Rinコラム 『感じるこころ』

『感じるこころ』2016年8・9月

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 「③ 上手だね、を使わず認める:あなたがどう感じたか、を言葉にする」
 「④ これは何?と言わない:表現された何かが、具体物である必要はない」
  ―Atelier for KIDsで大人が子どもと関わるときの6つの指針 より
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子どもたちが生きている世界では、感覚そのものが成長のための栄養です。置かれた環境や、接する大人たちから放たれることばを、(特に7歳までは)何も判断せず全てを吸収していく。経験し、感じたこと全てから学んでいるからこそ、「共感=感性の共有」をたくさんする時期と言えるでしょう。果たして、「感じるこころ=感性」を育てることができる幼児期に、大人ができることとは何でしょうか。そして、感性を育てることができるのは、子ども時代だけなのでしょうか?
 Atelier for KIDsで子どもたちとかかわるスタッフたちは、クラスが始まる前、とても緊張しています。(それはもちろん、これから始まる子どもたちとの創作の時間に、期待と興奮がいりまじった良い意味での緊張と言えます)全員が、子どもと関わること以前に、自らを芸術の分野に身を置いている人ばかりです。にもかかわらず緊張をするのには、わけがあります。
 教育の目的は、人格形成=こころの教育であり、内なる可能性を引き出してあげることです。それには、我々大人の感性が問われ続けます。
 特に創作の現場では、制作物を見て、「上手だね」という安易な言葉を発することは、誰にでもできることです。しかしAtelier for KIDsでは、全身全霊で自分の感性のアンテナを使い、「私は、どう感じたか」ということをことばにし続けていくことが、私たち大人の使命だと位置づけているのです。

それは、感じるこころを育てようと思ったときにいちばん大切なのは、関わる我々大人の感性だからです。そして、こころは言葉によって伝えられていくものです。言葉がいつも先にあり、ことばに乗っかって伝わっていく大人のこころや人格が、子どもたちのこころを作っていくのです。
 自分の感動を子どもに伝えられること、素直に声に出すことができるように自分の感情を認め、心を動かしていくことで、大人でも、自らの感性を磨き続けることができるのです。
 一度でもこの現場に身を置くと気がつき、怖くなります。自分の感じるこころのアンテナだけがモノを言うこの時間、私は子どもたちの前に立ち、意味のある仕事ができるのだろうか、と。大人が、自分自身と向き合い、深く対話をはじめる瞬間です。
 このことが、この仕事の最も美しい部分だと思うのですが、感性は子どもと共にあるからこそ、より高めることができるのです。自分を信じ、より感受性を高め、よりクリエイティブに、いつでも面白がりながら、自分の内面を成長し、学びをやめない。
 正解のない世界で、芸術家のこころで。
 教育はARTであり、子育てもまたARTなのです。      
    お母さん、今、あなたの感じるこころを使っていますか?

RELLO 由実(Rin)