松島コラム 『習慣づくりの季節』

『習慣づくりの季節』 2018年3月

 卓球に詳しくない方でも、「チョレイ」の雄たけびで有名な張本智和選手のことは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
 先日、卓球の日本一を決める全日本選手権に行ってきました。実は私は下手の横好きながら、大学まで卓球をしてきた経験があるのですが、私たちの時代の卓球は根暗なスポーツの代名詞でした。しかし、今や開場2時間前から長蛇の列。東京オリンピックの卓球会場となる東京体育館は7000人の観衆でいっぱいになりました。特に今年は、史上最年少での連覇を狙う平野美宇選手とリベンジに燃える石川佳純選手、そして14歳中学生の張本智和選手と史上最多の10度目の優勝を狙う水谷隼選手との対決など、卓球ファンにとっては見どころ満載の大会でした。
 女子の決勝は「みうみま」対決となり、石川選手を準決勝で破った伊藤美誠選手が絶好調で、親友かつライバルの平野選手を圧倒しました。伊藤選手の女子ダブルス、混合ダブルスと合わせた3冠は史上最年少の記録です。そして、男子決勝は、予想通り、張本選手対水谷選手。世代交代なるかという大一番で、張本選手は物おじすることなく、一球目から渾身の「チョレイ」に会場はどよめきに包まれました。冷静でありながらも常に攻めの姿勢を崩さない試合運び。以前は劣勢な時にすぐにイライラしてしまい、感情のコントロールができないことが課題と言われていましたが、そうした姿はもうそこにはありませんでした。優勝を決めた最後の一球では、雄たけびはなく、ずっとここまで支え来てくれたコーチであり父である宇さんに、一目散にかけより抱き合う姿が感動的でした。
 卓球選手であったご両親に小さいころから指導を受けてきた張本選手ですが、母である凌さんは、「卓球だけできればいいわけじゃない。勉強もしっかりやらなくてはだめ」と文武両道を貫かせるため、海外遠征などはできるだけ夏休みに絞り、学校を休ませるようなことはしなかったそうです。ベスト8に入る快挙を成し遂げたジュッセルドルフでの世界選手権期間中でも、「勝ったよ」というわが子からの電話に、「よかったね。ところで今日は勉強したの?」と、いつどこにいても学習習慣は崩させたくないという親としての強い意志が垣間見られるエピソードもあります。「いつかは選手ではなくなる。ケガをして続けられなくなることもある」と、将来を案じる母としての愛情がそのぶれない姿勢を支えていたのだと思います。
 しかし、そううまくはいかないのが現実です。計画は立てたものの、親が言ってもすぐに机に向かってくれない、いつもギリギリになって課題(宿題)をやっている、など親の悩みは尽きないものです。新年度、新学期は周りの環境も変わり、生活習慣も見直すよい機会でもあります。自学ノートや学習計画表を活用して、家庭学習の習慣作りにご協力ください。もし、自宅ではなかなか勉強できないようであれば、自学室をご利用ください。また、春を過ぎて暖かくなってきたら、学習時間を朝に移す方法もあります。朝の1時間は夜の2時間分にあたるとも言われるように、習慣となれば学習効率がぐんと上がります。もちろん誰でも朝型がよいわけではありません。子どもによっては夜型のほうが向いている場合もあります。ただ一定数の割合で4年生くらいから朝型の学習に切り替えているご家庭もあります。ご家族の協力なしではできませんが、可能であればトライしてみてはいかがでしょうか。
 さて、張本選手は学校での成績もトップクラスだそうです。世界選手権を12回優勝している卓球の神様、故荻村伊智朗氏は「卓球はチェスをしながら、100m走をするようなもの」と言ったように、卓球は非常に戦術が重要なスポーツです。その点でも彼のクレバーさは大きな武器の一つだと言われています。2020年、張本選手が金メダルをとる瞬間を、この目で見たいものです。

スクールFC代表 松島伸浩