4年生のうち、3人は1,2年生からずっと続けてきた仲良し3人組。実力も拮抗しており、相手の悪手を笑顔で遠慮無く痛烈に指摘し、それを聞いている側も笑顔で悔しがりながら受け入れる。切磋琢磨してここまで力を伸ばしてきました。
残りの2人は、3,4年生から始めた女の子。男の子に比べて大人度が高く、思考法を着実に身につけてきました。
もちろん実力に差はあります。しかしこの5人の学び合いが、お互いをさらに引き上げています。
教える側は言葉をなげかけ、戦略性が伝わらなければ別の説明を考え、理解してもらうために試行錯誤する。
教わる側も、一つ一つが実戦の上での指摘なので、非常に吸収率が良い。目に見えて「今日の授業」の内容が良くなっていました。30分のアルゴゲームで、莫大な学びの量になっているのです。
 
思い返せば、昨年度の4年生達もそうでした。
1年生から続けてきた、けたたましい男の子4人と、4年生から入会してきた女の子1人。1ゲームごとにものすごい指摘合戦と勝利アピール。女の子だって勝った際には「どんなもんよ!」と応戦する、それはそれは芯の強い子でした。
礼儀とマナーはどこへやら…と困ってしまう面もありましたが、彼らの交わす言葉には明確な戦略と、ゲームの流れを適切に捉えた指摘があったのです。
 
今の4年生達、特に仲良し3人組は、その昨年度の4年生達と多くの時間を共に学んできました。
先輩たちの背中を見続け、自分のものとしてきて、今がある。
けたたましいところは学ばなくても良かったのですが…もしかするとそこが一番、学んだところかもしれません。勝負というものは、勝っても負けても楽しむことができる。自分の力を出しきることが、相手と切磋琢磨しあうことが、どれだけ快感かということを、彼らは魅せつけてくれていました。その地盤があるからこそ、「アルゴって、本当に楽しい!」という思いがあるからこそ、指摘してもされても、へこたれること無く学び続けられる。
 
全国大会まで、あと一月。一年も折り返しをすぎました。あと半年で次の学年ですが、そんな区切りを待たずに、子どもたちは日々成長を遂げていきます。子どもたちの望むままに、行けるところまで、引き上げてまいります。

『全国大会への想い』   2014年09月 読む▼

「シーン」
 
聞こえる音はアタックの声とカードをめくり、チップをとる音だけ。
 
いよいよ今年もアルゴゲーム、全国大会の予選会が始まりました。各塾の代表が一同に介し、熱い勝負を繰り広げます。花まるからも代表選手を決め、全国大会の舞台に立ちます。その代表選手を決めるため、9月授業内のアルゴゲームの時間で予選会を行いました。いつもは積極的に、スピード感をもって、アタックするHくんもいつにも増して丁寧に確認をしながらアタックをしていました。子どもなりに「全国大会」という響きがそうさせているのでしょう。
 
「全国大会」と聞き、私は去年のとある場面を思い出します。9月の予選会後、10月中旬に全国大会出場者を発表。発表後、全国大会への特訓を開始し、授業後に毎回残って練習に励みました。当初の練習時間は30分のみ。それが1時間となり、全国大会の前週には2時間にも及ぶ特訓に変わっていました。それは全て「子どもたちから」の提案であり、夜9時まで必死で練習を行いました。そんな子どもたちの表情…、それはもうキラキラと輝き、活き活きとしていました。やらされているのではない、確実に自らの意志で頑張っていました。この自分から向上していきたいという気持ちがきっと自分を成長させていくのだと子どもたちから強く感じました。自分から学んでいく、優勝を勝ち取りにいく姿勢は私の気持ちも奮い立たせました。

そして、もう一つ、この練習中に起こった出来事があります。それはKくんの出来事です。その練習中、Kくんはゲームの最後、自分がコールするときにすでに表になっている数字をコールしてしまいました。それが決めてとなって負けてしまった。すると、ずっと下を向いているKくん。涙を浮かべていました。Kくん自身、焦りからすでに表になっている数字をコールしてしまうところがあり、自分でも直さなければいけないところと分かっていました。それでもコールしてしまうところに悔しさが込み上げてきたのでしょう。涙を隠そうとするところに男の子を感じました。
この悔しさから出てくる涙、この涙がKくんを一回り大きくしたと思っています。Kくんの全国大会への想いを感じることができた出来事でした。

そんな頑張り抜いて臨んだ全国大会の結果はというと、個人戦で全員準決勝敗退でした。結果としては出し切れなった、それでもここまで練習をしてきたことに大きな意味があると私は思っています。

予選会も終わり、これから出場選手を決めていきます。私も子どもたちと一緒に本気で全国大会へ向かいます。

『全国大会優勝!』

こんな素敵な目標が近くにあります。優勝の喜びを一緒に味わうため、精一杯サポートさせていただきます。

『アルゴで伸ばしたい力』   2014年07月 読む▼

昨今の大企業がどのような人材を欲しているか、一言で表すと「自分で考えることができる人」です。偏差値の高い大学へ行ったところで教科書をなぞった勉強しかしてこなかった人は社会で活躍することは難しいと判断されています。もちろん「言われたことはやる」「習ったことはできる」ということがベースとなっていますが、それだけでは生きていく上で主体性が欠け、人生を楽しみきれません。あるビジネス書では「言われたことをやるのが作業、自分で考えてやるのが仕事」と書かれていました。アルゴクラブに通っていただいている限りは、主体性を持って人生を送ることができるように我々もサポートして参ります。
 では、自分で考えることができる人を育てるためにはどうしたらいいでしょうか。私が見てきた中で「この取り組みはいいな」と思うご家庭の事例を3件、紹介したいと思います。

