松島コラム 『2040年の社会』

『2040年の社会』 2021年1月

 文部科学省が発行する「科学技術白書」をご存じでしょうか。1971年から始まった「科学技術予測調査」をもとに、毎年発行されている科学技術の振興に関する年次報告書です。令和2年版の「科学技術白書」では、「2040年の社会はどうなるのか」というテーマで未来を予測しています。こうした未来予測というと、漫画や映画のような夢の世界をイメージするかもしれませんが、過去の予測調査では、壁掛けテレビ(77年予測)や携帯電話(82年予測)など、その7割ほどが的中しているそうです。
 未来予測については、古くは1901年の1月2日、3日の報知新聞に掲載された「二十世紀の予言」という記事があります。電気通信、運輸、軍事、医療、防災などの23項目について、20世紀に実現するであろう科学・技術の内容を予測したものです。のちの2005年(平成17年)度版の『科学技術白書』では、その23項目について予測が的中しているかを検証し、12項目が実現、5項目が一部実現、6項目が未実現と評価しています。たとえば、「世界一周は80日かかるところを7日でできるようになる」「暑寒を調和するために空気を送り出す器械ができる」「自動車の普及」「大学全入時代」などは見事に的中しています。また、「写真電話により遠距離にある品物を売買し、その品物は地中鉄管の裝置で瞬時に受け取る」は、ネットショッピングとしては実現しているものの、地中鉄管で瞬時に受け取ることはできていません。現在では即日配達が可能になっているので惜しいところですが、地中鉄管を使って瞬時に配送するというアイデアは非常に斬新で面白いです。一方で、「台風を予測して雨に変える、蚊や蚤の絶滅」など自然に関する予測は完全には的中できていません。21世紀になってさらに科学が進歩しても自然の脅威には太刀打ちできないという現実を、私たちは目の当たりにしています。
 ほかにもこの予言には、「獣語の研究によって、人と犬猫猿とが自由に会話できるようになる」という未実現項目がありました。しかし令和2年版「科学技術白書」では、「発話ができない人や動物が、言語表現を理解したり自分の意志を言語にして表現したりすることができるポータブル会話装置」が2031年には発明され、2034年には世の中で使われるようになると予測しています。とても興味深い内容ですが、動物の言葉は状況や場面によっては知りたくないときもありそうです。ほかにも、「教育にAI・ブロックチェーンが導入され、学校の枠を超えた学習スタイルが構築され、生涯スキルアップ社会の実現」(社会的実現2032年)、「レベル5の自動運転(場所の限定なくシステムがすべてを操作する)」(社会的実現2034年)、「人工肉など人工食材をベースに、食品をオーダメイドで製造(造形)する3Dフードプリント技術」(社会的実現2030年)、「都市部で人を運べる空飛ぶ車・ドローン」(社会的実現2033年)、「個人の心理状態や感覚・味覚などを記録し、共有できる体験伝達メディア」(社会的実現2033年)など、実現できそうなものから本当にできるのかなと思うものまで、イラストつきで紹介されています。文部科学省のホームページ(https://www.mext.go.jp)に掲載されていますので、その7割が実現するかもしれない2040年の未来を、子どもと一緒にのぞいてみてはいかがでしょうか。
 さて、1月7日に一都三県に緊急事態宣言が発出されました。メールでもお知らせしていますように、スクールFCでは各自治体による学校の一斉休校措置が講じられた場合には、対象となる都府県でオンライン授業に移行する予定です。ご家庭におかれましても、インターネットやパソコン・タブレットの準備など、引き続きオンライン学習の環境整備にご協力くださいますよう、よろしくお願いいたします。
 受験生はすでにコロナ対策下での入試が始まっています。保護者の皆さまには、慌てず落ち着いて、最後まであきらめずにサポートしていただければと思います。日ごろの力が存分に発揮され、これまでの努力が実を結ぶことを心より願っています。

スクールFC代表 松島伸浩