高濱コラム 2005年 6月号

二週連続で、野外での親子遊びに参加してきました。一つは、新潟での「四季の自然スクール」。親子をずっと考え続けている私にとって、酒を酌み交わしながら本音を聞けて、毎回発見のある貴重な場です。一人のお父さんの出発前日が誕生日で、家族から大きなプレゼントをもらったので喜んで開けてみたら、リュックが出てきて、次の瞬間には「はいこれとこれ詰めて」と、準備をさせられたという話に大笑いしたりして過ごしました。

今年の一番のニュースは、植物で言うと新種というか、新しいお父さんが出現したことです。旧来は、父と子の関係が重要だと学んだお母さんが、子を思って夫の尻をたたき、お父さん自身は面倒だなあと思いながら来られるというパターンがほとんどでした。ところが、その若いお父さんは、「いやあ、あの子との関係が、どうもしっくり行ってないなと感じていたんで、自分で申し込みました。」と、サラリとおっしゃったのです。

マスコミ等で、様々な心理学者等の最新の分析として、青年期の問題行動の背景には、「家庭内の父親の存在の希薄さ」が存在するということが、異口同音に盛んに言われていることもあるのでしょうか、この数年、何かが変わってきたと感じていました。父親学級で、「お父さんの働きぶりを見せる。遊びっぷりを見せるということが大事だ」と言うと、ちょっと前までは対抗心むき出しで聞く方もいたのに、この頃はとても真剣にメモを取りながら聞く方が増えました。このようなお父さんの出現は、時代の必然なのでしょう。ちなみに、その親子は、きもだめしで号泣する子を父が抱っこして、子は父の首にしがみつくの図で、しっかりと強くて頼りがいある父を体感させることができ、「ママには内緒だよ」と秘密も持てたようで、お父さんいわく「大満足」の旅となりました。

親子遊びの二回目は、「かまくら探偵団」。古都鎌倉の新緑のハイキングコースを舞台に、推理や記憶や情報収集能力を問うゲームを楽しみました。一つのゲームは、コースのどこかで画家や武道家になりすました犯人(花まるの講師)を、ヒントの一文を頼りに探し出すというものだったのですが、ゲームを理解してもらう導入として、私自身が変装しました。作業帽から白長靴まで清掃員の服で固めて、集合場所までの山道で、道のゴミ拾いをしながら、すれ違う参加者に「おはようございます」と挨拶したのです。必ず横顔は見えるようにしたのですが、150人を超える参加者中、気づいたのは女の子たった一人でした。

その時、とても面白かったのは、私の挨拶と行動に対する、保護者の皆さんの態度でした。しっかりとした声で「おはようございます!」と返してくれる方もいれば、先を急ぐあまりか無言の人もいました。普段は見せない親子の関係を垣間見ることもできました。中で印象深かったのは、返答に続けて「ゴミを拾ってくださってるのねえ」と、何とも美しい日本語で、お子さんに語りかけているお母さんでした。きっとこの家庭は幸せになるだろうなと直感しました。

これらの企画は、テレビやゲームの前から、子どもを外にひきずり出したい。親子でもっと遊んでほしいという、切なる願いとして提供しています。新アイデアも多数あたため中です。子どもだけのサマースクール同様、ぜひご参加ください。

花まる学習会代表 高濱正伸