 1件目は「数字大好き少年」です。いつも通り「こんにちは!」と元気に教室に入ってきたRくん、まっすぐ席には着かず教室を大きくぐるっと回ってから、入り口から一番遠い席に蛇行しながら着きました。私は不思議に思いお母さんに「なにかあったんですか?」と尋ねると「万歩計つけているんです。」と笑顔で教えてくれました。どうやら家でおばあちゃんがつけている万歩計に憧れお母さんにお願いをして自分専用の万歩計を買ってもらったようです。自分が動くと動いた分だけ数値が増える、至ってシンプルな作りですが数字大好き少年はそれだけで大興奮していました。最近では1年生ながら素数に熱中しているようで「1000以下の素数で一番大きい数は997なんだよ。」と教えてくれたりします。そういった様子を面談でお母さんが嬉しそうに話してくれました。このご家庭での取り組みを聞き、言うまでもなく今後も健全に成長してくれるだろうと思います。

 2件目は「書くこと大好き少女」です。2年生以上ではナンバーリンク・チャレペーなどのペーパー教材があります。中には大人でも考えさせられる問題も入っています。そこでひたすら手を動かしプリントがまっ黒になるぐらい自分の考えを書き出す少女がいました。(書くという作業は脳科学的にも脳の大部分を刺激し、脳の成長を後押しするようです。パソコン・ワープロが普及する前の作家が高齢でも脳がしっかりしていたのは、この書くという作業を多くやっていたためという説もあります。)その子の問題を解く様子を見てみると書くスピードが速いです。そして授業後に、お母さんがまっ黒なプリントを見て一言「今日もいっぱい考えたんだね。」でした。お母さんに言いがちな「もっときれいにかきなさい。」などのマイナス発言は一切なく、その子の個性を受け入れていました。

 3件目は「作問大好き少年」です。6月号のアルゴギャラリーでA教室の4年生が作成した問題を掲載しました。それを授業内に「みんなも素敵な作品を作ったら教えてね。」と言って以来たびたび問題を作ってきてくれます。その問題の質も回を重ねるごとに高くなってきています。やはりこのご家庭での取り組みもすばらしく、問題をつくったあとに、お母さんが、カメラ付き携帯で問題を撮影し私にメールをくれるのです。この取り組みに子どもは喜び、やる気はどんどん出てきています。実は作問は、問題を解くことよりも頭を使う作業なのです。

 3件とも共通していることは子どもの個性・取り組みを褒めて、認めて、受け入れている点です。きっと主体性を持った子が育っていくことでしょう。今から近い将来が楽しみです。

『その気持ちって本当は』   2014年05月 読む▼

「トイレに行くの!」
1年生の男の子Aくんが、突然アルゴゲームを中座し、逃げるように教室から出ようとしたので、どうしたの?と声をかけた結果がこの言葉でした。
 
実はその日、そのAくんはうまくいっていませんでした。
じっくり考えてすすめるタイプのAくん。Iキューブは思うように出来なかった。いろいろ考えてはみたけれど、ジオも完成させられなかった。

そして極めつけは、アルゴゲームの時でした。
親になった人がアルゴカードをシャッフルし、みんなに配ります。
1年生にとって、アルゴカード16枚をシャッフルするのは、難しいものです。
それでも自分で頑張りたかったAくん。丁寧に、何度かこぼしながらも、シャッフルしていきます。
他のチームはもう配り終わり、並べ始めている。
コーチのフォローも拒み、自分で頑張ろうとしていたAくんですが、さすがにしびれを切らした同じテーブルの子に「早くしてよ!」「もうくばっていいよ!」と急かされる。
そんなチームワークのなっていない言葉を諌めようかとも思いましたが、まずはAくんが自分で反論するのを見守りました。しかし、彼は反論せず配りきりました。
ただ、自分のカードを並べるところまでは出来たものの、我慢の限界だったのでしょう、冒頭の行動に出ました。
 
「そっか、コーチも一緒にトイレ行こっかな。」
そう言って一緒にトイレに行きました。
実際にトイレに行ってみると「なんかあんま出なかったし」とわざわざ報告。気持ちが抑えきれていないのがありありと分かりました。
「そっか。どう?今日は調子いい?」あえてそう聞くと彼は素直にも「ちょっと嫌な感じ」と言いました。どうして?と聞くと「できないし、なんか色々言われたし、あんまり、嫌」と、たどたどしい言葉。
 
「そうなんだね。でもその気持ちって本当は、悔しいっていうんだよ。でね、それは強くなれる人が持っている気持ちなんだ。だからAくんはこれから絶対強くなるよ。よかったね。」
そう私から伝えられたAくんは、そうなの?と言いながら、一度考えたような顔になり、その後は弾むように歩いて、またみんなとアルゴゲームを始められました。
 
その日の授業ではもちろんAくんがMVP。悔しいと思えるからこそ伸びる。強くなれる。そう全体にも伝えました。
悔しいという気持ちは、悪い気持ちじゃない。素晴らしい気持ちなんだよ。すごいことなんだよ。
嫌だなと思ってももう一歩、頑張れたAくんは、素晴らしい人になっていくね。
 
次の週でも親になったAくんは、
「自分でできるよ」と、少し上手な手付きで、カードをシャッフルしていました。

『勝ちたい気持ちを誰にぶつけるか』   2014年04月 読む▼

新年度が始まり、新しく出会う子どもたち。
その子どもたちを見て、半年以上前のある出来事を思い出しました。

1年生の男の子。個性あふれる面々の中、素直で真面目なAくんと、自分のしたいことに一直線なBくんがいました。
1年生のアルゴゲームともなると、おしゃべりやふてくされ、悪気のない妨害行為など数えきれないくらいあります。私たちコーチ陣としてはそれも織り込み済みなので、すぐにできるようになるわけではない、と思いながらも、今すべきことを繰り返し伝えていきます。
Bくんも、勝ちたかったがあまり、負けてしまうとふてくされたり、まじめにやらなかったりすることもありました。それが許せなかったAくんがしたのは先生に訴えることでした。
「コーチ!Bくんがふざけるんですけど」
「コーチ~Bくんが邪魔してくる~」
そんな訴えを繰り返していました。コーチ陣は仲裁に入らず、A君の話を聞いてあげるだけ。大体はそれで満足し、またゲームに戻っていくのです。

