おたまじゃくし 『相手の本質を知る―マナーのよい人、元気のある人、姿勢のよい人は勉強もできます』

『相手の本質を知る―マナーのよい人、元気のある人、姿勢のよい人は勉強もできます』2012年7月

 

『渡し方勝負』という花まる哲学があります。
‘この人に言われるとなんだかやる気になってしまう、うれしい気持ちになる’、目の前にいる相手を、そんな気持ちにさせることです。そう接しようとすると、相手の本質をよく知っていなければなりません。そう、教育とは、教育されるものの本質を知ることが、鉄則なのです。
幼児とは、「やかましい」「落ち着きがない」「計画性がない」「反省しない」生き物です。
花まるでは子どもたちに、「静かに」や「じっとして」などということばは使いません。言っても意味がないからです。なぜ子どもたちがやる気に満ちて楽しく学習に取り組むのか、不思議に思われることがありますが、私たち講師は、彼らの特徴をよく知った上で、『渡し方勝負』を常に意識しています。マナーも元気も姿勢もすべて、彼らの将来に必要なことは、この花まる哲学を通して、伝えているのです。
時間軸をさかのぼれない彼らは、「やり直し」が大嫌い。小学生の計算教材『サボテン』でも、「間違いはやり直そう」だとやる気が出ないのに、「じゃあ次のページやってみて」なら喜んでやれる。「反省しない」のは、子どもの最大の素晴らしい特性でしょう。さっきまで大喧嘩して泣いていたその涙が乾かないのに、もうニッコリ笑って仲直り。大人だと、こうはいきませんよね。
そんな彼らを心得た上で、家庭でできる花まるメソッド、今回もひとつ、お教えします。
年中年長コースでは、ハサミを使った思考実験がはじまっていますね。ハサミは一見地味な作業ですが、五本の指を全部使い、脳への刺激が多いだけでなく、線のとおりに切ろうとすることで、集中力・注意力も鍛えられ、達成感を感じることもできる、遊びの中でもよい訓練課題。年長の宿題の、大きなテーマのひとつでもあります。
そのハサミを使うとき、実は重要なポイントは、「正しい姿勢」です。椅子に深く腰掛け、背筋をピンと伸ばし、両脇を締めた体勢になってようやく、ハサミを使う準備が整います。体幹の筋力がまだ発達していないために、姿勢が保てない子もたくさんいます。背もたれのない椅子で座る練習などで、背筋がぴんと保てる筋力を鍛えてあげることも、必要です。
さてここで思い出してください。4つの幼児の特性を。
正しい姿勢を、「何度言ってもできないじゃない!」と、根負けしてしまうのは、実は大人のほうなのです。相手は幼児。何度言ってもすぐ忘れて、反省などせずにまた繰り返しちゃうものなのです。ここは感情などいれずに、さらっと「背中。」と言いながら、背骨に沿ってすっとなでてあげると、背筋を伸ばすことを促せます。足がなぜか椅子からはみでるのも同じ。いちいち怒らない。面白いことに、相手の特性を知っているだけで、こちらの感じ方も全て変わってきます。「夫は犬と思えby高濱」(他に、男の子はカブトムシと思え、もありますね)ではないですが、ここで『渡し方勝負』をひとつ、体得してみてはいかがでしょうか。