花まる教室長コラム 『将来の夢はなんですか?』村田寛典

『将来の夢はなんですか?』2021年9月

 「先生!先生の将来の夢はなあに?」
突然Aちゃんに質問されました。
「先生になる夢は花まるの先生になって叶ったなぁ。いまの先生が、Aちゃんの言う『将来』かなあ」
と答えると、
「もう!そんなんじゃダメ!大人になっても夢は持ち続けなきゃ!毎日を一生懸命生きなきゃダメなんだよ!」
と怒られてしまいました。
 何気ない会話でしたが、確かにその通りだなぁと感じます。夢に向かって努力をすることで、それが叶うか叶わないかに関わらず、人は成長することができます。逆に、夢が叶った!と現状に満足してしまうと、そこで停滞してしまいます。
 大人の自分からしたら今が子どもたちの言う『将来』だと思っていたのですが、そうではなく、大人にも子どもにも『将来』はある。時折、真理をつく子どもたちの発言にハッとさせられます。

 年長クラスの特別授業で硬筆大会があります。本番一発勝負で、自分の夢を鉛筆で書く日です。お手本を作成するために、事前に将来の夢のアンケートをとるのですが、子どもたちの意外な一面が見られる楽しい瞬間でもあります。
「おれは警察官になって悪者をたくさん捕まえるんだ!」
と見えない敵にキックをしているBくんはおうちで筋トレをしているそうです。
「かわいいケーキを作れるようになりたい!」
と言っていたCちゃん、バレンタインは手作りのチョコレートをパパにプレゼントしたと教えてくれました。
 最近人気の夢はユーチューバー。ユーチューバーとひとくくりにするのではなく、「ゲーム配信」「大食い」「ファッション紹介」と、しっかりと自分がやりたいことを絞っているのがかわいらしいです。
 どの子も自分の夢を語るとき、目を輝かせてお話をしています。夢を熱く語り、夢に向かって努力し続ける大人になってほしいな、と思いますが、年齢を重ねるにつれて少しずつ反応が変わっていきます。
「料理人になりたいけど、無理かもなー」
と話すのは5年生のDくん。
「ごはんを作るのは楽しいんだけど、お店をもつには料理を作るだけじゃダメなんだって…。おれ、算数苦手なんだよなぁ…」
お店を自分で経営するためにはどんなことが必要なのかを調べてみたそうです。料理を作るだけではだめなのだと知り、ちょっぴり自信を喪失していたのでした。

 いろいろなことを知ることで、夢と自分との距離を知ることになります。そこで頑張ろう!と思える子もいれば、自分を傷つけないために自分を偽ってしまう子もいます。
 Dくんは大好きなことをやるためには苦手なことにも向き合わなければいけない、ということを知ったのでした。
 そんなDくんですが、数週間後には、
「苦手だったら、克服すれば問題ないな!」
と前向きな発言をしていました。
「夢に向かって頑張れるってカッコいいね!」
と言うと、
「彼女に、やらないであきらめるのってあり得ない!って言われてさ。できる男だってところを見せなくっちゃ!」
と教えてくれました。愛の力、恐るべしです。

 無限の可能性を持っている子どもたち。自分の夢を、自信を持って語れるよう、子どもたちの自信の芽をまっすぐ育てていきたいですね。

花まる学習会 村田寛典