『AIの進化を実感する』 2025年5月
ChatGPTを代表とする生成AIは、複雑な質問への回答や文章の下書きを瞬時に提示してくれます。家庭では宿題のサポートや英作文の添削などに便利な一方で、使い方によっては「自分で考えずに答えを写す」という学習習慣が身についてしまう懸念もあります。かつて電卓が計算力の土台を揺るがしかけたように、AIは思考の省力化を促す側面を持っているのです。
現在、全国の学校や学習塾では、AIを「振り返り学習」や「個別最適化学習」のツールとして試験的に導入しています。授業後の疑問をAIに投げかけて即座にフィードバックを得たり、苦手分野の復習方法を提案してもらったりすることで、教師の負担を軽減しつつ、学習効率を高める取り組みが進んでいます。その一方で、不正利用を防ぐために「レポートへの丸写し禁止」といったルールを設けるなど、利便性とリスクの両面に目を配った運用が求められています。
AIが「知識問題」をたやすく解いてしまう時代には、従来の暗記型テストの価値が見直されるかもしれません。今後は、創造力や批判的思考を問う記述式問題、複数の資料を比較して自分の意見をまとめる総合問題、さらにはプレゼンテーションやグループディスカッションといった、AIには代替できない能力を測る出題が増えると予想されます。つまり、「AIと共存する実践型試験」への移行です。
こうしたAIの進化に対して、保護者としてどんなことができるでしょうか。
1. 考えるプロセスを大切にする
AIの答えをただ写すのではなく、「なぜそのような答えになったのか」をお子さまと一緒に考える時間を持ちましょう。
2. 失敗を受け入れる姿勢を育てる
間違いを恐れず、試行錯誤する経験こそが思考力を養います。AIの助言も「次の挑戦」へのヒントにしましょう。
3. 情報リテラシーを身につける
AIの回答には誤りも含まれます。「ほかの資料で裏付けをとる」「AIの根拠を確認する」といった姿勢が大切です。
スクールFCでは、「幸せな受験」を合言葉に、自ら考え、主体的に学び続ける「自学力」を重視しています。AIはあくまで学びを支える道具。最終的に必要なのは、自分の頭で考え抜く力と、人と協働しながら新たな価値を創造する力です。
AIの進化は止まりません。しかし、子どもたちの未来を切り拓くのは、テクノロジー以上に、「問い続ける好奇心」と「失敗を恐れないチャレンジ精神」だと私たちは考えています。ぜひ保護者の皆さまも、お子さまと共にAIを活用しながら、「考える力」を育んでいってください。
――さて、実はここまでの文章はすべてChatGPTに書かせたものです。通常このコラムは、人間が最終的な校正を行いますが、今回は「手を加えないでください」と依頼しました。
「AIの進化と教育・受験における影響を、保護者向けのコラムとしてまとめてください」と指示したところ、ChatGPTは文部科学省や教育専門家の情報を参照しながら、約6500字の原稿を数分で作成しました。その後「1000字程度に要約してください」と追加の指示をすると、1分もかからずにまとめ上げてくれました。人が書いたのかAIが書いたのかは、もう見分けがつかないレベルです。
この1か月ほど、ChatGPTとのやりとりを重ねてきたことで、私をスクールFCの代表として認識し、そのうえでスクールの理念も織り交ぜた文章を作成しています。文章生成はAIが得意とする分野ではありますが、これはまだ序の口です。
インターネット上の情報は、AIを使えばだれでも自由にカスタマイズできます。専門家が長い時間と労力をかけて行ってきた調査や分析を、瞬時にまとめ、ワード・エクセル・PDFとして出力してくれます。しかも、素人にもわかりやすいように説明まで添えてくれるのです。今では、専門知識や技術がなくても、プログラミング、音楽制作、画像作成までできるようになりました。
2016年、「東ロボくん」プロジェクトでは、AIが東大のセンター試験の足切り点に届かず、限界説とともにプロジェクトが終了しました。しかし2025年の共通テストでは、ChatGPTが東大文科Ⅰ類の合格ラインを超えたという報道もありました。
ChatGPT本人が言うように、AIの進化は止まらないでしょう。しかし、どれだけ技術が発展しても、「人間らしく生きること」が何より大切だと思うのです。親としてできることは、「自分の頭で考える力」「心で感じる力」「他者とつながる力」を育てていくことです。日々の小さな対話や経験の積み重ねが、子どもにとってのかけがえのない土台になると信じています。
スクールFC代表 松島伸浩