その訴えが多かったある日のこと。それに対するBくんの一言がAくんに突き刺さりました。
「お前は自分一人じゃ何も出来ねぇのかよ」
淡々と放たれたその言葉に、Aくんは何も言えず、顔を真っ赤にしていました。
それからは、Aくんの訴えはぴたっと止まりました。

アルゴゲームは、勝負です。勝負である以上、勝ちたいし、負けたら悔しい。
真剣だからこそ、ちゃんとアルゴをしたいからこそ、勝負の中で嫌だなという気持ちも生まれてきます。
ただ、社会に出れば勝負事や衝突は避けられません。
習い事として、無菌的にすることは可能でしょう。ですが、そうはしません。衝突を避けがちな現代だからこそ、この時期に衝突を経験していくべきだと考えています。
お互いに本気で勝負し、ぶつかり、それでも一緒にやり、人との関わりの感覚を身に付け、切磋琢磨し、その中で誰がどうだろうと自分を伸ばしていくことに向き合えるようになる。思考力と同時に、そこも身に付けてほしいのです。

1年見てきた子どもたちは、人に対する愚痴や、心無い言葉をだいぶ言わないようになりました。純粋に、勝負の場で一生懸命考えています。私生活ではやんちゃな子でも、おとなしい子でも、勝つ喜びや、考える楽しさを得ていくことで、自然とゲームに向き合えるようになるのです。

今年も色んな所で衝突が見られます。もちろん度が過ぎるものは仲裁しますが、もめごとはこやし、そう思って見守ってまいります。
もしそれが辛いという言葉をお子様が発したら、優しく受け止めてあげてください。頑張っているんだね、と。そして私にもぜひご報告ください。もめごとを「こやし」に出来るよう、私からも声をかけていきます。
そのようにしてご家庭とタッグを組んで、一緒にお子様を育ててまいりたいと思います。
今年度も、宜しくお願い致します。

『ままならなくても、前を向く』   2014年03月 読む▼

あるA君という男の子の成長を感じる出来事がありました。
 A君は、やんちゃで、憎まれ口をたたき、やりたいことをやる、幼児期まっしぐらな男の子です。入会当初は、好きなときに席を立ち、ゲームのルールはめちゃくちゃ、周りの子も困ってしまうほどでした。

今年3月の授業で行われたアルゴゲームの事です。
1ゲーム目、A君に配られたカードはすべて黒でした。勝ちにくいことはすでに理解できています。あ、と思ったのか、私の方に助けを求める目を向けてきました。ですが私は、基本的に交換は認めず「それでも勝つためには、を考える」として進めています。
 結果、やはり負けてしまいました。自分の番が来る前に、すべて当てられてしまった。
 アタックすることもできずグチグチ言っていました。それでも、負けてしまうことは何度もありましたし、そのときも途中から、他の人のオープンしていないカードを真剣に考えていました。
 
 2ゲーム目、じゃんけんをして決まった親はA君。カードを配るときに傍目に見ていると、明らかに配り方がおかしいことがわかりました。
 途中で私の方を何度かちらっ、と見てきます。
 配り終わった時点で、A君はすべて黒。「また全部黒~」とふてくされたように言っていましたが、 明らかに自分でそうなるようにしていました。 かまってほしい、助けてほしい。そんな気持ちがあったのかもしれません。

 しかしここはA君にとって、「ままならないもどかしさ」を感じるターニングポイントだと考え、手は出しませんでした。
 結局すべて当てられてしまい、今度はかなりふてくされました。他の人の妨害をするようなこともありました。
 しかし終盤ではまた、オープンしていないカードを当てようと考え始めていました。
 この時点でも、私のとっては彼の成長を感じた瞬間でした。

 3ゲーム目。気を取り直し、ゲームの準備も行えていました。
今度は全て黒ではありません。勝機もあったはず。
 けれども、勝てなかった。
 落胆の表情。

ところが今回は、先ほどのふてくされとは違う様子でした。
 悔しい、という感情が現れていたのです。泣く程ではありませんでしたが、勝ちたかった、切にそう思っている顔でした。

その授業の最後に、A君にMVPをあげました。
勝てなかった。それでも勝ちたいと思い、一生懸命だった。アルゴゲームは4人でやれば、1人が勝ち3人は負ける。負ける人のほうが多いゲーム。
 でも負けた時こそチャンス。なぜ負けたのか、どうすれば勝てたのか。それを考えることで、強くなることができる。
 そのためには勝ちたいという気持ちが必要です。その意思が、今日のA君にはありました。
  MVPをもらった時は驚いた顔。
 「何もしてないのに~」と言っている時にはニヤニヤ顔。
理由を聞いているときは真剣な顔つきでした。

論理的思考力をのばすこと。それももちろんですが、アルゴクラブでは「悔しい」「勝ちたい」そういう気持ちを伸ばすことも、私は大切にしたい。そう考えています。
 あと伸びするために。何があっても前を向ける意思を、新しい学年になっても大切にしてくれればと願います。

『人としての芽』   2014年02月 読む▼

暖房をつけていると「暑い!」というくらい夢中になって授業に臨む子どもたち。
先日、一年生のクラスで心が温まる出来事がありました。
 
アルゴゲームをやっているときのこと。
―アタック1
―イエス
―アタック5
―イエス
―ガシャン!
 アタックする声しか聞こえない静かな教室のなか響いたのは、チップが入っているケースを落とす大きな音でした。
 周りの子の目は当然そちらに。落とした本人は焦り、あたふた。しかし同じチームの女の子ふたりの行動は違いました。

 ―いいよ、これは片付けておくから考えていて。
 ―え?
 ―続けていいよ。
 ―…アタック4
 ―イエス!

