Rinコラム 『創作への想い』

『創作への想い』2016年5月

2001年、花まる学習会がまだ小さな塾だったころ、教室で教える傍ら、児童精神科医の故稲垣孝先生とともに、不登校の子どもたちとその家族を支援する相談室Saliを立ち上げました。

家族でのカウンセリングのほか、絵画療法、遊戯療法、箱庭などを用いて子どもたちとセッションを続けます。ただ聴くだけでなく、一緒に何かを作りながら、内なる対話を通して、子どもたちは疑似的に心の葛藤を体現していきました。描いたり創ったりすることが、彼らの内面を表現することを手助けし、確実に何かを浄化し続けているのだと気がついたのは、このときです。創作を通して自分を表現することは、子どもたちに、計り知れないパワーを与えていました。

子ども時代、緘黙かと思われるほどの引っ込み思案だった私も、創作に救われた一人です。おじいちゃん先生が自宅で開いていた造形教室は、口を開かないありのままの私でいてもいい場所でした。その記憶は、いつの時代も私の土台になっています。

2016年で8年目となる創作ワークショップ「Atelier for KIDs」は、そんな私にとってライフワークともいえる活動です。私自身が創作活動をしていく中で、日々生まれるインスピレーションを子どもたちと共有できたら、きっと面白いに違いない。そんな喜びに満ちた気持ちからスタートしました。

これまでの活動を通して確信していることは、この空間でこそ、子どもたちのこころを解放し、強力に非認知能力を育成できるということです。創作が「何かひとつ」のよりどころとなっている子どもたちと、毎月ただ表現することで、何もかもを浄化しながら共に成長している、そんな感覚です。
なぜ、芸術と同じ比重の情熱を教育にも注いできたのか。

それは教育の現場が私にとって、子どもたちと共に創りだす「即興アート」であったからでした。その場で感じて返す、生きたレスポンスを通して作り上げられる、特別な空間。その美しさ、儚さ。常に同じであることはなく、より高みを目指し成長し続ける姿勢。それが真の教育現場にあるもので、芸術性を失ったらそれは、教育とは言えない。

子どもたちが、この世に生まれてきた時から持っている、唯一無二の魅力と個性を、ちゃんと自分で信頼できることの大切さ。そのことを伝えていく、引き出していくことに、教育の意味があると思っています。

私にとって、教育と芸術は同時に存在し、かつ、かけがえのないものなのです。
根津のGallery OkarinaBで少人数開催していたAtelier for KIDsは、毎月続けて参加する子が多く、家族のような雰囲気で制作しています。たくさんの仲間と広い場所で開催することが決定した今年からも、保護者の皆様と、子どもたちの成長を見続けられるような場所にしようと思っています。創ることが大好きな小学生、待っています。

レロ由実