西郡コラム 『西郡学習道場「受験科」のご案内』

『西郡学習道場「受験科」のご案内』 2025年10月

 持って生まれた能力をどう伸ばして学ぶ力を高めるか。中学受験や高校受験を目標として、そして通過点として、生涯、学び続ける学習のしかた、よりよい学習観、心構えを自分事として学習に向きあう、鍛錬の場が学習道場です。
 学習道場をはじめて2年目のこと。5年生になる女子生徒の保護者から進路について相談がありました。言葉数の少ない大人しい子で、自分に自信がなく、いつも不安な表情をしていました。言語も拙く、コミュニケーションがうまく取れないことや動作の緩慢さから、発達の遅さが見て取れます。何事にも慎重で理解するまでに時間がかかっていましたが、まじめにコツコツと課題に取り組む、誠実な姿勢を見せていました。この子がこのまま地元の公立中学に進学するのには不安がある。かといって中学受験の過酷さに耐えられるだろうか、こういった保護者からの進学相談でした。
 「伸びない子はいない」は学習道場の信念です。他者と比較せず、よりよい学習のしかたで自分事として学習を続ければ、時間はかかってもだれでも学力は伸びます。中学受験では短期的な学習の成果が問われます。早熟な子が有利です。彼女のような子は中学受験には向かない。しかし、中学受験を回避するにしても公立中学には進学します。中学受験を目指して学習することは、もし仮に合格が取れなくても、学校生活を楽しむだけの学ぶ力は身につきます。
 中学受験をするメリットは、目標が持てることです。将来、自分がなりたい人になる、確固たる目標をもって学ぶ小学生は、そういません。もう一つのメリットは経験です。中学受験の学習を進めれば進めるほど、覚えられない、わからない、できないと自分の力のなさを突きつけられます。模試の結果が出ない。過去問をやっても、ちっとも合格基準に達しない。自信をなくします。人生で初めて経験するかもしれない不合格に、不安の重圧ものしかかります。しかし、これも中学受験を目指すからです。中学受験をしなくても、こういった経験はいずれ訪れます。受験に向かない小学生でも、親や私たちのサポートがあれば受験の経験によって成長します。
 これまで、学習道場では多くの子どもたちが中学受験に挑んできました。冒頭でお話しした、彼女のように中学受験に向かない子もいます。学校への行き渋りや不登校の子もいます。その子たちも中学受験を経て成長し、私立中学に入り、学校に楽しく通っています。他塾で伸び悩み、オンラインでの学習道場の学習にフィットした子は難関校に合格しました。道場の受験科は小学5年生からスタートします。中学受験をする多くの道場生は、小学3年生まで花まる学習会に通い、小学4年生から道場に入って、学習の基本、学習のしかた、学習に対する考え方、心構えを学び、小学5年生から本格的な受験勉強に取り組みます。小学5年生からでも決して遅くありません。発達の成熟をともなって学力が伸びるほうが自然です。
 中学受験の弊害は、学習量の多さによる消化不良、不必要な比較、偏差値による序列での能力の決めつけ、受験情報の保護者への煽り等々です。本来の学習を見失うことになります。学習道場は有名中学、難関中学に何人合格したかをうたう塾ではありません。学習を自分事として取り組み、持って生まれた能力を伸ばして学力を高め、自分の行きたい学校の合格を目標にして努力する。模試を受けると偏差値がでますが、学習の到達度や仕方を振り返るためであり、学校の選択の材料としてです。私たちは、一人ひとりの子どもの確実な成長を自負する塾です。他者と比べないことが学習道場の受験です。
 学習道場では、その子の持つ能力を最大限に伸ばす受験学習を行います。私立中学にはいろいろありますが、学力を重視する中学には向かないと判断されることもあります。学習道場に通う子たちには酷であると考え、もともとは中学受験を目的とするコースはありませんでした。しかし、学習道場の考え方に賛同された保護者の方が、小学4年生のときに道場に預けられ、その後、スクールFCに移動して中学受験をするケースも増えてきました。また、中学受験をするかどうか、その資質が子どもにあるかどうか、その見極めの一年として学習道場に通う生徒もいました。そして、先ほどの相談でした。
 首都圏に受験があり、そこで苦しむ生徒がいるなら、学習道場で受験科をつくる必要があると考えるようになりました。学習道場での日々の実践から、子どもが伸びる秘訣は、その子が学習を自分の学習だと引け受けることができるか、直面することができるかどうか、ここに尽きると確信しています。それを体得した子ども、自分で何とかしようとする子は伸びます。受験学習も同じはずです。まじめにコツコツ学習する子が安心して受験できる環境をつくる。能力の高い低いは問わない。偏差値ありきではなく、できない・わからないことをできるようにする、わかるようにする。できた、わかった自己肯定感を積み上げ、学習意欲を高め、向上心を育て、志望校受験に挑戦する。これが学習道場受験科です。

西郡学習道場代表 西郡文啓