松島コラム 『日本の大学はどう変わるのか』

『日本の大学はどう変わるのか』 2023年11月

 10月18日に行われました対談企画「大学進学を価値あるものにするための親の心得」(花まる子育てカレッジ主催)にファシリテーターとして参加しました。留学・海外大学進学に詳しい千代田国際の日野田直彦校長と、大学・高校改革のコンサルタントとして活躍中の植草茂樹氏とのセッションでしたが、昨今の大学事情についてとても学びになる内容でしたので、私なりの見解を加えながら振り返りたいと思います。
 今年の大学関係の大きなニュースとして、東京工業大学と東京医科歯科大学が統合し、東京科学大学が設立されるという発表がありました。知名度の高い大学同士の統合ですので、ご存知の方も多いと思いますが、大学の統合・再編は2000年以降急増しています。筑波大学と図書館情報大学、東京商船大学と東京水産大学(現在の東京海洋大学)、慶應義塾大学と共立薬科大学、ほかにも首都大学東京(現在の東京都立大学)、東京都市大学など、大小含めると約30の大学が統合や再編を行っています。2026年には学習院大学と学習院女子大学が統合します。また未定ではありますが、慶應義塾大学と東京歯科大学の話もあります。こうしたことは、少子化の時代に生き残りをかけた競争の激しさを物語っていますが、今回の東京科学大学については、統合することによって「国際卓越研究大学」に認定されることを目指したとも言われています。 
 「国際卓越研究大学」とは、国際的に優れた研究の展開や経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が見込まれる大学に、政府が10兆円規模の大学ファンドを用意して支援する制度です。「日本は教育にお金をかけない国」と言われ、低迷し続けてきた日本の大学の国際競争力を、ここで一気に上げたいという政策です。私立では早稲田大学と東京理科大学、国立では東京大学をはじめ8大学、合わせて10大学が認定候補になっています。
 また文科省は、理工系の日本の学生の比率がOECDの平均よりも低いことから、基金による学部再編等を支援する方針を打ち出しています。デジタル化や脱炭素といった世界的な課題への取り組みが求められるなか、今後成長が期待されるデジタル・グリーン分野としての理学・工学・農学などへの学部転換・設置を進めていくのが狙いです。
 ちなみにここ数年の大学のトレンドは「文理融合」です。今年約70年ぶりに「ソーシャル・データサイエンス学部」を新設した一橋大学や「社会インフォマティクス学環」という一見どんなことを学ぶのか想像しにくい学部を新設した和歌山大学などは、その典型的な例です。また来年にはお茶の水女子大学に「共創工学部」が新設されます。東京工業大学では「総合型・学校推薦型選抜」で143人の女子枠を導入します。「理系女子」という言葉が死語になる日は近いのかもしれません。
 大学入試についても少し触れておきます。大学入学共通テスト(以下共通テスト)と大学の独自試験の合計点で合否判定をする、いわゆる「併用型」を導入する大学が増えています。基礎学力は共通テストで測り、それ以外の力は記述式などの独自試験で見極めたいというわけです。国立大学の一般入試でも、今年の6月に筑波大学の学長が「5年後をめどに入試改革を行い、個別試験を面接や小論文中心に変更する」という方針を表明しました。「基本的な学力は共通テストでわかるので、さらに筆記試験をやっても仕方ない。個別試験を変えて、これまで見つけられていなかった才能を見つけたい」というのが変更の狙いだそうです。実は総合型・学校推薦型選抜においても共通テストを義務づける大学はありますから、これからの受験生は、最終的にどの形で受験をするにしても、共通テストに向けた準備はしっかりとしておく必要がありそうです。
 当日の対談では「大学の強みを知るためには大学の博物館などに足を運ぶのがいい」とのアドバイスがありました。北海道大学、京都大学、東京農業大学、國學院大學など機会がありましたら、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

スクールFC代表 松島伸浩