松島コラム 『問題発見力と解決力』

『問題発見力と解決力』 2016年8・9月

今、様々な方面でこれからの教育、入試のあり方が議論されています。
 思考力、判断力、表現力と意欲、主体性をどうやって育てるのか。本来の大学教育のあるべき姿とはどのようなものなのか?入試で記述問題やディスカッションを増やすのはいいが、その評価を誰がどのようにするのか。
 こんな入試問題があります。

「ある星から地球に視察にやってきた宇宙人が、次のような質問状を残していきました。
『地球でいちばん驚いたことは、地球人が国と呼ばれる単位に分かれて暮らしていて、国ごとに異なる制度の下で競い合っていることす。私たちの星には、国という制度ばかりか、その概念すらありません。そこでお聞きしたいのですが、地球人はなぜ国という単位に分かれて暮らすことを好むのですか?』以上の質問状に書かれた問いに答える形で、宇宙人への返事を400字程度で書きなさい。」
(2013年度慶應大学法学部FIT入試より)

2020年の大学入試改革の話が持ち上がった当時、この問題が将来の入試問題の一例として取り上げられました。単なる知識の暗記だけでは答えられない問題です。答えも一つには限定されません。
 教育改革の方向性はある程度見えてきましたが、具体的なことが決まるまでは時間がかかりそうです。しかし、それが決定するまでの間、ただ待っているだけでいいのでしょうか。
 2045年、人工知能が人間の知能を超え、それによって多くの仕事をロボットが行うようになると言われています。今10歳の子どもが働き盛りの39歳のときです。確かに周りを見れば、お掃除ロボット、電車や車の自動運転、飲食店のタブレットによる注文、スーパーのセルフレジ、今や当たり前になった自動改札機など、以前は人がやっていた仕事を機械が代行しています。177に電話しなくても、スマートフォンが一週間の天気をピンポイントで教えてくれます。一定の期間を経て、Windows95やスマートフォンが爆発的に広まったように、人工知能革命へのカウントダウンも始まっているのかもしれません。これまで人間がやってきた仕事がなくなるのであれば、人間にしかできない仕事を生み出さなくてはいけません。そのときに必要なのは、自分で問題点を見つけ、解決していく力だと多くの教育関係者が言っています。
 未来の社会において課題発見力・問題解決力はとても重要な力です。しかしそれらはもともと子どもたちが持っている力だと思います。彼らは「なぜ、どうして」と考えるのが大好きですし、何もない空き地でも自分たちで遊びを創造し、楽しむことができます。そうした好奇心や探求心、創造力の芽が伸び、それに知識や技術、経験という枝葉がつくことによって、社会を変革する大きな力に成長するのだと思います。しかし大人も子どもも何かに忙しすぎると答えだけを求めたくなります。今年の夏は自由研究などを通して親子で一緒に考える時間をゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。
 さて、小6・中3の受験生のみなさんは、この夏が一つの正念場です。まずは夏明けのテストに向けて、ひたすら勉強に勤しんでほしいと思います。朝から晩まで塾で面倒を見ます。もちろん体調には十分気をつけてください。夏期講習や勉強合宿で元気な顔で会えるのを楽しみにしています。