イエスと言う頃にはすでに片づけは終わっており、いつも通りのアルゴゲームが続いてていました。
ほんの1.2分の出来事。ここで目の当たりにしたことは、個人としての優しさとチームを良くしようという心。アルゴは教室内の雰囲気が重要です。大きな音をたてたことにより動揺する女の子を少しでもフォローしようという思いやり。びっくりした周りの子に「大丈夫だよ」と言うかのような素早い行動。静まり返った教室のなかでのふたりは、とても大人でした。それにより周りの子もそれまでと同じように続けるアルゴゲーム。
人として大切なものを学んだふたり。
大人が何を言わずとも動ける力を身に付けたふたりなので、これから先も楽しみながら当たり前のことを得ていくのだと思います。

授業中、Iキューブなどの片づけが早く終わったチームには、
「まだ終わっていないチームをお助けマンになって助けてあげて!」
と伝えるとすぐに出動します。
チームワーク。それはただゲームで勝つことだけでなく、社会で生きていく力。

社会性が育っていく60分間の授業で学んだこどもたちは、今後どのように成長していくのでしょうか。
それを見られることが楽しみでなりません。

『悔しい気持ちに学びがある』   2013年12月 読む▼

「今日も残って練習していいですか?」
己の持つ最大限の力を発揮した全国大会。その翌週の授業前に放った言葉がこれ。

本戦出場を実現させ、全国のレベルを思い知り、悔しさも面白さもいろんな経験をした大会だったはず。11月23日(祝・土)に2013年度アルゴ全国名人戦、王位戦、アルゴ杯が開催された。総勢116名の選ばれしアルゴ代表選手たちが関西の名門校「灘中学・高等学校」体育館で熱戦を繰り広げた。

 おそらく悔しさが強かったのだろう。既に気持ちは1年後を目指しているところが彼らの強さである。1人は、上の言葉を真剣な気持ちで言った。もう1人は、卒業しているOBだが、大会が終わっても授業後に行っていた特練に現れた。それも30分も前に。もう1人は、その話を聞いて「やっぱり」彼らの時間に合わせてクラスを替えた。

 共通するのは、「次に向けて行動した」ということ。彼らのこれまでの努力はもちろん知っている。目の前で見てきた。しかし、結果は望むものではなかった。それが現実。その時は、精一杯の力を出し切り、悔しくても清々しさを感じたであろう。でも、それはそれ。次の瞬間には、もう次の勝負が待っている。

 1人は、負けた悔しさから「何故、負けたか」を考えた。自分のアタックに見落としはなかったか。迷いはなかったか。あの時の一手が勝敗を分けたのであれば、その一手を自分の下に手繰り寄せるためにどうすればよかったか。

 悔しさから学ぶものがある。彼らは今、立ち止まって悔しさに正面から向き合い、成長する絶好の機会の中にある。今まさに彼らは、研ぎ澄まされた感覚を持っている。その感覚は、普段の授業に伝達される。授業の中でのアルゴゲームの質が変わった。ピンと張り詰めた空気感が大会のそれにより近づいた。間違いなく、全国大会から彼らが持ち帰った大きな「土産」である。

 そして、その「土産」は自分たちだけではなく、仲間たちにも連鎖する。ゲームだけでなく、問題を解く時には、思考の速さが変わった。とにかく鉛筆がよく動く。解説練習をする時には、選ぶ言葉が変わった。できるところまで「やってみる」意識が強くなった。

これからさらに成長する時期を迎える。褒められて伸びることは多々ある。楽しければ、面白ければ、それに向かって子どもたちは自由に伸びる。一方で、悔しさを次に活かして伸びることもある。時には、これも必要である。悔しさから学び、それをバネに伸びる力が子どもにはある。来年は、どんな飛躍の年になるのか。一緒になって思考の面白さに飛び込みたいと思う。

2013年最終授業を迎えました。本当にありがとうございました。来年もどうぞ宜しくお願い致します。皆様、体調を崩さぬよう気を付けてお過ごしください。良いお年を。

『頭脳の輝き』   2013年11月 読む▼

伸び、あくび、「眠い~」の声。

アルゴクラブの授業終了間際によく見られる光景です。集中力の限界。ずっと使い続けた脳みそに、酸素と休息を与えるので精一杯です。

勝つよりも、考える事のほうが大事。そうではありますが、やはり勝ちたいのが子どもの性でしょう。その本気の勝負こそ、頭脳が輝く瞬間です。

子ども同士の勝負もギリギリの勝った負けた、その切磋琢磨で燃えるのですが、やはりいつも勝てない大人との勝負に燃える子の頭脳は、キラリと輝いています。

2年生の女の子と、2人戦をした時のこと。
「コーチとかぁ」と困った声。
勝負の結果は私の勝ち。そして試合後の一言。
「もう眠い…」「だってコーチだから、いっぱい頭使わないと勝てないでしょ」
大人との勝負。だからこそ勝ちたい、勝ってみたい。フル回転で使った頭はもうヘトヘトでした。

3・4年生も、毎週のように「ラストやろうよ!」「アルゴやりたい!」と勝負をせがんできます。
もちろん3・4年生ともなれば、手加減など一切しません。子どもですから、ボロ負けすれば一時的にめげることはあります。ただ、1試合の中で光る1手を褒めたり、前回からの伸びを伝えたりすることで、「今度こそ勝つ!」と、壁に向かってチャレンジする気概を持てるようになるのです。

