花まる教室長コラム 『飛行機に想いをのせて』

『飛行機に想いをのせて』2020年1月

 夏と言えば、サマースクール。
 今年も様々なドラマが生まれる熱い夏となりました。
 サマースクールは、遊ぶときもご飯を食べるときも寝るときもみんなと一緒。まさに家族のように過ぎていく時間。そのなかで、子ども同士、リーダーとも絆が深まっていきます。行く前は「お母さんと離れたくない」と泣いていた子が、帰りには「お友だちとお別れするのがいや」と泣いていました。そのくらい子どもたちにとってサマースクールの数日間は大きなものになります。

 紙飛行機とじゆう遊びの国、三泊四日のコースでの話です。男の子の班でした。初めから優勝を目指し、準備もテキパキ、その日初めて会ったメンバーとは思えないほどチームワーク抜群でした。何よりも、班全員が全力で楽しんでいて、少しでも遊びの時間を得ようと常に一番乗りで集合するなど、気合い十分。宿長(宿の責任者)にも「遊び上手!」と褒められ、満足気でした。

 順調にきていたところ、三日目にある出来事が起きました。チームの一人Aくんが体調を崩してしまい、午後から活動に参加できなくなってしまったのです。
 夜になり、その子が休んでいた部屋に一機の紙飛行機が投げ込まれました。
「はやくげんきになってね。」
「Aくんだいじょうぶ?早くたいちょうがよくなるといいね。」
「だいじょうぶ。元気になって、紙ひこうきとばそうよ。」
「Aくん、びょうきはだいじょうぶ?」
「はやく元気になってかみひこうきをとばそうね。」
「ねつ早く下がるといいね。」
「明日には元気になっててね。」
「Aくん、だいじょうぶ。早くなおしてね。まってるよ。」
 そこには班のみんなからのメッセージが書き込まれていたのです。8人分のメッセージを見て、子どもたちの想いに、こんなにもまっすぐに相手を想える心に、胸がいっぱいになりました。
 メッセージを受け取ったAくんは嬉しそうに、でも少し寂しそうな表情で「早くみんなのところに行きたいな。頑張って治さないと。」そう言いながら、眠りにつきました。
 翌日みんなの願いが届き、体調が回復したAくん。「Aくん、もう元気になったの?」「飛行機届いた?」「みんなで作ったんだよ。」嬉しそうに前のめりにAくんと話す、班のみんなの姿は本当に愛おしいな、と思わせてくれるものでした。

 Aくんが体調を崩してしまった三日目の午後の自由時間、子どもたちは私に、宿のある方向はどっちかと聞いてきました。
「あっちにAくんがいるんだね!」
「Aくんに届くかな。」
 そう言いながら、遠くから宿の方向に向かってずっと紙飛行機を飛ばしていました。
 夕食後の自由時間、紙飛行機を外に飛ばしに行くこともできたのですが、この班の子どもたちは自分たちで部屋に残ることを決め、先ほどのAくんへのメッセージ付きの紙飛行機をつくることにしたのです。子どもたちが自分たちで発案し、夢中でつくった紙飛行機。ぜんぶ誰かに言われたのではなく、自分たちで考え、決めたことでした。

 〝誰かを想って何かをする〟
 それは、子どもたちにとって、そばにいた人がいなくなった状況で生まれた行動でした。誰かを想って何かをするときのパワーは、大きいものです。
 日々の生活の中でも誰かを想う場面があります。先日の花まるの授業でも、悔しくて泣いてしまった子の側にすっと行き、背中をさすって「大丈夫だよ。できるよ!」と声をかけているKちゃんがいました。
 ある状況に置かれたとき、どう行動するか。誰かのために自分たちだけで起こした行動は、相手に想いを馳せることであり、自分の想いを伝えることに繋がります。
 最終日、また一歩成長した彼らの逞しい背中を見送りながら、お別れをしました。大人が思っている以上に子どもたちは自立の芽をすくすくと伸ばしています。いつか、また会ったときの彼らの成長が楽しみであるとともに、教室の子どもたちにも誰かを想う心を日々持ちながら過ごしてほしいと思います。そこに思いやりと優しさの芽が生まれていく。その芽の成長を一緒に見守っていきます。

小林 彩加