Rinコラム 『親馬鹿であることの重要性』

『親馬鹿であることの重要性』2008年2月号

犬を飼っています。
まだ仔犬の時期、寝ている枕元で粗相をして、「うふふ」と反省の色ゼロの彼女を見て、「え!なんでわかんないの!さっきダメっていったじゃない」と、いわ ゆるNGワードを言いそうになることもありました。思わず出そうになるその類の言葉をぐっと飲み込んで後始末をしている真後ろで、二度目をやられることもありました。(ちなみに私は普段、先生ならば後ろにも目をもて。360度に注意を払うことができなくてはならない、という信念を持ち教室に立っています。)しつけを通してあらゆることを考えさせられる毎日です。

さて、ピグマリオン効果という言葉をご存知でしょうか。実際にはランダムに選択された子どもを、今後伸びる可能性がある生徒だと知らされた教師が、「その子は伸びる」と思いこむことで、子どもの知能があがったという実験結果から、先生が生徒に対して肯定的な感情を持って接すると、それを敏感に感じ取った子どもたちが、その期待にこたえようと頑張ることで結果として子供たちの力が伸びるのだ、というものです。

子どもたちは言葉の力が大人ほど発達していない分、感じる力が鋭い。大人には取るに足らないような小さなことと思えることも、子どもにとっては一大事件だったりするものです。それほどの感受性で、世の中、私たち大人の動き、ことば、目線、声色を日々感じ取っています。信頼され、期待されている、というメッセージを、大好きな身近にいる大人から毎日もらえたら、きっと本当に伸びるはずなのです。自分に自信を持てるはずなのです。

子どもたちをいつも真っ白なこころの目で、先入観なしに見、どの子も等しく伸びるものだと思って接することが、教師にとって重要である、ということがピグマリオン効果から導き出される命題です。「きっとできるはず」と信じること。何かできると「あらすごい、さすが」という言葉を使いながら日々接しているだけで、その肯定的な感情が伝わっていくでしょう。

意外と難しいと感じたことは、「今すぐできなくても」という待ちの部分を頭においておくこと。この余裕を保つコツは、「この子はだれに似たのかすごく頭がいい子だからな~」というくらいの親馬鹿さを、どれだけ持てているかにかかっているように思います。

そしてときどき、こう考えるといいと気づきました。あの頃は、あんなこともこんなこともできなかったのに、今では当たり前のようにでき るようになっているなあ、成長したなあ、と。できないことよりも、できるようになったことに着目してみる、そうするともっともっと褒める要素が増え、結果的に親馬鹿度も増してきます。

少なくとも私の愛犬ggはこの方法をもって、たったの半年で①トイレの場所を覚え、②散歩は歩くものだと知り、③寝るときはぐずぐず文 句を言わない、という非常に重要な三つのルールを体得しました。すばらしい。私は私の犬を誇りに思います。皆さんが皆さんの宝物たちに対して思うように!