Rinコラム 『親子のコミュニケーション術』

『親子のコミュニケーション術』2023年5月

【Question】
 息子は「ルール」にこだわるところがあり、学校の工作などでも先生の説明通り、ルールの枠から出ない、ということに慣れすぎている気がして「自由にしていい」ということを体験させたいと思っていました。ほかの子の作品を見て、いろいろ工夫しているなぁと思いました。息子の作品は随分シンプルで小さくまとまったな、と感じましたが、担当の先生に、すごく集中していたことや、なかなか思い通りの形にならず、何度も切っていたと聞き、息子は他人の目を気にせず自分のやりたいことに集中できたんだな、と納得しました。
 本当は、作品についてもっと説明してもらったり、先生にどんなふうに声を掛けられたかなど詳しく聞きたかったりしたのですが、本人は説明が得意ではないので、いまいち様子がわかりませんでした。でも楽しかった気持ちを壊してしまわないように、追求は諦めました。本人が楽しめたのかどうか聞くのに、ほかに本音を聞き出すいい方法があれば、教えてください。

【Answer】
 わかります。外の世界から帰ってきた子どもたちが、どう感じて、どんなことをしたのか、親は根掘り葉掘り聞きたくなるものですよね。でも実は、子どもたちにとって“質問”って答えにくかったりするものです。そんなときにとっておきの方法があります。それは、「わたし」を主語にして、「まずはあなたが感じたことを言葉にして伝える」ということです。
 たとえばこの子の場合だと、「いい顔していたから楽しかったんだなと(お母さんは)思ったよ」でもいいですし、「緑色の折り紙を選んだんだ(とお母さんは気づいたよ)!」など、ただ見たことを言葉にするだけでもいいのです。
 子どもたちは、自分のこと(この場合は作品)に興味を持って感想を言ってくれた人に、もっと自分の言葉で伝えたいと思うはずです。
 そして大事なのは、一回で言えるようになる、とは思わないこと。
 普段から、たくさんその子のいいなと思ったところについて、お母さんは、こう感じているよ、すごいと思ったよ、ここがいいなと思ったよ、というような言葉のシャワーをもらっている子は、自分の存在自体が愛されていると自信を持っているので、自然と堂々と表現していくものです。
 意見や思い、表現された作品がそれぞれ違うのは当たり前。そのどれもが等しく尊重されるという体験をたくさんしていくと、どの子ももともと持っている自分らしい感性を、どんな場であっても自信を持って伝えていけるようになります。

 ちなみに、説明が得意ではない子って、どんな場合があるでしょうか。
❶大人が望む答えを言わないといけないと思っている…安心して自分を表現していい場所だと意見を言える場合が多い
❷普段大人が先回りして、想像して答えてあげすぎている…きちんと説明をする体験総量が足りていないだけ
❸引っ込み思案で人前ではしゃべらない…内面が豊かに育っていれば、いつか自分で勝手に決めて壁を越えていくから大丈夫

 日本語は主語を省略しがちな言語なのですが、「わたしはどう感じたのか」を普段の会話のなかでぜひ意識してみてくださいね。ゆくゆくは社会でも必要になるコミュニケーションスキルの土台を整えていけるはずです。

 今回は“大人のための6つの約束”の「6.あなた自身も自分はどうしたいのかに向き合い続けてください」に通じるお話をしました。詳しく読みたい方は『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』(実務教育出版)も手にとってみてくださいね。
 
井岡 由実(Rin)