松島コラム 『間違いノート』

『間違いノート』 2023年4月

 スクールFCが大切にしている学習観の一つに「できなかったことをできるようにすることが勉強」があります。子どもたちにはこのことを意識して日々の勉強に取り組んでほしいと願っていますが、それは決して簡単なことではありません。たしかに解き直しによって同じ間違いは減りますが、ゼロにすることは難しいのです。しかし受験学年になれば、限られた時間のなかで効率のよい学習が求められます。一つひとつの問題のレベルも上がるため、「わかったつもり」で進んでしまう危うさも出てきます。FCの受験学年では、間違った問題を解き直すためのノートとして「復習ノート」の指導をしています。
 使用するのはA4サイズ30穴のバインダーノートです。見開きの右ページを使い、書ききれなくなったら裏面を使います。模試の問題、テキストの応用問題、過去問題などで解けなかった問題などを用意します。文章題は手書き、複雑な図形問題などはコピーしてノートに貼り付けます。
 次に「どういう視点・発想でスタートすればよかったのか。どういう手順で進めていけばよかったのか。どういう図や表をかけばよかったのか」など解説の一行一行を時間をかけて丁寧に確認していきます。そして、頭にたたきこむくらいの意識で解き方の流れを覚え、解説を見ないで一気に答えまで書き上げます。丸暗記が目的ではありませんから、解説とまったく同じ内容でなくてもかまいません。さらに「なぜ間違えたのか」という理由を残しておきます。「わからなかったから」ではなく、具体的な理由を考えてふり返ることに意味があるのです。最後に「この問題のポイントは何か」をコラム化しておきます。問題作成者側の視点やねらい、解くうえでの必要条件や方略などを書けるようになったら本物です。何度も復習して「完璧に理解できた。もう間違うことはない」という段階になったら、そのページだけバインダーから外します。
 「復習ノート」は自分にとっての最良の問題集です。一問一問の理解を深め、定期的にやり直していくことで、効率よく確実に力をつけることができます。入試までにバインダーの中身が空になっていることが目標です。
 先日の小学館「HugKum」の対談企画では、保護者の方から次のような質問がありました。
「4年生男子です。塾や学校の決められた宿題以外まったく学習しません。過去に間違った問題を切り貼りしたノートを私(母親)が作っているのですが、やりません。『なぜやらないのか?もう必要ないのか?』と聞いても、泣いて黙るだけです。とってもイライラしてしまいます。どうやってかかわればいいのでしょうか」
 この保護者の方の気持ちはよくわかりますし、勉強のやり方としては間違っていません。私からは、「もう少しふり返りの勉強ができるようになるまで待ってあげてください。ただし、ノートは作っておいても構いません。自分から復習できる時期が来たら、『こういうノートを作っていたので、もしよかったら使ってみて』と渡してあげると感謝されるかもしれません。4年生で間違っていた問題の多くは、6年生ではできるようになっていると思いますが、『いつかわが子の役に立つかもしれない』という希望をもって、心に折り合いをつけられれば、イライラすることも減るでしょう」とお答えしました。
 この対談後のアンケートに次のようなコメントがありました。
 「数多くのセミナーや講演会に参加しましたが、今回新たなご意見をお聞きできて、とても参考になりました。 4年生のときに子どもの苦手な算数の問題を繰り返しさせようと思い、問題をコピーしたりしていましたが、まったくしなかったため、途中で作るのをやめてしまいました。今回のお話のなかで『とっておいてのちにさせる』という考えは目から鱗でした。実は6年生になり、反復して勉強できるようになったいま、とっておけば良かったと思いましたが、いまからでも遅くないのでまた作ろうと思います。中学受験の悩みは本当にいろいろあり、奥が深いと感じたセミナーでした」
 子どもにとって必要なサポートは成長に合わせて変わっていくものです。いまそれをすべきかどうか、迷ったときはご相談ください。

スクールFC代表 松島伸浩