大人との勝負に挑む。何度も何度もチャレンジする。このような体験の積み重ねが、後々難問にぶつかっても、食らいついていく力になります。頭脳の輝く子になるポイントです。そして頭脳が輝いている子は、じっくり確実に考え知識を蓄えられる、後伸びする子に育つことでしょう。

先日、アルゴクラブ全国大会が行われました。
全国から集まった猛者たちの中で、花まる学習会アルゴクラブの子どもたちは、王位戦ベスト16に4名進出、アルゴ杯(3年生以下3人チームの総獲得ポイント対決)では準優勝に輝きました。それでも、納得の行かない結果に涙をのむ子。悔しさの余り、強がる子。もう来年を見据えている子。目標は高く。子どもたちもコーチ陣も、さらなる壁を乗り越えてやるという気持ちを胸に帰路につきました。
落ち葉の舞う季節。今年度も折り返し地点を過ぎています。名人戦に勝るとも劣らない、頭脳の輝く真剣勝負を、毎回の授業で取り組んでいきます。宜しくお願い致します。

『だからアルゴは楽しい』   2013年9月 読む▼

「負けた」→「つまらない」「別のことをやろう」と思うのか…

「負けた」→「負けた原因は何だろうか」「もう一度やってみよう」と思うのか…

11月23日、全国屈指の進学校として知られる兵庫県神戸市灘中学校にて、アルゴ名人戦・王位戦の開催が決定しました。これを受け、花まる学習会アルゴクラブの各校舎で、この大会の予選が行われています。普段よりも一層ピリッと引き締まった雰囲気の中、子どもたちは集中力を最大限に高め、アルゴゲームに取り組んでいます。

私も今回、あえて子どもたちのテーブルに入り、一緒にアルゴゲームを行いました。そこで改めて感じた「アルゴゲームの楽しさ」。

アルゴカードが配られ、ルールにしたがって順番に並べる。相手のカードを見て、黒の1・白の8のような、確定する数字がないかどうか探す。試合が始まり、相手の言葉に耳を研ぎ澄まし、その言葉からヒントを探す。いよいよ自分の番が回ってくる。まず確定する数字を当てた後、次に1/2にまでにしか絞れない箇所をどちらかに賭けてアタック。それが正解だった時の嬉しさ。逆に外れてしまった時の悔しさ。この嬉しさは「連続で当てたい!」、悔しさは「次は絶対に当てたい!」という気持ちを引き出し、いずれも集中力が高まる理由になる。そして、ゲームが終わった時に、勝因、もしくは敗因を考え、次はこうしようという改善策を考える。こうした思考の過程そのものが楽しいのだ。

「4000安打を打つには、8000回以上の悔しい思いをしてきた。それと常に向き合ってきた。」(日米通算4000本安打を達成したイチロー選手が会見で話した言葉)

アルゴゲームは、勝った喜びより、負けた悔しさを味わうことの方が多いという事実があります。4人で対戦すれば平均で4回に1回しか勝てない。残り3回は負けるということ。アルゴに対する思いが強いほど、負けた時に悔しい気持ちが溢れる。涙をこらえ切れず泣きたくなる。教室から逃げ出したくなる。大切なのは、「負けた」ということに対して「つまらない」「別のことをやろう」と思うのか、「負けた原因は何だろうか」「(それを踏まえ)もう一度やってみよう」と思うのか。前者のように捉えてしまっては、それ以上の成長は望めない。同じ「負け」という事実に対して、後者のように捉えることができる人を育てるために、授業を通して働きかけていくことが私の役割。極端な話、その人の後の人生観にもつながることだから。

アルゴで負けてしまった時に「だからアルゴは楽しいのだ」と私は伝えています。それは、もう一度挑戦して勝つことの計り知れない喜び、また、敗因を追求して結果アルゴが上達していくという実感は、悔しさを乗り越えた人しか味わえないからです。悔しさを覚え、それを乗り越えた時、「明日、今日より強く生まれ変わった自分に出会うことができるのだ」と。

『本気のゲームを望む強さ』   2013年7月 読む▼

先日、算数オリンピックファイナリストの名前が社内で挙がりました。その後、速報のように報告が挙がり、学年は違えど花まるグループから3名がファイナルに進出しているとのことでした。ファイナリストに残る時点で、華々しい結果であると言っても良いほどです。さらに嬉しかったのは、その3名全員、直接担当した生徒でした。先に述べますが、決して自慢ではありません。入会当時から確かに違うオーラというか、雰囲気を持った子たちでした。

では、やはり彼らは幼き頃から特別だったのか。最初から能力の差があったのか。決してそうではありません。もちろん、力は十分に持っていたでしょう。ただ、それ以上に彼らに共通してズバ抜けていたのは、「本気で遊ぶことの面白さ」を知っていたことです。授業内で行うキューブの各競争も、アルゴゲームも常に本気で取り組んでいたことを思い出します。

本気で取り組むとは、どういうことか。仲間同士で勝負に徹することもそうですが、例え相手が我々コーチ(大人)であっても真剣に勝ちに拘ることです。当然、私たちも負けるつもりで勝負することはありませんし、絶対に勝ってコーチとしての実力差をまだまだ見せつけなければと思って取り組みます。思考の差は時として、運が味方し、どちらに軍配を上げるかわからなくなる時があるものです。

そういう時が、一番面白いと言えるでしょう。簡単に勝てる相手と勝負しても全然面白くないのです。互いに本気をぶつけ合い、僅差で決着がつくから興奮するし、面白いと実感するのです。

3人を思い返すと、我々に勝つまでしつこく勝負を挑み続けた子。授業後の休み時間にコーチにアルゴゲームで勝負を挑んできていた子。授業時にわざとコーチと対戦する座席を指定していた子。それぞれに拘りがあり、真剣勝負を楽しんでいたように思います。

