『宇宙イチおもしろい算数の授業 ~素数編~』2026年1月
「歴史の本だったらいくらでも読めるのに、算数はどうしても気が進まないです……」当時5年生で中学受験コースにいた男子から、こんな相談を受けました。
彼とのやり取りは続きます。
―― 勉強する教科として見ると、社会・歴史はどういうイメージ?
「う~ん……。問題で出てくる前に知っているものも多いし、語呂合わせで覚えられると楽しい、かなあ」
教科に対する向き不向きではなく、原因は心の距離感のようです。直近の算数で学んだ単元は、倍数・約数でした。
3けたの整数で、2でも3でも割れないものは何個ありますか
こんな問題が出てきます。その一節で、1とその数でしか割りきることのできない整数を「素数」という。こんな言葉の定義がでてきます。
たとえば10は2×5なので素数ではありません。2や5や19のように、ほかの数では割れない/ほかの整数のかけ算で表すことができない数が素数だということです。
授業で教えた際は、「じゃあこの数は素数かな?」と調べにかかる子もいれば、「知ってるよ!」「結構覚えてるよ!」とお披露目会が始まるグループもありました。
彼はというと、どうしてそこまで「素数」に熱くなれるのか、理解できなかったようです。
そんな背景もあっての冒頭の相談でした。 彼が得意とする語呂合わせを算数にも導入しようと思い立ち、いまから素数を覚えてしまおう! という作戦を立てました。
算数指導の世界でなにかと有名なフレーズ
2 、3、 5、 7、 11、 13、 17、 19
(兄 さん ゴー セブンイレブン 父さん いいなと ついて行く)
といったものがあり、これで20までの素数を覚えられるんだ、と話すと
「先生、こういうのが欲しかったんです! おれ100まで作るから手伝ってください!」
予想以上の食いつきでした。
そんな流れで彼と完成させた歌を紹介します。
『100までの素数を覚える歌』
2 、3、 5、 7、 11、 13、 17、 19
(兄 さん ゴー セブンイレブン 父さん いいなと ついて行く)
23、 29、 31、 37、 41、 43
(兄さん 肉 サイコロステーキ みんな 用意だ 予算くれ)
47、 53、 59、 61、 71、 73
(夜な夜な ゴミを ごっくんと 無意 むなしく 無い 涙)
79、 83、 89、 97
(無くなった ハミガキ ワクワクさん 来るな!)
男3人でコンビニに行って、肉を買おうとしたら予算がなく、夜になってゴミを漁っていると涙も枯れる。歯でも磨くかと思えばハミガキセットがなくなっており、誰が犯人か!? あのワクワクさんが工作に使ったのか!
テンポよく歌うとともに、強引なストーリーをひねりあげ、見事に暗記することに成功しました。
ここまで自分のものになってくると、どんどん積み重ねていくことができます。彼との授業の延長戦が始まりました。
―― おまけで教えておこう。「互いに素」ということばがある。たとえば10と20はともに2で割りきれるので、互いに素ではないということになるね。9と20ではどうだろう? この2つを同時に割りきる数はないね。だから9と20は互いに素ということだ。おもしろいのは、素数ではないけれど、互いに素がありえるということなんだよね。
「うんうん。ということは最小公倍数を出すときには互いに素かどうか調べたほうがよくて~」
まだまだ続きました。
―― という訳で「素数」と少しは仲良くなれたかな? 漢字を見てみなよ。「素」数だよ、誰の影響も受けていない素直な数なんだよ。
「まじりっけのない、ピュアな数!」
いつの間にか、彼もこっち側の人間になってくれたようです。
―― 互いに素というのはさ、あなたとは共通点がないのよ! とフラれちゃった人間関係に見えないか!?
「……先生、それはわからない!」
乗りに乗った熱弁はここで一蹴されました。
よい授業というのは、よい学び手がいるから存在するのだなとつくづく思います。
彼は順調に学んでいくかと思いきや、2か月後に、円の面積でかかわってくる3.14の計算に嫌気が差して私に助けを求めに来ることとなります。この話は「宇宙イチおもしろい算数の授業 ~円周率編~」でお伝えいたしましょう。
花まる学習会 梅崎隆義
