高濱コラム 2010年 7・8月合併号

関東最大手のひとつである学習塾の塾長から、お中元がとどきました。低学年向けのアルゴクラブを開催してもらっているご縁で、社員研修や保護者向け講演を引き受けたことがあるので、気を遣っていただいたというわけです。

その箱を開けて驚きました。社会福祉法人の授産施設で作られたパウンドケーキだったのです。正直お中元には季節の儀礼という面があって、一つひとつはもちろんありがたくいただきますが、「一本とられた」という気持ちとともにこんなに感激したのは初めてでした。塾業界は今、企業買収の風が吹き荒れる、まさに生き馬の目を抜く厳しい時代です。そんな中、独自の牙城を保って奮闘している理由は、このような「一太刀」を振ることができるリーダーがいるからなのだなと感心しました。

そして、贈ってくださる「気持ち」がありがたいというものであればこそ、特に企業間で「社員の皆さまでどうぞ」というときなど、こういう授産施設製品の利用・支援は大ありだなと思いました。かの塾長に拍手。真似させていただきます。

さて、電車の動画広告などを見ていると、世はエコ時代。何でもかんでもエコだエコだとやられると、少々安易な感じがします。もともとは、大気・水など環境の悪化によって、動植物含めた生命全体の危機が訪れている、なんとかしなければという問題意識であったはずで、そのことに異論はありません。しかし、この国の問題の核心は、環境崩壊を見る前に、そもそも人の生命力の衰退で滅びるのではないかというくらい、生きる力が衰えていることです。

すなわち、社会の理不尽に遭うと「合わない」と言って家の中に撤退してしまう学生・社会人、ちょっとしたトラブルをすぐ事件化してしまう親、相手が「異性」であるということへの想像力を欠いて、自分の生きてきた性での実感を持って相手を切り捨ててしまい、相互理解ができなくなってしまう夫婦…。「生身の人間同士の関係での人間力」の向上がこれほど求められる時代は、かつてなかったのではないでしょうか。

子ども時代に、必要な経験である喧嘩を除去するように止めたりしないようにしなければならないし、存分に自然の中での外遊びをさせることが大事。クリエイティブに主体的に熱中し、遊び尽くすことがその基礎です。たくさんのトラブル経験と克服経験をさせねばなりません。

話は変わりますが、ある公民館で、お年寄り向けの算数講座をやってきました。老人とひとくくりにするには、あまりに幅広い年代の方々でしたが、50名ほど2時間、「算数脳パズル」に取り組んでいただきました。驚いたのは、95歳の男性が、一番よく手が動いていたことです。私の話を聞いてはメモをとり、難問突破に集中すればそのための図や絵を描く。60歳でもすぐにあきらめている人がいる一方で、この若さ。長生きされたのは、このような好奇心、手を動かす習慣、やる気を失わずに来られたからだろうなと、しみじみ思いました。生きる力という意味で、齢を重ねてなお理想の姿です。きっと、少年時代は走り回り遊び尽くされたことでしょう。

さあ、夏休み。一人の小2の子にとっては、一度きりの小2の夏休み。体験豊富でみずみずしい感動と喜びに満ちた、意義ある夏休みでありますように。そして、事故なくみんな元気に再会できますように。