花まる教室長コラム 『自分の心に問いかける』山本志保

『自分の心に問いかける』2026年4月

 現在の初等教育の学習指導要領には、「キャリア教育」というものがあります。職場体験をしたり働く人の話を聞いたりして、自分の将来や働くことについて関心を持ち、進んで情報収集に取り組み、人としてのあり方や社会人としての生き方を学びます。
 昨年、私はその一環で、花まる教室の近隣小学校の6年生に向け、「職業人の話を聞く」という授業の講師として、自身の職業について話をしました。
 講師の依頼をいただいてから当日までの1か月半、何を話そうか悩みました。いまの小学6年生に何を伝えられるだろうか、どんな言葉が必要だろうか。考えつづける日々でした。考えに考えた末、自分の過去もいまも飾ることなく、そのままの思いを伝えようと決めました。

 私はもともと看護師を目指していました。高校3年生の大学受験を控えた夏休み明け、「私は本当に看護師になりたいの?」と、将来に不安を感じていました。そんなときに目にしたのが、児童福祉に関する課題を取り上げたニュース。私はそれを見て、ビビっときました。私の未来を変える運命の出会いでした。
「世の中の子どもたちやお母さん、お父さんたちの力になりたい!」
その一心で大学では教育と福祉を学び、いま、花まる学習会にいます。

 この経緯を子どもたちにも話しました。子どもたちは、「えっそんな一瞬で⁉」と、私の運命的な出会いと決断に目を丸くしていました。
 私の幼少期の夢は、パンダの飼育員とパティシエールでした。いまの職業とはまったく異なる業種です。小学6年生の私は、教育者になるなんて1ミリも思っていませんでした。そうです。将来はどうなるかわからないのです。ましてや、将来やりたいことを急いで決める必要もありません。ただ、将来の夢に限らず、何をするにも決断が必要で、その機会はこれからどんどん増えます。そんなときに大切にしてほしいことを私は6年生のみんなに伝えました。
1.自分がどうしたいか
2.幸せか
3.心が躍動するか

 私自身が、何か決断をするときに判断材料としている3つです。毎回これらを自分に問いかけるのです。そのときの自分の気持ちにきっと嘘はないですし、自分を信じて突き進みたいとも思います。
 
 授業後、学年主任の先生からこんなお話をいただきました。
「職業人の話を聞く前、子どもたちに『どうして働くのか』という質問をしました。一番多い返答は『お金のため』でした。先ほど、講師のみなさんの話を聞いた子どもたちの感想を見たところ、『好きなことを追求していきたいです』『楽しいほうに進んでみようと思いました』『いろいろな選択肢があると知りました』などと、書いてありました。お金のためや生きるためにというどこか漠然とした考え方から、自分のやりたいことに目を向ける意識が生まれ、『自分の気持ち』にベクトルが向くようになり、視野が広がったと思います。とてもよかったです」と。
 ある一人の女の子はこんなことを言ってくれました。
「何かに悩んだり迷ったりしたときには、自分の心に問いかけてみようと思います」
私が伝えたかったことをこの子がまとめてくれたように思いました。
 
 子どもたちが将来、自分のやりたいことを見つけられるようになるためには、たくさんの経験が必要だと思います。そのなかで自分の心にさまざまな種が植えられます。どの種がいつ芽を出すかはわかりませんが、そのときになったらぐんぐん芽を出せるようになってほしいです。そして、そのためには行動しなければなりません。その行動に必要な「挑戦する姿勢」や「勇気」を花まる学習会で育めるようにサポートしてまいります。
 何か挑戦することに抵抗がある子もいれば、自分の思いを伝えることに難しさを感じる子もいます。何事にも積極的な子ももちろんいます。どんな子どもたちにも「自分の心に問いかける」ための声かけを忘れずにいたいと思います。そうやって、子どもたちの「未来の種」に水をあげたいのです。

花まる学習会 山本志保