松島コラム 『涙の季節』

『涙の季節』 2018年4月

 最近は年齢のせいか、涙もろくなり、平昌オリンピックの高梨選手と伊藤選手の抱き合う姿や小平選手と韓国の選手が互いの健闘をたたえ合う姿など、何度見てもジーンと来てしまいました。
 同じ競技者として、ライバルであり親友だからこそ通じ合うものがあったのだと思います。計り知れないプレッシャーとの闘いでもあったでしょう。メダルの色よりも最後まで全力を尽くせたことへの喜び、そして安堵の涙だったのかもしれません。
 中学受験も大詰めのある日。スクールFCの本部では、何名かの職員が打ち合わせをしていました。お昼を過ぎたころ、私がトイレに入っていると、突然悲鳴とも怒号ともとれるような叫び声が事務所のほうから聞こえてきました。私は何事かと思い、急いで戻ってみると、そこには狂喜乱舞する職員たちの姿がありました。「何が起きたの?」「T君がK中に受かりました」。ネットで発表された合格者の中に彼の番号があったのです。「やッた!」「すごい!」「がんばったねー」。T君のことをまったく知らない職員もわが子のように喜んでいます。中でもT君を4年生のときから担当してきたN先生は、うれしさを通り越して放心状態。ほっとして完全に体の力が抜けていました。
 それから間もなくN先生の携帯に、合格発表の会場にいるT君から電話が入りました。
 これまでの約一か月間、予期せぬ不合格をともに乗り越えてきたT君とそのお母さん。それを全力でサポートしてきたN先生にとって、T君からの合格の報告に感極まるものがあったのでしょう。電話口で目を赤くして泣いていました。
 その後、今の喜びの気持ちをインタビューさせてほしいとお願いして、T君とお母さんに本部に来ていただきました。
 T君はインタビューの中で、なぞぺーが大好きだったこと、FCのカルタを通じて嫌いだった社会が好きになったこと、理科の実験が楽しみだったことなど、たくさんの思い出を語ってくれました。
その中で印象に残るやりとりを一部ご紹介いたします。

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質問者:「辛いときに先生やご両親からかけられて力になったような言葉はありますか」
T君:「受験が始まってなかなか結果が出なかったときに、N先生から『最後まであきらめないでやろう!』という言葉で力が出ました」
質問者:「それを思い続けて本当に実現したんだね」
T君:「はい。最後まであきらめない、手を抜かないということは本当に大切だと思いました」
質問者:「実感がこもっていて、とても説得力がありますね。ほかに辛かったことはありましたか」
T君:「受験する子が少なかった学校に通っていたので、遊んでいる友達をみて自分だけ遊べないのは辛かったです。でも今は受験してよかったと思います」
質問者:「受験してよかった、と思うのはどうしてですか?」
T君:「自分にもこうしたこと(辛いことを乗り越えて合格すること)ができるんだなという自信がつきました。これからもこういうこと(試練)があっても、あきらめずに最後まで続けようと思います」

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 T君は、志望校合格という大きな喜びのほかに、「あきらめないことの大切さ」と「やればできるんだという自信」を受験を通して手に入れました。彼の将来につながる意味のある経験だったに違いありません。
 インタビュー中に、花まる学習会に通っていた当時の教室長が、合格したことを聞き、本部に駆けつけてくれました。お母さんと手を握り合っての涙、涙の再会。「おめでとうございます。よかったですね。立派になりましたね」
 花まる学習会での楽しい世界から受験という厳しい世界に挑戦するうえで、花まるグループを信じ、スクールFCに預けてくださったことに感謝の言葉しかありません。そして最後に幸せな受験をして見事合格をつかんでくれたT君に、心から祝福の拍手を送りたいと思います。
 新年度が始まりました。スクールFC・西郡学習道場は、花まるグループの進学塾として、ご家庭に寄り添い、ともに子どもたちの成長を見守り続け、そして志望校合格に向けて最大限の努力をしてまいります。心配事はお気軽にご相談ください。

スクールFC代表 松島伸浩