松島コラム 『恩をつなぐ』

『恩をつなぐ』 2026年1月

 2026年を迎え、中学入試・高校入試が本格的に始まりました。
 受験生、そして保護者のみなさまにとって、この時期は期待や不安、安堵や悔しさなど、さまざまな思いが交錯する毎日だと思います。まずは、ここまで歩んできた日々そのものが、かけがえのない努力の積み重ねであったことを、どうか大切に受け止めていただきたいと思います。入試が終わるその瞬間まで、自分を信じ、そして何よりわが子を信じて、最後まで挑み続けてほしいと心から願っています。
 さて、2025年を振り返ると、社会全体が「想定外」という言葉では片付けられない出来事に何度も直面した一年でした。猛暑や急激な気温変動が常態化し、熱中症リスクの増大や農作物への影響など、異常気象が生活や経済に直結する問題として強く意識されるようになりました。また、線状降水帯による豪雨が各地で発生し、洪水や土砂災害、交通網の混乱が繰り返され、「いつ起きてもおかしくない災害」として、自然災害が日常のリスクと受け止められるようになった一年でもありました。
 実は昨年9月、東京都内を襲ったゲリラ豪雨により、当塾の自由が丘校も大きな被害を受けました。教室が浸水し、急きょ使用できなくなってしまいました。生徒のいない曜日・時間帯だったことが、何よりの幸いでした。その後、自由が丘校の生徒には、公共施設を間借りして授業を受けていただくことになりました。慣れない環境、限られた条件のなかでも、変わらず元気に通ってくれた子どもたちの姿には、私たちスタッフのほうが何度も勇気をもらいました。先の見えない状況のなかでも、あたたかく見守り、信じてついてきてくださった保護者のみなさまの存在にも、心から感謝しています。ご不便やご心配をおかけしたにもかかわらず、励ましの言葉をかけてくださったこと、その一つひとつが支えでした。多くの方のサポートにより、今月中には新校舎で授業を再開できる見通しが立っています。
 同業者であり、同じ自由が丘に教室を構えるスタジオキャンパスの矢野先生には、大変お世話になりました。被害から数日後、「うちの空き教室を遠慮なく使ってください」と、こちらからお願いする前に、具体的な曜日や時間まで調べたうえでご連絡をくださいました。矢野先生は、日頃から中学入試の問題分析や業界全体の課題に関する、勉強会を共に運営している仲間です。同時に、傍から見れば同じ地域で塾を展開する、いわゆる競合他社でもあります。それでも迷うことなく、無償で手を差し伸べてくださったその行動力には、ただただ頭が下がる思いでした。

 また、声の教育社の後藤社長からも、どこでお知りになったのか、お見舞いの言葉と過去問題集の無償提供のお申し出をいただきました。「お手伝いできることがあれば、何でも言ってください」という温かいメールは、困難な状況のなかで大きな励みとなりました。1月23日には、声教チャンネルとのコラボによる受験生応援企画(ライブ配信)が予定されています。先輩保護者の方もご出演予定ですので、お聴き逃しの方は、ぜひVoicyのアーカイブもご活用ください。
 こうした経験を通して、改めて強く感じたのは、いざというときに私たちを支えてくれるのは、日頃から少しずつ築いてきた信頼関係なのだということです。見返りを求めることなく差し伸べた手助けや親切、さりげない厚意は、すぐに形となって戻ってこないこともあります。しかしそれらは、思いがけない場面で、巡り巡って自分自身を助けてくれることがあります。そして、それすらも期待することなく、困っている人がいれば躊躇なく行動できる人でありたい。このような善意の連なりが、身近な人間関係の摩擦やトラブルを和らげ、さらには世の中で起きているさまざまな対立や争いを、少しずつ減らしていく力になるのではないかと思うのです。
 今回、多くの方々からいただいたサポートやご厚意を、「恩返し・恩送り」という形で、子どもたち、そして保護者のみなさまにしっかりとつなげていきたいと思います。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

スクールFC代表 松島伸浩