西郡コラム 『授業実況中継~漢字を書く~』

『授業実況中継~漢字を書く~』2011年6月

「『一』『二』『三』、書くことだけに集中して、一気に書いてください。速く、正確に。漢字テストです。とめ、はね、はらいを正確に、線と線が重ならないようにしてください。字のバランスはいいですか。相手に見せる字です。正確に書く。急ぎましょう。今、あなたたちは覚えてきた漢字を一気に書いています。これが集中するということです。余計な事を考えず、今、何をやるか、それだけ。体で集中することを覚えてください。そして授業でつくった集中力を家庭で続けること。続けることでしか自分のものになりません。家庭学習は、やり始めたら一気に集中すること。」

「キョロキョロしてはいけません。隣の人のを見て漢字が書けたとしても何の意味もありません。何のためにここにきているのですか。『誤魔化さない、出来た振りをしない』心得の一つです。意味のないことをしてもあなたたちのためになりません。人の答えを見て書いて○をもらうより、まだ零点、出来ないことに向き合った方が、あなたたちの未来はあります。」

「はい、終了。では答え合わせをします。赤ペンを出して、黒鉛筆は仕舞ってください。答え合わせのポイントは何ですか。そうですね。自分に厳しく答え合わせをすること。出来ない、間違えた漢字こそ、あなたたちにとっては大切なのです。○はどうでもいい。もうあなたたちの中にあるのです。学習の意味を取り違えないでください。」
「ん?いい加減な答えを書いていますね。出来ない、分からない、間違えた、それを出来るように、分かるように、間違えないようにすることが学習です。だから正解を正しく書いてください。いいですか。漢字のテストです。その字は先生には読めません。それに○をつけてはいけません。ただ答え合わせをしなくてはいけない、だから写している、ではいけません。間違えた漢字こそ正しく書くのです。今、向き合って、覚える。この次ではなく、今です。その時その場で片づけてしまう。だから正しい漢字を書いて、今、覚えるのです。」

「では、次回の漢字です。新しい漢字が四つ、その漢字を使った熟語がそれぞれ三つ、合計十二個です。漢字の学習の仕方を確認しましょう。まず、辞書を引いて調べます。読み、部首、画数の三つの引き方がありました。その漢字が見つかったら、プリントに読みを書く。読みは音読みと訓読みがありましたね。そして画数、部首と部首名を書きます。それからその漢字の意味を書きます。本来、その漢字がどういう意味を持っているかを辞書で読んでください。成り立ちも学習しましたよね。漢字の成り立ちは、六書、物の形をそのまま表した象形文字、形に表せない位置や数量を点や線を使って表した指事文字、二字以上の漢字を組み合わせた会意文字、音と意味を表す文字を組み合わせた形声文字、社会が複雑になり文明が発展すればするほど漢字は作り出されてきたのです。形声文字が七割ほどを占めます。他に、転注文字、これは音楽の「楽」で、そこから転じて楽しいの意味が生まれた字。仮借文字、音を借りた漢字です。この漢字は六書の中の何、を覚えなさい、と言っているわけではありません。興味を持って、辞書を読んでほしいのです。この漢字にはどんな意味があるのだろうか。どういう成り立ちでできたのだろうか。『問』の部首は口、門どっち、そうか面白いと思って辞書を読んでほしいのです。興味を持つことが暗記を助けます。ただ棒暗記するよりも意味がわかった方が頭に残ります。面倒ですが、時間をかけた分、あなたたちの頭を鍛えるのです。だから辞書をたくさん引いて、読んで、面白がってください、興味を持ってください。」

「調べた漢字、熟語を覚えます。十二の熟語の中から十問の漢字テストをします。どうすれば覚えられますか。そう辞書を引いたときに、まず覚えようとすること。覚えるという意志をもつこと。次に書いて覚えること。何回書くか。それは自分で決めてください。自分の頭と相談してください。覚えるのが早い人は回数が少なくて済むでしょうが、覚えるのが苦手な人は回数が増える。当たり前のことです。自分の頭はあなたたちしかわからないのです。自分で決めて、覚えきってください。練習したのに覚えられなかった。では、どうすればいいでしょうか。十点を取った人にやり方を聞いてみましょう。そうですね。一度学習しただけでは不十分です。もう一度、昨日の夜、塾に来る前、書けるかどうかを試すことです。簡単なことです。読みを見て、その漢字が頭に浮かびますか。あいまい、出てこない、ならばもう一度、覚えればいいのです。自分でチェックすればいいのです。一手間かけること。面倒でも、書ききるかどうか。この学習の仕方を身につけてください。これから高学年、中学へと進みます。これをテストしますよ、と言われたならば、それを覚えきる、やりきることです。難しいことではありません。そういった習慣を身につけるために、ここにきているわけです。」

「漢字の宿題を忘れました。やるのを忘れた。おかしな話ですね。もうここにきて数カ月が経っています。漢字の宿題が出ない日はありません。やり方は十分に伝えてあります。忘れたのでなく、サボったのです。病気ならば仕方がない、そうでなければやるのは忘れたは、ここでは通用しません。泣いているのですか。どうぞ泣いてください。泣きたいだけ泣いてください。しかし誰も助けはしません。やるかやらないかは、あなた次第です。居残りしてやる。そうですね。自分のことは自分で解決してください。学習は、あなたたち次第です。」