講演会実況中継 『中学受験』

『中学受験』2013年10月

Q
6年生の女の子。中学受験を一ヶ月後に控えておりますが、勉強に追いまくられる生活に嫌気がさしているようで表情も冴えず、モチベーションが上がらない状態です。どのように娘を導いてあげればよいのかご教授ください。中学受験を乗り越えたという成功体験を味わうようにさせてあげたいのですが。
 

A
うーん。これはですね、ちょっとシビアなんですよね…。12月のこの時期で、モチベーションが上がらないっていうのはね、ちょっとその前段階に問題があるんですね。つまり今まで「やりたくないのにやらされてきた」っていう感覚がある証拠ですからね。そんなに甘くないです、これは。本当のところね、もしこれが夏でこの状態だったら、もう降りた方がいいって本当に言います。無理だよって。つまりね、「やる気十分で、自分で計画表立てて勉強できるような子たち」がライバルなんですから。そんな中で、このモチベーション水準だと厳しい。

本当は、上手に持っていってあげれば絶対やれる子なんですよ。だけど、どこかでチグハグになっちゃった。嫌々に、無理やりに、よく言いますけれど「やりきれないような宿題の量をやらされちゃった」んですよ。だからそれは本当の勉強じゃないんですよ、もう。これはもう、本当は降りた方がいい。

うちなんかはね、夏でも本当に降りさせますよ。前にもちょっと言ったことあると思いますが、情熱大陸で5人中学生映っていましたけど、浦和高校とか開成とかいった子たちですけどね、5人中3人は、中学受験を夏でやめた子達ですよ。つまり、6年の夏なのに、自分で集中してやる取り組みができないので、これはやめさせましょうと。そこはもうね、勇気はいるけれど、結局大成功しているわけですよ。3年後の受験にもっていって。

その辺はね、分かります。親としてね、「ここまで一生懸命やったし、今更」っていう気持ちはすごくある。お金だってもったいないしっていう。でもね、そういう勇気が必要な時もあるんですよ。

ただこれはもう12月ですからね、絶対受けるでしょう。その場合はね…ああ、難しいな。これはもう本当に、ハードなケースです。そんなに甘くない。

彼女が好きな先生とかがいるといいんですけどね。塾の中でもね。その先生との人生論みたいなところで上手に持っていってあげればいいかもしれませんね。

で、お母さんとしてはね、子どもはもう「期待に応えられない私」が、嫌になってしまっているんです。勉強そのものが嫌というよりは。「お母さんに、モチベーションが上がらない状態です、って言わせてしまっている自分」が一番辛いんですよ。それはわかっているんだけど、もう、こうなっちゃったし。という状態。「もうお母さんを喜ばせられない」ということに一番傷ついているから、その辺りの気持ちっていうのかな。「もうここまできたら、通ろうが通るまいが、大丈夫。一緒に受けよう」と。「お母さんはとにかく、あなたが元気ならいいから」と。そういうことをね、きっちり言ってあげることかな。時間とって。そういうことで少し救われるかなと思いますね。

「期待に応えられない自分」はつまり「条件付き」で、アウトだなと思っている面があるんですよね。そうすると、そのあといろんなことができなくなっちゃうんですよね。「色々頑張ってきたけれどね、今まで。こういう風にしちゃったのはお母さんだしね」と、それはまあ終わってからでいいですよ。色々言うのは。「でもあなたは一生懸命頑張ったと思う。これからだって大丈夫、人生まだまだこれから」って。ただ言い訳に聞こえちゃうところが辛いんですけどね。全然そんなことないでしょう、本当に。ハタチ過ぎたってもう一回ゼロから勉強したって僕みたいに通ることは通るんですから。どん底まで落ちていましたからね。僕はもう本当に家庭裁判所に行ってね、こんな子はもう育てそこないです、みたいなことまで言われたんですよ。そんな状態からふざけんなよ、と思ってもう一回勉強して立ち直りましたけど。まあそういうことだってできるわけですから。

そのことをね、腹据えて、お母さんが心の底から「まだ全然。こんな中学受験なんて、何にも決まらない」ていうことをね、「言い切れれば」大丈夫だと思います。どうしてもそのゲームの中にいると、「このゲームに負けたらすべてダメ」って思ってしまうのが子どもですから。お母さんはそれにのまれないでください。生活をしてから、働いてからが一番大切ですし、家庭を持ってからが大事なんですから。そこに向けてまだまだ練習段階なんだから大丈夫。ということを腹据えて言ってあげて欲しいです。

(臨場感を伝えるために、あえて話し言葉のまま掲載しています)