Rinコラム 『どこまで手を出していい?』

『どこまで手を出していい?』2021年5月

 今回は、Atelier for KIDsに初めて参加した3年生のお母さまからいただいたお便りにお答えします。
 「図工がそもそも苦手で、『上手にできない』『失敗してしまう』と言っています。少しでも苦手意識を変えてほしくて。質問は、『大人のための6つの約束※』①で『手を出さない』とありますが、『のりじゃなくてセロテープがいいんじゃない?』などの口出しはしてもいいんでしょうか?また、私自身がいいアイディアを思いついたとき、それを子どもに伝えるのはOKですか?」

 教室で私たちが子どもたちを見守るとき、大切にしているのは、その子の「心の状態」です。ぱっと見、手が動いていないように見えていても、じっと考えていることもありますし、懸命に試行錯誤していて、手助けを自ら求めていないときには、「こっちの方が早くできるんじゃない」というような大人の勝手な価値観で、簡単に答えを導くようなことは極力しないように気をつけています。
 なぜなら、その試行錯誤の中にこそ、諦めずに考え続けた結果に、自ら発見した”次の手“にたどり着くプロセスが隠れているかもしれませんし、単純に”諦めずに粘りぬく経験をさせてあげられている“ということもあります。「困った、一緒に考えて欲しい」という視線を感じたときに初めて、私たちの意見を伝えます。

 その子その子の「心の状態を大切にする」というのは、その子の性格や特質や、置かれている状況のことを踏まえる、という意味でもあります。「人に意見を言われることが大嫌い」な子と、「初めての体験で、不安で不安でたまらなく、安心感をまず求めている」子では、かける言葉も、タイミングも違ってきます。

 ですから、「ノリじゃなくてセロテープが〜?」という言葉は、その子の心の状態によって、言ってあげたほうがいいとき(そのことで自信を得て、よりのびのびと挑戦できるとき)と、言う必要がないとき(つまりそれは、大人側の勝手な価値観で、言うと逆に学びや自由を奪うとき)があることが、見えてきますよね。

 保育園や小学校の授業時に、時々みんながお互いを意識しすぎて、「じゆう」になりきれていないな、誰かがいい意味で突飛なアイディアを思いついたり、壁を超えていく”集団の力学“が、働いていなかったり、というときに、「あ、先生いいことを思いついた!」と呟くことがあります。

 これは、押し付けでも、提案でさえもなく、一表現者としてその場に存在する「先生の思いつき!」なので、そこからさらに子どもたちがどう受けとっていくのか、ということを、「まるで水面に投げた滴の波紋が、どうなっていくのか任せていく」ような気持ちです。ですから、言ったことをその子が、どう受けとってもいいのだ、という心持で伝えるのはOK、ということになりますね。
 子どもに何かを伝えようとするとき、その子の心の状態を見極める、そして、自分の勝手な価値観を押し付けていないだろうか、ということを俯瞰できると、答えが見えてくることがあるかも知れませんね。
 
井岡 由実(Rin)