Rinコラム 『まちがえることと学ぶこと』

『まちがえることと学ぶこと』2022年2月

 まちがいに気づくこと抜きには、学びは始まりません。まちがえることと学ぶことは、深くつながったひとつのプロセス。だからこそ、子どもたちが何かをまちがったり、失敗したりしたら、「どうしたらできるようになるだろう?」と、未来に向かっていっしょに考えられれば、可能性は無限に開きます。
 反対に、「なんでまちがっちゃったの?」と過去に向かって問い詰めてしまうと、「まちがえることはいけないことだ」「まちがえることは自分の価値を損ねることだ」という印象を持ってしまいます。次第に子どもたちは、自分をありのままに表現しなくなります。不安感からまちがえることを隠してしまう子は、未来に向かっていけなくなるのです。

 小学校でも先生方に「どうしたら子どもたちが自分の意見を言えるようになるだろうか」と相談されることがあります。多様な意見があって良いのだ、そのどれもが受け止めて聞いてもらえるものだ、という環境を作ってあげられれば、子どもたちは自分を解放して自分なりのものの見方を伝えてくれるようになります。
 大切なのは、もし失敗したり、まちがったりしても、いつでもそこから「学ぶことができる」ということ。社会がどのように変化していっても、自分への信頼を失わずに生きていけるかどうか。
 「たくさんまちがったから、頭がよくなるんだね」と私たちが教室で子どもたちに言うとき、それは「そこから学びがたくさんあるし、そこからどうするか、そのプロセスが、人生では大事だよ」という哲学を伝えています。
 創作表現をするときに「失敗はないんだよ、そもそも正解のないものを作り出そうとしているのだから、正解は自分で決めていい。もしも何か違う、と思ったら、そこから発想の転換をして、新しいものに作りかえればいいんだからね」と言うのは、「自分の人生を作っていくのは、自分なんだ」ということを伝えているのです。

 ひとりの子どもを育てようと思ったら、新しいことの連続です。子どもを前にすると、何をどうしたらいいか、ちっとも正解がありません。その瞬間、どんな判断をして、どんな行動をとるか、予期しないことがどんどん起こります。
 私たち大人こそが、「失敗もまちがいもおおいにけっこう。うまくいかなくてもくじける必要なんてないよ。そこからどうするか考えられたら、よりよい未来を自分で創れるのだから」そのような態度を見せ続けてあげることが、必要なのかもしれません。

 幼児期の子どもたちは、過去を振り返って反省するのは苦手ですが、未来を見ることは大好きです。そして経験は、その経験をした人だけのものなのです。
 子どもたちが、たくさんまちがいをして、そこから学んでいけますように。生きていくときに大切なのは正しさではなく、その人らしさなのですから。
 
井岡 由実(Rin)