松島コラム 『夢を追いかけて』

『夢を追いかけて』 2018年10月

 お盆の休みを利用して、高校野球をみてきました。何の計画もなく、「100回記念大会だから行ってみようか」くらいの思いつきで、新幹線に飛び乗りました。SNSで調べてみると、今年の高校野球の過熱ぶりは例年以上だとか。内野席の当日券は徹夜で並ばないと難しいということから、大阪に宿をとり、翌日始発で球場まで行き、外野席狙いで並ぶことにしました。早朝5時半、甲子園駅に到着すると、すでに数百メートルの長蛇の列。この日はお盆の日曜日、4試合とも好カードということで、電車が到着するたびにどんどん人が増えていきます。くねくねと折り返しながら人の列が作られていきます。「今から並ばれても球場に入れない可能性があります」という係員のアナウンスが聞こえます。第一試合の開始は8時、通常開門は7時なのですが、6時前に開門され、7時前に満員通知が出ました。
 この日は4試合中3試合に関東の学校が出場していたのですが、残りの1試合で歴史に残るようなドラマが生まれました。星稜高校対済美高校。8回表まで7︱1と星稜がリードしていましたが、その裏8点を返されて7︱9。星稜は一気にピンチに立たされますが、9回表に9︱9の同点に追いつきます。延長12回裏の済美の攻撃では、1アウト満塁で3︱0、2アウト満塁で3︱1、あとボール一つで押し出しサヨナラという場面で、星稜の投手は2者連続三振を奪う気迫のピッチング。球場は大歓声に見舞われました。これぞ甲子園!球児たちのひたむきで、最後まであきらめずに全力でプレイする姿。忘れ物を取り戻そうとやってきた大人たちの思惑をはるかに超えるような奇跡の連続。甲子園、高校野球の魅力を肌で感じる瞬間でした。さらに球場全体のボルテージが最高潮に達したのは、13回裏の済美の選手が史上初の逆転サヨナラ満塁ホームランを放ったときでした。なんという幕切れ、興奮冷めやらぬ球場。勝ち負けはつきましたが、素晴らしい試合でした。校歌斉唱のあとは、両校の選手への惜しみない拍手とともに、「ありがとう」というあたたかい雰囲気が甲子園全体を包んでいたように思います。こんな試合を観戦することができて本当に幸せでした。
 この夏、再び兵庫県を訪れる機会がありました。最初に勤めた塾で責任者をしていたころ、その教室の大黒柱として働いてくれていた学生が、長年勤めた会社を辞めて教員になったということを聞き、講師仲間の彼の友人とともに、会いに行ったのです。彼らには本当に感謝の気持ちしかありません。学生といっても、指導力、子どもからの信頼は抜群で、責任者である私がいなくても、教室を任せられるほどの実力のある講師でした。今回、教員になった彼は、当時から教員志望だったのですが、いろいろな事情もあり、一般企業に就職しました。しかし、塾講師としての勤務最終日の夜、「いつか教育の世界に戻ってきます!」という彼の言葉はずっと覚えていました。その夢を40歳を過ぎて実現したことに、なんだかうれしくなり、会いにでかけたのです。お子さんはまだ小さいうえに、収入もだいぶ下がることになったと思います。それでも奥様は、「彼には教育のほうが絶対向いている」と快く受け入れてくれたのだそうです。夢を応援してくれる人がそばにいることは、彼にとって大きな励みになったことでしょう。
 訪れたのは最初の赴任先となった瀬戸内海の離島でした。いい歳になったおじさん3人での海水浴。昔話に花を咲かせ、それぞれの今、そして未来の話を熱く語り合いました。何十年ぶりかの再会でも、すぐに気のおけない仲間に戻れました。宿に戻っても話は尽きません。そんな中、「そういえば、昔借りた本、返すよ」と彼が友人に手渡したのは、「二十四の瞳」でした。手を伸ばせば届きそうな距離に小豆島があります。この本が今日のこの日に私たちを導いてくれたと言ったら言い過ぎでしょうが、どこか不思議な縁を感じました。
 受験生にとっては、様々なことを決めなくてはいけない2学期です。皆様の夢の実現に向けて、精一杯応援してまいります。

スクールFC代表 松島伸浩