高濱コラム 2004年 6月号

5月22日は、濃い一日となりました。障害を抱えた子のいる家族のためのコンサート、Shining Heart’s Party当日で、朝から搬入・セッティング・リハーサル、午後が本番でした。昨年の第一回の話を伝え聞いたプロミュージシャンやオーケストラが参加してくれ、素晴らしい歌や演奏を聞かせてくれました。最後の「宝島」という曲では、舞台裏ですでに出演した人たちが輪になって踊るなど、一体感あふれるコンサートになりました。感じる心と才能を持った仲間を持つ喜びを噛み締めました。

その中に、ボランティアで、多くの中学・高校・大学生たちが加わって、車椅子の移動や案内などを手伝ってくれました。ほとんどが教え子なのですが、緊張の打合せに始まり、勝手が分からず戸惑いながらも、さすがに柔軟で、だんだんと子どもたちと遊べるようになったり、手伝いが上手になっていく様子が見られました。帰りに、一人の女子中学生が障害のある青年から両手をとって「ありがとう」と言われ、はにかむ姿なども見られました。奉仕というのは、奉仕をする側の心に良いものだと思います。色々な種類の障害の子に直に触れたことはもちろん、人の役に立ったという経験は、きっと将来の糧になっていくでしょう。

さて、ああ本当によかったと満喫するゆとりもなく、新幹線で越後湯沢へ。こちらは四季の自然スクールに親子で参加している方々との懇親の飲み会があるのでした。昼間お話しするのと、飲んでさらけ出しあって話すのでは、情報の質が格段に違うので、本当に本音を聞ける数少ない機会として、逃すわけにはいかないのです。

今回は、初めて父と母の数がほぼ同数となり、しかも規模が大きくなったので、白熱しました。最初はやはり、私を立ててくださるようなかしこまった意見が続いて、まずいなと思っていたのですが、昨年の経験者のお父さんが、得意の話芸で皆をどっと笑わせてくれたおかげで、一気に打ち解け合うことができました。

何故来たのか、日頃子どものどんなことで困っているか、どういう子に育ってほしいか、妻として夫として父として母として感じることなどについて、TVの討論番組よろしくまじめに、熱く、しかも笑いに満ちておしゃべりすることができました。中でも一番盛り上がったのはやはり夫婦間のコミュニケーションの問題で、夫は話を聞いてないという定番から、妻の議論は感情的で論理性が欠落している、妻の相談というのは実は結論は決まっていてそれを承認してもらいたいだけのことが多い、などなど話はつきませんでした。

本当の伴侶相手ではないからこそ冷静に語れる面もあるのでしょうか、「そうそうそう」の言葉が飛び交い、昼間の田植えや山菜採りといった野外体験に負けないくらいに、お父さんお母さん方にとって貴重な経験になったのではないかと思います。

人間力という言葉が、知・情・意・体を包括する魅力の代名詞として、よく取り上げられるようになってきましたが、その人間力を伸ばす一番の方法は「経験」でしょう。不自由や理不尽や失敗や生傷も含めた経験の豊富さこそが、たくましい自立の力、魅力につながると信じます。今年もサマースクールの季節がやってきました。可愛い子には旅をさせてみてください。企画満載でお迎えします。

花まる学習会代表 高濱正伸