高濱コラム 2003年 12月号

子どもたちが直面している様々な問題について考え抜いていくと、子どもではなく大人たちの問題であることが見えてきます。そしてその背景として、核家族を基盤とした「地域社会(人のつながり)の崩壊」という現実に行き着きます。お母さんが、相談者の多い環境で、安心して笑顔でのんびりしていられれば、子どもは勝手にすくすく育っていくのに、ただそれだけのことが非常に難しい。あらためてネットワークを築き上げることは、子どもたちの将来を真摯に見つめた時に、危急の課題であるということを、思い知らされます。

お母さん方の、おしゃべりや趣味の場としての新しい組織作りを、昼間空いている塾の教室を提供することで応援しているのは、そのためなのですが、もっともっと色んなカードがあるべきだと思い、アイデアを常に考えています。辛気臭くなく、人が楽しく集まりつながりをつくれる方法はないだろうか。

そんな中、たまたま隣人が、家にキラキラとライトを飾りつけるイルミネーションで、全国テレビで特集として流されるほど有名な家なのですが、息子が喜んでいることをきっかけに、その方の指導の下、昨年我が家も挑戦してみることになりました。それまでは、エネルギー消費も心が痛むし、正直「よくやるよなあ」と感じていたのですが、始めてみると、生来の凝り性・熱中癖が頭をもたげ、またシコシコと電線をくくりつけていく単調な作業に妙な安らぎがあり、すっかりはまり込んでしまいました。

師匠が物量作戦で来るなら、うちはささやかでもちょいと気の利いたテーマ性で行こうと考え、「家族」を主題に創り上げてみたのですが、たくさんの人が見に来てくれました。ちなみに今年は、とある奇特な幼稚園に入園を許され、幸せを満喫している息子のために「友達」というテーマを加えました。

さて面白かったのは、試行錯誤で作業を続けているときにも、複数の方が「きれいですね」と声をかけてくれたこと。ただの雨どいの修理では決してこうはいかなかったでしょう。また、クリスマスが終わり片付けているときも、見知らぬ人が何人も会釈してくれ、中には、撤収作業中の私を見つけて、わざわざ自転車をキキッと止めて、「楽しませていただきました。ありがとうございました。」と声をかけてくれる人までいました。その顔は、すっかり気を許した昔からの友人のような表情でした。

不思議なものです。しょせんは道楽の範疇に入ることですが、自分が面白がるだけでなく、人と人が笑顔でペタペタとくっついていく。次世代の子どもたちのために、人の網を編みこんでいくことが、我々の任務だとすれば、これは使えるツールだぞ、というのが結論です。徐々に広がりを見せているのは、直観的にそのような効用をみんなが感じているのかもしれません。

さいたま市には、元祖イルミネーションタウンの中尾地区がありますが、お暇ならばご家族で、三室地区の新名物・I家ゴージャスイルミネーションの見物とともに、ぜひ我が家の作品もごらんください。私自身は不在で、子供の遅い昼寝や入浴・夕食と重なるのでおもてなしはできませんが、イブの夜まで毎日点灯中です。

花まる学習会代表 高濱正伸