時を経て、子どもたちの後伸びした様子を聞くことができることは嬉しいですが、当時を振り返って子どもたちとの思い出に浸ることができることも幸せな一時です。今、目の前にいる子どもたちともこの先同じように思い出しながら話をする時が来るでしょう。

さぁ、子どもたちにとっては、たくさんの思い出ができる貴重な夏休みが始まります。くれぐれも体調管理には気を付けて。また夏期授業でお待ちしています!真っ黒に日焼けした子どもたちに会えることを楽しみしています。

『後伸びする力/考え抜く力』   2013年4月 読む▼

学年が1つずつ上がり、子どもたちも心新たに気合いの入った表情で授業に臨んでいます。特に2年生は、プリント教材も加わり、より深い思考の中で遊びを経験していくことになります。

どの学年においても、是非「今日はどんなことをしてきたの?」とご家庭で聞いてあげてください。今の子どもたちなりの精一杯の説明が、やがて論理的な説明や解説につながっていきます。分かりやすく伝える、要約する、他者性を持って…等々、子どもたちに言葉を用いて説明しても伝わりません。経験を積み重ねて初めて理解し始めるからです。しかもそれは、すぐに結果が伴うものでもありません。経験と気づきを繰り返し、少しずつ少しずつ上達していくものです。

さて、アルゴクラブでは、「後伸びする子を育てる」というテーマでご説明させていただくことが多いのですが、先日の授業でもまさにこれ!という瞬間に出会いました。

3,4年生クラス、詰めアルゴの時間でのこと。新年度初回授業にしては、難易度が非常に高く、子どもたちも苦戦する表情を見せていました。問題を解く時間が過ぎ、それでも粘って思考を巡らせている。通常、問題を解く時間は5分程度。10分を超えても未だ歓喜の声は挙がらない。難易度の上がった問題ということもあり、解答・解説でポイントを伝えようと、仕方なしに合図を送ろうとした瞬間に、

「ちょっと、待って!まだ、誰も解けてないから、もう少し時間をください!」

毎回楽しみにしているアルゴゲームの時間を削ってでも解きたい問題が目の前にある。彼らのメッセージには「本気でゲームを楽しんでいる」気持ちが乗っかっていました。全員が納得しているのであればと思い、聞いてみると満場一致の答え。嬉しくなり、思わず笑みがこぼれました。私が担当しているお茶の水教室は開校して半年。他の教室に比べて歴史が浅い教室ですが、子どもたちにはしっかりと伝わっているものがありました。中途半端では気持ちが悪い。考え抜いた末、本当の「わかった」に触れられるということ。

黙々と取り組んでいた子どもたちの中でも率先して時間がほしいと主張したS。見事に解いただけでなく、完璧な解説を披露しました。発表を終え、賞賛された後に一言。
「はぁ~、スッキリした!」

後伸びする条件を兼ね備えた子だからこそ、自然と出た一言でしょう。これからの成長が非常に楽しみです。

『役割を与えられることで身につく力』   2012年12月 読む▼

子どもたちのアルゴノートに書かれているお手伝いの記録をチェックする時に、「今週はどんなお手伝いをしてきたのかな」と気にしながら見ています。ある日、ある子のノートに「カレーがかり」と書かれているのを見て、これは何だろうと思って尋ねてみました。話を聞くと、お母さんの手を借りずにカレーを1人で最後まで作ったとのこと。授業後、その子のお母さんに話を聞いてみました。お母さんが夕食の準備を始めると、よくその子が料理を作る様子を眺めに来るのを見て、この子は料理に興味があると思って、包丁の使い方を教えたのがきっかけだったそうです。はじめは野菜の切る大きさがバラバラでただザクザク切っていたのを、だんだん大きさや見た目を気にして切れるようになっていきました。そこである日、カレーをその子だけで一から作らせてみたら結構上手に作ることができ、「○○の作ったカレーはお母さんと同じくらい美味しいな」とお父さんから褒められたのがとても嬉しかったようで、以来、カレーを作るのがその子の役割になっているとのこと。最近、「カレー粉から作ってみたい」と言い出し始めたので、逆にお母さんが困っているそうです。

花まる学習会アルゴクラブで、宿題が無い代わりにお薦めしているのが「お手伝い」です。「あなたがそのお手伝いをやらないと家が回らない」という具合に、何か1日1つ以上のお手伝いを「家での役割」として行うことを推奨しています。お手伝いを毎日繰り返し行う中で、どうすればより綺麗に、そして早くできるか工夫するようになります。そうした相違工夫の力が思考力を鍛えていくことに繋がるのです。
私は小学生の頃、地図を見ることが大好きでした。建築士だった父親の影響で、家には道路地図や住宅地図が何冊もあり、それを見ながらまるで旅行をしているような気分に浸って楽しんでいました。そんな自分を見て、両親は自分に1つの役割を与えました。それは、家族旅行の時に自分が車の助手席に座り道案内を行うということです。カーナビがまだ無かった時代でしたから、道路地図を片手に「次の交差点を右」と運転する父に伝えたり、道が混雑していれば迂回路を考えてルートを案内したりしていました。

そのような役割を子どもの頃から与えられていたことで身についた力が、大学受験の際に大変役立ちました。家庭の事情で国立の大学にしか行くことができなかったので、理系志望の自分も文系科目をやらないといけない。しかし、子どもの頃に地図に触れていたことで身についた感覚が、社会科の地理を得意科目とさせ、その結果、何とか合格を勝ち取ることができました。地図に触れることが将来の役に立つとは、子どもの頃の私は全く想像もしていませんでした。ただただ地図を見ることが大好きで、それだけでいつも幸せだった私に、「道案内」を行うという役割を与えてくれた両親。2人は本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

