高濱コラム 2008年 8月号

1日の空きもなくサマースクールと勉強合宿が連続する1ヶ月が終了しました。自分が元気なうちに若者たちを育てなければと、相当部分をまかせきって、あまり前面に出ないようにと心がけ始めて数年になりますが、今年は、そんな自制の気持ちを子どもたちに揺さぶられました。

湯沢の初日。川遊びで記録用の写真をとりつつ全体を俯瞰する位置で見ていたときのことです。カメラの操作に気をとられていてふと気づいたら、子どもたちの輪が私に近づいています。あっと思ったら水かけ合戦の開始。プチンと何かがはじけ、本当はやりたかった気持ちに火がついてしまいました。怪獣ごっこもやったのですが、子どもたちの水かけにやられて、倒れて行く怪獣、徐々に沈んで、とうとう口も水面に隠れた・・・と思ったらガオーっと復活しておいかけまわす、というような遊びに熱中しました。

私はあちこちの宿を巡回する形で回っていたのですが、面白かったのは、その怪獣ごっこをやったグループのいる宿に、3日目に行ったときのことです。2年生の女の子が、私を見つけるなり指差して「あー!」と言いました。そして、次の言葉がフルっていました。「川では、ずいぶん楽しそうに遊んでたねえ!」と。まるでお母さんのようなそのモノ言いが、可愛くて、また一方で自分の原点を教えてくれたようで嬉しくて、ホクホクした幸せな気持ちになりました。

最初にそれがあったこともあって、また一方で全体の取り仕切りを、若いスタッフたちがやりきってくれる力がついたおかげで、今年は、最前線で一緒に遊ぶことができました。飛び込み・岩壁渡り・水切り・カジカ獲り・キャッチボール・鬼ごっこ・魚釣り・丸太のシーソー・・・。そして、何それのプログラムをさあ、やりなさいと指示するのではなく、「一緒に遊ぶ」ということの方が、心の目で見た感触として、子どもの心が大きく動くなあと、再確認もできました。

勉強合宿では、「私くらいの年齢になると、何があるか分からないんだよ」という話をしたときに、男子たちは「それ困るよね、FCつぶれちゃうもん」というあっさりした反応だったのですが、一人の5年生の女の子が、こう言いました。「やだよそれ。だって、先生には、私が大きくなって活躍するのを見てほしいから!」

クラッとくるくらい揺さぶられ、よーし老け込んだこと言ってないでがんばるぞーという気持ちにさせられました。

そんなふうに、子どもたちの言葉や振る舞いにどんどん元気をもらう一ヶ月が過ぎ、クタクタになって帰ってきた最終日の夜、一人の青年Y君が事務所に訪ねてきました。高校3年生になる彼は、今年の甲子園に、控えとは言えベンチ入りメンバーとして出場したのです。

彼は、小学生の頃からキャッチボールの球がひときわ速くて、「君は、がんばれば甲子園に行けるぞ。」と言っていた子だったのですが、本当に実現したのは凄いことで相当な努力をしたんだろうなと思いました。強豪チームでそこまでがんばったおかげで、大学ももう決まっていて、「将来は体育の先生になることにしました」と報告してくれました。そして「これどうぞ」と手渡されたものは、小さなビン。高校球児として目指して行けなかった私が、「もしも行けたら、持ってきてくれよ」と、Y君にむかし頼んだおみやげ「甲子園の土」でした。