西郡コラム 『真意を伝えてほしい』

『真意を伝えてほしい』 2017年2月

自治体と組んで公立小学校を変えようとする私たちの試みは、マスコミによく取材される。花まるの考え方、やり方は、今の時代の学校教育にこそ必要なのだ。官民関係なくいいものは学校に取り入れてほしい。その思いから、より多くの方の理解、共感を得るためにも、マスコミの取材には極力協力している。

真意を伝えてほしい。花まる式「解放と集中」を練りこんだ音読も、表面だけを見れば、ただ、うるさい騒がしい音読としてうつる。「サボテン」も学校の計算ドリルと同じ。ただ計算をやっています、では、花まるの教材ではない。活字で、花まるメソッドの真意がどこまで伝わるだろうか。子どもたちが楽しく、体をゆすって、大声で発散する音読の雰囲気は、活字でどこまで伝わるだろうか。映像なら雰囲気は伝わりやすい、理解も得やすいだろうが、、逆に、一瞬のそうした絵は固定観念を植えつけてしまう場合もある。記事を書く記者や映像をまとめるデイレクターには、“なぜその教材を使うのか”、“なぜそういうやり方をとるのか”、私たちの真意が伝わるように丁寧に説明する。
 学習塾が公教育に入ることに、まだまだ偏見がある。学習塾といえども、一企業。社会貢献をしない企業はない。社会で何かの役に立つから、必要とされるから企業は存続し、お金をもらえる。税金を通して教育に貢献するか(公教育)、直接いただくか(私塾)、その違いは些事、そこは本質的ではないと思っている。私学も実は公教育の一部、補助金はもらう。指導要領の枠を超えないから学校運営の許可が出る。
 大手新聞社のU記者は、相木小の取材の際、学校、保護者、教育委員会、教育長など行政関係者の取材はもちろんだが、山村留学センターに泊まり込み、子どもたちの実態をしっかりとみて、記事を書く。武雄でもお会いした。現場に入り、地道に取材する。偏見なく、あるがまま、見たままから考察してまとめ上げて記事にする。当然といえば当然だが、こういった取材をする人の書いた記事は、たとえ私たちに批判的な内容であっても謙虚に受け止め、次の糧にする。腹は立たない、自分たちの至らなさを思い知るだけ。
 しかし、こんな記者もいた。武雄市で花まる学園が始まることを聞きつけ、私たちがインタビューを受けた。まだ、花まる学園が開始する前の取材なので、朝時間の花まるタイム、青空協室、「なぞぺー」を使った思考力授業の構想を語るも、どこまで実現できるか断言できないところもあり、やりたい、やるつもりでの話になった。結局、学校教育の補てんをする程度の「花まる学園」、改革といえるのかという記事内容になっていた。記事を書くなら、現場を見に来てほしい。その後、どうなっているのか、記事を書いた責任として追跡してほしい。放課後補習、土曜日授業など、学習塾が積極的に公教育にかかわることは大賛成。ただ、花まるがやりたいのは、学校教育そのもの、先生の意識改革そのものに踏み込むことなのだ。私たちの真意を伝えてほしい。

公教育にかかわる私たち花まるが、実際に、長野県北相木や佐賀県武雄でどのような理念のもとに学校改革に奮闘しているかを扱った記事が、雑誌「世界」(岩波書店)に2回にわたり掲載された。この記事を書いた、ジャーナリストの前屋氏は、現場を見て、感じたことをまとめ上げて記事にしている。私たちがやろうとしている真意がより伝わる記事になっている。今度、雑誌「世界」の記事をもとに、一冊の本ができ上がった。『ほんとうの教育をとりもどす 生きる力をはぐくむ授業への挑戦』(前屋毅/著)、とくに、「第4章 学習塾の手法導入と山村留学─ 北相木小学校の学校づくり」、「第5章 そこに、教員の情熱はあるか── 東京都杉並区と佐賀県武雄市」は、ぜひ、読んでいただきたい。私たちが公教育で何をやりたいか、真意が書かれている。

西郡学習道場代表 西郡文啓