西郡コラム 『涙もサマースクール(1)』

『涙もサマースクール(1)』 2014年10月

今年もサマースクールに参加した。「体験ワンダーアカデミー」はこのコースができた当初から参加、「古代人の国」は北相木村で行われていることもあって、コース設立4年目で今夏初めて参加した。どちらの3泊4日のコース。
 2008年「体験ワンダーアカデミー」のコース設立にあたり私は以下の文を寄せた。
 「自然の中で、みなさん自身が自ら考えて行動します。他人まかせにするのではなく、自分ならどうするかということを意識して、いろいろなイベントに挑戦します。まずは「わたしならこうする、こうしたい」を強くもって下さい。
 すぐにできることは少ないのです。考えて考え抜いて、やってみる。それでも上手くいかない、失敗することもたくさんあります。そこからめげずに、あきらめずに、その失敗を改善して、何度も試していきます。試行錯誤をくりかえし、よりよいものを作っていきます。
一人で考え、そして他の仲間の知恵を借りながら、お互い助け合ってつくっていきます。一人でつくるのではなく、みんなで協力します。しかしみんなに頼ってばかりではいけません。一人一人が自分の意見や考えを出して、はじめてグループとしていいアイデアが出てきます。みんなの力はいい方向に進みます。みんなでいい考えを生み出すには、メンバー全員が一人一人ちゃんと意見をもつことが大切です。他人まかせにはしないでください。
 ここには川があり、山があり、自然があります。この自然の環境の中で、日常では見えないこと、考えないことが、あなたの中からわき出てきます。この自然の中で、あなたの頭の中から生まれてくるアイデアを楽しみましょう。見る不思議、浮かんでくる疑問を大切にします。自分の感性とじっくり向き合う時間と環境があります。
 暑い夏です。暑さに負けず、サマースクールをおおいに楽しみましょう。そのためには病気にかかるわけにはいきません。ケガをするわけにはいきません。どうすればいい体調が保てるでしょうか。ケガをしないためにはどうすればいいでしょうか。楽しむと同時に安全性も自分たちで考えます。
 家庭では家の人がやってくれることもサマースクールでは自分でやらなくてはいけません。自分一人で起きる。布団を上げる。食事の準備も自分でやる。自分の荷物は自分で管理する。今日の予定もちゃんと分かっている。甘える人はいません。一人一人が“一人前”になってはじめて団体行動は楽しくなります。自分のことは自分でやる、です。
 このサマースクールを経験して、心も体もたくましくなってください。さらに4日間の経験だけで終わらせるのではなく、夏休み後半、2学期へと、たくましくなった心と体をさらに成長させ、学び続けましょう。サマースクールの経験を活かすかどうかは、サマー後にかかっています。学習も生活も運動も、だれかにまかせるのではなく、「自分がどうする」という気持ちを持って、自分を主人公にしてがんばりましょう。そして学ぶということは、「自分がどうする」ということです。主体性ももって、意欲もって2学期の学習を実りおおきものにしてください。」
 そして2014年、6年も経てば、私はただのオブザーバー、お手伝いとして参加。すべてコース責任者の宿長、救護、リーダーが運営している。お任せである。しかし、私が何も言わなくても、宿長や救護が「アカデミーの心得」と称して「どうする? 考える! 考えたら? やり抜く!」という合言葉をつくり、事あるごとに唱和、子どもたちに楽しく「心得」を浸透させていた。このコースの真髄が脈々と受け継がれていた。
 「古代人の国」は、花まる授業が北相木小で始まった年に同時スタート。北相木村には、10体以上の縄文時代早期の人骨や、土器、石器、骨器、食料にしたと思われる多数の動物)の骨なども出土した「栃原岩陰遺跡」がある。それらを展示した考古博物館もある。だから、このコースを「古代人の国」とした。博物館の学芸員の指導のもと、子どもたちは鹿の骨でペンダントや釣り針を作り、竹で皿、コップ、箸を作る。木と棒だけを使っての火おこしを体験する。自分で作ることは子どもたちも嬉しい。手作りペンダントを首に下げ、夕食には、竹の皿、コップ、箸を使い、それらを私に誇らしげに見せてくれた。
 村の子どもたちも合流、混合のチームをつくって交流をはかる。子ども同士、一緒に行動しはじめるとすっかり仲がよくなり、打ち解ける。経験、いろんな人たちと出会うことで人と人との接し方を学んでいく。子どもたちだけではない。村の人たち、小学校の先生までもが参加、協力してくれた。トウモロコシを畑からもぎとり、ジャガイモも畑を掘ってとる。そして、ニジマスのつかみ取る。すべて村が提供してくれる。昼食は、とれたてのトウモロコシをゆがき、ジャガイモを煮て、ニジマスを焼いて食べる。とれたてのきゅりやトマトもかじる。村の子どもたち、村人、先生、そして私たち、贅沢な昼食を味わった。
 川遊び。晴れ、だがここ数日の雨で多少増水している。深いところは子どもの腰まであり、川の流れの勢いも増している。それでも川遊びをするか、浅い場所に限定して遊ぶか、どこまで遊ぶ、難しい判断に迫られる。何事も子どもたちに経験させたい、これが優先順位。三人が川下に立ち、川の中腹にも人が立つ。一緒に遊ぶスタッフも遊びながら周囲に目を光らせる。万全の注意を払い、川遊びを決行する。川の流れの勢いを感じながらも踏ん張って川をさかのぼる、茂みに網を刺し魚取をとる、素潜りをする、水を掛け合う。こちらの心配は御無用とばかり、子どもたちは無邪気に川遊びに大騒ぎする。子どもたちは川遊びが好きなのだ。
 万が一はあってはならない。まずは命を守ること。だからといって無難なところで遊んでも意味がない。自然のなかでしか楽しめない遊びがある。そしてそこには生と死の境がある。楽しい川遊びも流されれば命を絶つことになる。生と死の境を経験してこそサマースクール。

西郡学習道場代表 西郡文啓