はなまるとは コース紹介 開催地一覧 入会までの流れ 保護者からの声 高濱コラム

2005年3月号

2005.2.22 

「朝も帰りも毎日、電車んなかは疲れ切ったおじさんばっかで、社会ってつまんないのかな、って」床屋で普段読まない雑誌をめくっていたら、こんな言葉に出くわしました。22歳の売れっ子の俳優が、中学時代を回想して述べた言葉です。だから、高校にも行かずドロップアウトしてしまった、と続きます。

これを読んで「なるほど、私も若い頃そうだったなあ」と思い出しました。「サラリーマンみたいにはなりたくない」などとピントはずれに突っ張っていて、そのサラリーマン像とは、まさに電車で疲れ切って居眠りしている姿だったように思います。何が楽しいんだろうと疑問に感じていました。長じて、自分が働くようになって、大勢のおじさんたちの、仕事場でのオーラあふれる姿に出会って、「そうか、自分は舞台裏しか見ていなかったんだ」と気づいたときは後の祭り。もう、随分回り道をしてしまっていました。

私が言いたいのは、「社会は、若者に『仕事の迫力・仕事の醍醐味・働く大人の輝き』を伝えることを、システムとして、もっと整備すべきではないか」ということです。冒頭の役者君や私のように、それでも這い上がってきた人間はまだましだけれど、勘違いして世の中をなめてしまって、結局自分が居場所をなくしてしまった若者が、大勢いるからです。

一年以上前、全国紙で一面の特集があって、それは、凶悪事件など問題行動を起こした青年たちの家庭を心理学者が研究したという内容でした。複数の専門家達がたどり着いた最大の共通項は「父親の存在希薄に」という結論でした。私は、講演で「家庭内暴力の背後に『弱いお父さん』あり」と、もう10年間言い続けています。少なくとも一人の女性を口説いて結婚し、仕事をやめずにがんばり抜いているのですから、弱いお父さんなど一人もいない。なのに、何故か家庭では弱い存在にさせられてしまっている。

最大のポイントは、母親の孤独です。地方から出てきて結婚しドーナツ圏に居を構えたまではいいとして、子どもが生まれてからが大変。学業や入試や仕事と違って、24時間目を離せず、時としてどうしていいか分からない存在との暮らし。病気で咳が止まらなかったりしようものなら、命を削って寝ずの看病だったりする。ところが、そんな母のがんばりを認めてくれる人、支えてくれる人がいない状態になりがちなのです。

父親は、外での仕事が分担と信じて、夜中遅くに帰ってきて、家の中くらい休憩させてくれよとばかり、思い切り気を抜いているので、悪気もなく妻の話を「聞いていない」ということが始終起きる。夫の外の努力を頭では理解していても、受け止め手のない母は、自分のカウンセリングとして我が子に愚痴を言い出す。「お父さん、遅いよねえ」「お父さん、話聞いてないよねえ」これが激流の家庭内暴力に育つ、最初の岩清水の一滴です。

要は、地域の崩壊で、核家族第二世代として、孤独と不安の中での子育てを強いられている母親を理解し、父親が言葉を受け止め、一言ねぎらいの言葉をかけて、支えてあげればいいのですが、「子育ては母親の仕事だろう」とばかり、押し付けてしまっていることが不幸の始まりなのです。

そして、そのような父母の協力に加えて、仕事を伝えねばなりません。きれいごとではなく、お客様に頭を下げ、上司・同僚に気を遣い、常に創造的に頭を使ってする大人の仕事の厳しさ・魅力を、見せつけてあげることが大事だと思います。そして、「働くって大変だなあ。でも、早くあんなふうに、一人前に働けるようになりたいなあ」と、子どもたちが信じられる環境を、作っていかねばなりません。

花まる学習会代表 高濱正伸

花まる学習会
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