松島コラム 『激動の社会を生き抜くために①』

『激動の社会を生き抜くために①』 2015年3月

これからの時代を生き抜くために、社会に出るまでに身につけておきたい力とは何か。私はそれを「行動する力・継続する力・受容する力」だと考えている。どれか一つでも強みになれば他の面で至らなくても救われることも多い。リーダーとしての条件でもある。もちろん、これらの力は社会に出てからでも身につけることはできるが、年齢とともに身体も心も硬直していくため、早い段階でその土台を作っておいたほうがいい。
 社会に出たら、「まず行動しなさい。」と言われる。勉強だけしかしてこなかった人間は、知識はあるが実体験が乏しいため、一歩踏み出すのに時間がかかる。考えすぎてしまうのである。世の中で活躍しているリーダーには高学歴の人も多いが、高学歴だから活躍しているわけではない。どの人も行動力がずば抜けている。大学に通る力は社会で通用する力の一部分でしかない。だから今、大学入試を変えようとしている。
 知識やスキルは当然必要である。しかし、それだけではこれからは生き残れない。なぜなら、そういうことを学ぶ機会は世の中にあふれていて、持っていることが前提となり差別化できないからだ。前例のない、答えのない激動の社会で生き残るためには、チャンスがあったら厳しい環境に自ら挑んでいって、経験でしか学べない、いわゆる経験知をつかみ取ることが大切になる。その立場に立たないと学べないことが世の中にはたくさんある。「無茶ぶり大いに歓迎」の精神こそが、短期間で自分をいっきに成長させてくれる。
 ある人の言葉を借りるなら、バッターボックスに立とうとしているかどうかである。打席に立ってピッチャーと対戦しなければ、何も学ぶことはできない。それを他人に譲ってしまうのは人生の損失である。いつチャンスが回ってくるかわからないのが世の中だ。「もっと日の当たるところを探そう。」とほかのチームに移籍しても同じことを繰り返すに過ぎない。目の前にチャンスが与えられたなら、その打席に全力を尽くさないといけない。たとえその打席の結果が悪くてもいいのである。全力で挑んでいればまたチャンスは回ってくる。そして、その失敗の経験が財産になり、次は前の打席よりもずっとよいパフォーマンスができるようになる。修羅場をくぐってきた経験の数で人生の豊かさは決まるのではないだろうか。
 私は中高生向けの講演会で、「若いうちにどんどん挑戦して、成功も失敗もたくさん経験しよう。」と伝えている。たった1時間半の話でも彼らの意識が変わっていくのがわかる。アンケートには、「失敗してはいけないと思っていた。」「失敗を恐れて逃げていた。」「苦手なものにも積極的に挑戦したい。」「授業中にもっと手を挙げるようにしたい。」というような内容がたくさん書かれてくる。若いうちはわからないことだらけである。言葉にして伝えることが私たち大人の責任だとつくづく感じる瞬間である。
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