『わからないままは気持ち悪い』   2012年10月 読む▼

アルゴクラブの授業を担当するようになり、7年目を迎えました。最初に担当した生徒は、現在中学生、高校生になっています。先日、遊びに来てくれた子は、当時4年生。背が伸び、身体つきががっしりした青年は、今でも「アルゴのおかげで数学は今も楽しめています!」とのこと。最高の褒め言葉として受け取りました。

さて、遡ること数年前。アルゴクラブを担当して1年目のことです。6年生までの異学年編成で授業を展開していた当時、難易度の高い問題に率先してチャレンジしていた5年生の男の子Iがいました。Iは、必ずと言っていいほど授業後に私の所へ来ては、その日に学んだ解説、解法を説明してから帰るのでした。それは、時に1時間を超えるときもありました。決して理解が遅いタイプではありませんし、その問題のほとんどが解けているのです。当然、迎えに来てくれていたお母さんは教室の前で待つことに。あまりに時間がかかる時は、私たちが心配になる程でしたが、何故かお母さんはホッとしたような笑顔。理由を聞くと「難しい問題を解いているなぁと嬉しく思う反面、家で質問をされても答えられないから大変なんです。だから、どうしてもスッキリしたいなら居残りしてでもやっておいでと言ってあるんです。」とのこと。さらに聞けば、お父さんは、Iが解いて持って帰るその問題を毎週楽しみにしているらしく、解き終わった後はIの解説で丸付けをするとのこと。

その日に学んだことを必ずアウトプットして消化するという流れが、彼の中には習慣として身に付いていたのです。「分かった」と思っていたものは、実は「分かったつもりだった」というケースはよくあります。本当の理解というのは、自分の言葉にできて初めて言えることなのではないでしょうか。是非、ご家庭で実践していただきたいことがあります。帰って来た我が子を見て、「今日はどんなことしたの?」と聞いてみてください。授業で学んだゲームや問題を会話の中で説明する習慣が身に付いていくのではないでしょうか。

初回授業から1ヶ月が経ちました。すでにクラスとしての一体感が出始めて、毎回の授業が非常に面白く、子どもたちと一緒になって盛り上がっています。これからどうぞ宜しくお願い致します。

『サマースクールで得た「チームワーク」の意識』   2012年9月 読む▼

9月8日、2学期初回の授業がスタートしたその日、子どもたちが今までとは少し違う様子を見せていました。例えば、テーブルでIキューブの課題に取り組む時間。今までなら「自分がやる」と言って個人個人で進めようとしていた子が、今日は皆と仲良く協力して取り組むことができているのです。友達同士でお互いにかける言葉がとても優しく、時には笑いを取り合い、テーブルが笑顔で満ち溢れている状態。しかも、そのような成長を見せた子は一人だけではなく、何人もの生徒に同じような変化が起きていたのです。

アルゴクラブの教室長としてこれほど嬉しいことは無かったのですが、それにしてもなぜ突然成長が見られたのだろうと思いました。色々考えてみて気づいたのは、その子たちは皆「今年のサマースクールに参加した」という共通点です。今年度より、サマースクールはお友達同士の班希望ができなくなり、どの子も全員が初めて出会う人ばかり。私も今年8月のサマースクール・サイエンス王国に行ってきましたが、その初日の出発式の時、子どもたちの顔は昨年に比べて緊張した表情の子が多かったように感じました。きっと、「楽しみ」という気持ちの一方で、同時に「不安」という気持ちが、子どもたちの頭の中巡っていたのだろうと思います。

 

「どんな子がいるのかな」

「友達はできるだろうか」

「3日間誰とも仲良くなれなかったらどうしよう」

 

それでも、3日後には皆が笑顔で、知り合った友達と仲良くなって帰ってきます。中には、皆と別れることが辛くて涙する子もいるくらい。この「笑顔」も「友達」も、彼らがサマースクール中に悩み、考え、行動し、その結果得ることのできた財産。本当はわがまま言いたい気持ちを頑張って抑えた、緊張したけど勇気を出してとなりの子に声をかけてみた、面白いことを言って皆を笑顔にしようと思った…不安を振り切って行動し、そして友達ができ笑顔が溢れていく過程の中で、「一人でやるよりも皆でやる方がもっと楽しい」という、チームワークの素晴らしさを知った。アルゴクラブで大切にしている「チームワークの意識」とは、このチームワークの素晴らしさを自身が経験できたからこそ芽生えるものなのだと、自然と仲良くできるようになった子たちを見て感じました。

夏が終わって、一つお兄さんお姉さんになった皆と、今学期も一緒にチームワークの素晴らしさを分かち合っていきます。宜しくお願いいたします。

『自由なアソビ』   2012年7月 読む▼

本日で1学期の授業が終了となります。ありがとうございました。はじめは緊張していた1年生や新入会の子ども達も、今ではすっかりと慣れた様子が窺えます。

これから始まる楽しい夏休みの後には、さらに逞しく成長した姿になっていることでしょう。夏休みにはサマースクールや家族旅行、親戚の家に行くなど、貴重な経験をする機会が多いのではないでしょうか。せっかくの長い夏休み、時間にゆとりがあるときだからこそできることは、遊びや旅行だけではありません。中でも子どもたちに取り組んでもらいたいのが「問題作り」です。

つい先日の出来事ですが、担当した2年生クラスの子どもたちに、たまたま「問題作り」をさせたところ、非常に興味深い問題に出会いました。内容は、いつも取り組んでいるナンバーリンクや詰めアルゴなのですが、ポイントとする部分が明確に伝わってくる、実に「美しい問題」でした。おそらく普段からそういった「アソビ」をしているのでしょう。「自分の頭の中との勝負」とでも言うでしょうか。如何に自由発想と必要条件のバランスを取りながら良問を生み出すか、己の思考との競争です。作った問題が成立しなくてもダメ。簡単すぎても、難しすぎてもダメ。ピンポイントで生まれるこの「美しさ」に出会うことで、子どもの思考は大きく成長するものと感じます。

