Rinコラム 『思いが大切』

『思いが大切』2011年9月号

1年生の作文がはじまりましたね。よちよち作文がたくさん読めるこの時期が、私は大好きです。

なぜならそこには無邪気な思いだけがあるからです。人から見られることを意識していない、幼児の絵と同じバイブレーションを感じます。

周りの大人がついつい発する、「もっとほかに書くことあったんじゃない」「○○ちゃんはあんなに沢山書いてるじゃない」というような他人との 比較や、きちんと書かなければいけないのでは、という縛りがないとき、文章はどの子もとても素敵です。拙さは、こころに伝わるかどうかということと、関係 がないのだと改めて思うのです。

書き始めたばかりのこどもたちに伝えたい作文の極意。それは、楽しんで書くことです。
学習をスタートした最初の段階でいちばん大切なのは、「楽しい」「面白い」という気持ちなのと同じです。その上にすべてが積みあがる。とくに低学年まで は、「わかっちゃった!」という脳の快感ともいえる瞬間を、いかにたくさん体感させてあげられるか。そのための『なぞぺー』です。「わかっちゃった」体験 を知っている子どもたちは、決して勉強でずるをしなくなる。あの快感を知っていれば「絶対に自分で解きたい」と思うからです。

高学年になったら、書くということの楽しさの上に、「では人を説得するためにはどういう手順で、どんな具体例を盛り込んで主張する文章を書け ばよいか」や、「接続語や、新しく獲得した語彙を使って文章を作り出してみる」という課題にも、嬉々として挑戦できるようになるのです。

先日、あるインタビュー記事で読んだ、「ダンスには、思いというものが重要なんですか」という問いに、「それだけです」と言い切ったダン サー、ケント・モリさんのことばを思い出しました。彼は若干26歳にしてマイケルジャクソンのトリビュートライブで、マイケルに扮して踊った日本人ダン サーとして世界的に有名になった人です。その彼が、仕事論と題したインタビューの中で、中学生ダンサーを相手に、「相手に伝わるのは思いや気持ち、こころ だ。楽しいと思って踊っているかどうか。結局それが人の心を動かす。」と伝えていました。

文章も、同じだと思いました。サッカーも水泳も柔道も、そして仕事も。技術やテクニックではない。まずは楽しいと思う気持ち、心の躍動こそが、相手に伝わる。そしてそれこそが、よい文章になるために、必須の条件なのです。

作文も自分を表現する手段の一つ。花まるっこがみんな、「書くとすっきりする」「書くって楽しいもんだ」というスタンスで生きていけたらという思いで、指導しています。