西郡コラム 『子どもたちへの講演2』

『子どもたちへの講演2』2013年10月

好奇心という言葉を知っていますか。知らないことや珍しいこと、ものに興味を抱く心のことです。先日、時期的に生徒が仲秋の名月を何かで聞いたらしく、そこから、月ってどうして形を変えるのだろうと思い、「月は満月になったり、三日月になったりするのですか」という質問を私にしてきました。月ってどうして形を変えるのだろう、これが好奇心です。この月の満ち欠けは学校でいずれ習います。学校で習うときに、どうして月って形が変わるの、という疑問を予め心に抱いていると、習ったときに、あっそうかと感じ、分かり方が違います。ただ先生の話を聞いているだけなのと、予めなぜと思って興味を抱いて聞くのとでは大いに違うのです。好奇心が旺盛、旺盛というのは盛んなこと、つまり、これって何だろう、どうなっているのだろう、なぜそうなるのだろう、という疑問や興味をたくさん持つことが皆さんの学習の土台になります。

好奇心は、あくまで心の持ちようです。これって何だろう、では、次にどうするか。好奇心を抱いたことを、わかりたいと思う、だから、その生徒は私に質問しに来ました。次に進んでいます。誰かに聞かなくても調べる方法はいくらでもあります。そうですね、辞書事典、今ならインターネットで調べることができます。月の満ち欠けなんかは動画として見る方がわかりやすいかもしれません。好奇心を抱くから、一歩踏み込んで聞く、調べるという行動に出たわけです、思うだけではなく、好奇心を抱くだけではなく行動に移すことが大切になってきます。先ほど(先月号掲載)、向上心を持つことについて話をしました。これもそうです。何だろう、そこから更にわかろうとする行動まで高めていくこと。そして、その原動力は意欲です。知りたい、調べたい、という意欲を持つことです。

さらに、もう少し考えてみましょう。人間は忘れるという話をしました。だから、書きつけておく、そしてそれを見て記憶を蘇らせる。ノートを作るというのは後で記憶を蘇えらせるようにするため、だから、工夫してノートを作るわけです。面倒ですか。面倒でも、あなたの知の財産になります。もうすでにやっている人も多いはず。「言葉ノート」を作っている人です。その日に出会った言葉を書きつけておく。これって何て読むの、どんな意味があるの、どう使うの、好奇心はここでも発揮されます。日常の言語生活を漠然と送るか、出会う未知の言葉に敏感に反応するか、そこで人生が大きく変わります。おさらいしましょう。何に関しても、これってなんだろうという心を抱くこと、そして、それを調べること、とっておきたい、記憶に残しておきたいことはノートに書いておくこと、そのノートも記憶が蘇りやすいように工夫することです。

面倒、でもやろう。そう、やろう、ここで働くのは意志です。意志というのは簡単にいえば、なし遂げようとする心のことです。自分のこれまでと少し変えるわけですから、変えるには意志がいる。自分をコントロールすることですから、意志が働く。意志が弱いというのは、なし遂げようとせっかく心に決めたのに途中でやめてしまうことです。ちなみに途中でやめることを挫折といいます。逆に意志が強いというのは、やり遂げるから、強いということになるのです。でも、何でもやり遂げられる人、意志の強い人はそうそういません。みんな途中でやめる挫折を味わっています。挫折からもう一度、この繰り返しで実は意志は強くなっていくのです。スモールステップ。やり遂げようとする内容を簡単なものにしていく、それをやり遂げる、その自信でまたやり遂げることをつくり達成する、小さなステップを上る方法です。一方、自分には無理なこと、とてつもないことを、あえてやり遂げようとする、ときには挫折を味わい、それでも諦めない、粘りづよく続けることも一つの方法です。どんな方法でもいい、自分で自分のやり方は決めていい、やり方を変えてもいいのです。

やり遂げようとする心、意志が働かなくても、やり遂げることができる方法もあります。それは、習慣にしてしまうことです。習慣というのは、長い間繰り返し行ううちに、そうするのがきまりのようになっているということです。たとえば、日常生活できまりになって当たり前にやっていること、歯磨き。今日は歯磨きをするぞう、なんて意志が働かなくても当たり前にやっていますよね。意志が働かなくても当たり前になってやっていることが習慣です。ただ、すぐに習慣はできません。何度も繰り返すうちに、反復するうちに習慣は形作られていきます。反復する過程にはやめることも途中で出てきます。それをやめないで続ける。先ほど、習慣には意志は働かないといいましたが、初期のうちは、反復が定着するまでは、やめない意志は必要です。意志が働かない状態にしてしまうことが習慣です。

若いころにランニングを習慣にしたことがあります。最初は、走り出すと体が重たく感じ、もうやめてしまいたい。しかしそれでも続ける、ここは意志。次第に足を前に運ぶエネルギーが少なくて済むようになる。しばらくすると走らないでいる日は気持ち悪いと感じる。やらないと気持ちが悪くなってきた段階でランニングは習慣になっています。皆さんが、朝、いつもより10分早く起きてサボテン(計算ドリル)をやると決める。眠い、面倒、それでもやり続ける。そうですね、一週間も続けてみてください。やらないと罪悪感が生まれてきます。罪悪感というのは、悪いことをしたと思う気持ちのことです。ここまでくれば、朝、サボテンをやるは、もう習慣になっています。しかも、自分で自分を律することができた、なし遂げたという達成感を得られた経験は、次の習慣を産みやすくします。最初は、やり遂げる意志は必要だが、習慣にしてしまえば、意志は不必要、当たり前になってくる。皆さんも、自分の学習を自分で決め、それを苦ではなくやり遂げる学習習慣を身に付けてみましょう。