取り組む中で見えてくる思考の面白さというものは、たくさん存在します。子どもたちは、本来「自由なアソビ」を得意とする生き物です。是非、良問に触れ、作り、遊ぶ・・・この経験をたくさんしてほしいと思います。夏休みの特別カリキュラムも楽しみにしていてください。

ちなみに、私が夏休みの課題として全員に共通して伝えることは、「絶対に生活リズムを崩さないこと」です。当たり前のことのように思うかもしれませんが、最も重要であると言っても過言ではありません。もちろん、学習への影響も根本は生活リズムにつながります。毎日の宿題をコツコツと取り組めるか、学校の宿題も計画的に進めることができるかは生活リズム次第と言えるでしょう。お薦めするのは、早寝早起き、ラジオ体操、朝学習、外遊び・・・。ぜひ、この夏休みが充実な1カ月になりますように。さぁ、サマースクールも今日から始まっています。8月の夏期授業で真っ黒に日焼けした子どもたちの姿を楽しみにしています。

『実力は具体的な行動によって身につく』   2012年5月 読む▼

アルゴクラブでは年に1回、「アルゴ名人戦・王位戦・アルゴ杯選手権」というイベントが開催されます。全国のアルゴクラブから選ばれた実力者が集まり、アルゴの頂点を競います。参加者全員が必要のない話は一切せず、ほんの数秒でアタックをしてカードを当てていく様子には、毎回感心させられます。(尚、2011年度の大会は、南浦和アルゴクラブが名人戦優勝、アルゴ杯準優勝という輝かしい結果を残すことができました。「次は本八幡アルゴクラブの番だ」とひそかに熱くなっている私です。)

先日、アルゴクラブ教室長およびテーブル講師数名とアルゴの勉強会をしました。その際、「名人戦や王位戦に出る子の特徴って何だろう」という話題が出ました。「講師に対してもアルゴで負けたくないと思う子」、「泣くほど負けず嫌いな子」「作問が大好きな子」などいくつかの意見が出ましたが、その中でも私自身も「なるほどな」と思った意見がありました。それは、「今頑張ることができる子」です。

アルゴクラブの2~4年生の授業では、毎回最後に「次の授業で目指すこと」を一言、子どもに書かせています。例えば、「次は3勝する!」「次は30ポイントとる!」という具合に。ここで、その目標を実際に達成できる子どもに共通して言えるのが、その次の週の「自主トレの記録」にアルゴを家で練習してきたという記録が残っているということです。「3勝する」「30ポイントとる」という目標を達成するために、すぐに具体的な行動を取ることができる。そのことを習慣としてできるからこそ、アルゴの技術がどんどん磨かれ、その結果、大会に出られるだけの実力を身につけることができるのだと思います。

本八幡アルゴクラブの3,4年生授業の中である日、アルゴ名人戦の話をしました。これに強く関心を持ち、「アルゴ名人戦で優勝したい!」と、アルゴの発表やアルゴゲームを積極的に行った子どもが一人いました。その日は帰りの挨拶後、お迎えまで少し時間があったのですが、「アルゴの練習をしたい」と自分に話しかけてきてくれました。「1対1ルール」のアルゴゲームを行い、帰りに「お家でたくさん練習して、練習した分を自主トレの記録に書いておいで」と伝えました。

「勝ちたい」「できるようになりたい」という想いは子どもたち全員にある。その想いを達成できるように、具体的な行動ができるようにしていくことが、私の役目だと思っています。

『意地』   2012年4月 読む▼

ご入学、ご進級おめでとうございます。多くの方にご入会頂き、今年度もスタートしました。
先日迎えた初回授業。入会したばかりの1年生の男の子がゲームで勝てなかった悔しさから目に涙を浮かべてふてくされている姿を目にしました。毎年現れるこのタイプ。実に微笑ましい光景であると共に頼もしさを感じます。子どもの世界で本気になって取り組むゲームだからこそ、成長が待っているのです。

数年前に担当した、当時1年生の男の子H。傍から見たらただただ「癇癪持ちの子」と捉えられるタイプでしょう。毎回の授業、特にアルゴゲームの勝ち負けに拘り、アタックされる度に泣きながら怒るHは、次第に顔を真っ赤にして机の下に潜ってしまいました。宥めても賺しても動こうとしないHは、とうとうそのまま授業を終えるまで帰ってきませんでした。そんなことが何度か続いたある日のことです。いつものようにアルゴゲームを始め、Hの様子を見ていると目にいっぱいの涙を溜めながら唇を噛みしめてゲームに向かう姿がありました。

その日の夜、ご自宅にお電話してみると、毎日学校から帰るとアルゴゲームで練習していたとのこと。「『悔しければ、たくさん練習して、いっぱい考えることが大切。勝負はそれまでにどれだけ考えたかで決まる。』と言われたことがそうさせているようです。」と仰っていました。はたして1年生を相手にそこまで難しいことを言ったかと思い返しましたが、彼の心にはその言葉がよっぽど深く浸透したのでしょう。

その後、すぐにHがアルゴゲームで強くなったかと言われるとそんな簡単にはいきませんでしたが、1年が経つ頃にはみんなが一目を置く存在になりました。積極的に手を挙げて発言し、例え間違えても落ち着いて内容を理解しようとする。アルゴにおいて、誰よりも時間をかけてじっくり努力を積み重ねてきた子であると言っても過言ではないでしょう。

新たなメンバーを加えて、また今年度も各教室で熱いドラマが繰り広げられると思うと、今から本当に楽しみです。今年度もどうぞ宜しくお願い致します。

アルゴクラブ
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