『変わる中学英語と高校入試』 2025年4月
公立中学校では今年度から新しい教科書が採択されました。これは学習指導要領の改訂によるものではなく、小改訂にあたります。新しい教科書ではデジタル化が進み、二次元コードによるコンテンツが3.7倍に増加しています。タブレットの導入とともに、紙の教科書とデジタルの融合が進んでいると言えるでしょう。
学習内容で保護者の皆さんの時代と大きく変わったのは英語です。例えば、1993年当時、中学校3年間で学ぶ単語数は約1000語でしたが、現行では2200~2500語(小学校課程の単語も含む)に増加しています。
また、2012年施行の学習指導要領から明記された英語4技能(「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」)は、現行では「話すこと」がさらに「やり取り」と「発表」に分かれ、4技能5領域となっています。文法事項についても、原形不定詞、現在完了進行形、仮定法、後置修飾など、以前は高校課程で学んでいた内容が中学校で扱われるようになっています。
当然ながら、高校入試の英語も大きく変わっています。
1992年のある都道府県の公立高校入試では、第1問・第2問が発音・アクセントの問題でした。保護者の皆さんには懐かしく感じられるかもしれません。
<発音問題> 下線部の発音が同じものを2組選びなさい。
1. water / paper 2. dogs / caps 3. …
<アクセント問題> 二語とも「2」を強く発音するものを2組選びなさい。
1. af-ter-noon / Jap-a-nese 2. a-cross / gui-tar 3. …
1 2 3 1 2 3 1 2 1 2
しかし、2024年の同じ都道府県の公立高校入試では、発音・アクセントの問題はなくなり、代わりにリスニングテストが7題出題されました。全国的にも発音・アクセントの問題は減少しており、大学入試共通テストでも発音・アクセント、加えて文法・語法の単独問題は出題されなくなっています。
同じテーマの問題も比較してみましょう。
<適語補充>
1992年:Is breakfast (r )? (朝食の用意はできていますか)
2024年:Someone moved into the house next to mine. The new ( ) came to my house this morning to say hello.
1. course 2. degree 3. neighbor 4. theater
<適語選択>
1992年:Akiko went to Nagoya ( 1. visit 2. visits 3. visited 4. to visit ) her aunt.
2024年:A: Can you put that table by the door?
B: The table looks heavy, so ( ) it without your help will be difficult.
1. move 2. moving 3. has moved 4. is moved
<整序英作文>
1992年:Hitomi ( 1. faster 2. swim 3. than 4. Keiko 5. can ).
2024年:That is my favorite fruit, Jessica. ( 1. do 2. you 3. what 4. it 5. call ) in English?
どの問題も明らかに難しくなっていることがわかります。
また、1992年の長文問題は、アメリカから来た友人を大相撲観戦に連れていった際の会話を読み、設問に答える形式でした。 しかし、2024年では「日本の若者の政治的問題に対する関心の低さと投票率の低さ」に関する4人の議論を読み、与えられた複数のグラフと内容が一致するものを答えるという形式になっています。同年の北海道の長文問題のテーマは「ナッジ理論」、岩手県では「セレンディピティ」、神奈川県では「グリーンインフラへの転換」など、日常生活や社会問題、SDGsといったテーマが主流になっています。 入試における総単語数も、1992年が787語だったのに対し、2024年では3639語と約4.6倍に増加しています。これだけを見ても、昔とはまったく異なる入試になっていることがわかります。
最近の中学校の定期テストは全体的に難化していると言われています。小学校での英語教科化から5年が経ち、特に中学1年生の英語のテストが難しくなっています。 昔はアルファベットの勉強から始めていたため、中1の最初のテストはとても簡単だったというイメージがあります。しかし最近では平均点が50点台というケースもあるようです。入学したばかりのテストでつまずかないように、スクールFCでもしっかりとフォローしてまいります。
スクールFC代表 松島伸浩