高濱コラム 『贈り物』

『贈り物』2012年11月

「金スマ」の評判がすこぶるよくてありがたく感じていたのもつかの間、とある朝番組で、コメンテーターたちにこき下ろされました。メインパーソナリティのO氏に「こんなんで生きる力なんてつくの?」と軽蔑に満ちた目で言われたときには、ムッとしました。取材させてくれというから快く引き受けたのに、一部分の浅い取材しかしていない上に、コメントで切って捨てるって、人としてどうなの?と思いました。多分彼は本も読んでいないし、野外体験もフロスも知らないし、何より多くの若い母親たちの、イライラがこみ上げてしまう子育ての現状にも無理解です。誠意を持って理解しようとするのでなく、対象を切って捨てる。何かのコンプレックスの強い人なんだろうなと感じました。こういう人にこそ「夫は犬と思えばよい」を読んでほしいのですが。

一番嫌だったのは、D某がなぞぺーに大きく「へのへのもへじ」を書いて「こんなのやってられないよ」という表情を見せたときです。可愛い会員の子たちが誇りを持ってやっている教材(命がけで作っている商品)に、何てことをするんだという気持ちになりました。これが大企業製の車や家電製品でも、同じように落書きして笑って見せるのか、と。

出演して母の本音をさらけ出してくださったお母さまや、子どもたちにも申し訳なくて、二日間は怒っていましたし、十代だったら殴り込みに行っていたかもしれません。しかし、多くのお母さまから「許せない」「負けないで」とメールや手紙をいただいたおかげで、「たくさん味方がいる」という気持ちになって、苛立ちはすっかり雲散霧消してしまいました。

きっと彼らは、いつものように「切って捨てるキャラ」「おどけてみせるキャラ」を演じただけでしょう。毎朝時計がわりにつけていた番組だっただけに、親戚に裏切られたようでとても残念でしたが、二度と見ないことに決めました。そもそも出る杭は打たれるものですし、本を出版したら、誤読されたり題名だけで非難されたり毀誉褒貶色々あるのは当たり前でもあります。今は、苦いけれど良い経験になったなと考えています。共感して応援してくださったお母さま方、本当にありがとうございました。助けられました。

さて、嵐もあれば晴れ間もあります。一人の女性Sさんの結婚式に出ました。講演「母親だからできること解決編」で事例になっている、「父子マラソンで自信をつけた女の子」です。花まる第一期生。彼らの世代が一年上がるたびにその学年のなぞぺーを作っていったし、彼らが4年生になるからスクールFCを創設した、思い出の学年。青臭い理屈を振り回す私をむしろ温かく指導してくださった忘れられないお母さんお父さんでもあります。

会場につくと、妹たちが「高濱先生!」と駆け寄ってくれました。ご両親とも思い出話に花が咲きました。当時子どもしか連れて行かなかった秋の海釣りに、今思えば心配だったのでしょう、お父さんも参加して、ギンポをはじめ誰よりも釣果をあげたこと。それを娘であるSちゃんが、破顔とはこのこと本当に嬉しそうにしていたこと。それがのちの「親子海釣り」につながったこと…。お母さまは「あの頃が子育て一番楽しかったです」とおっしゃいました。本人は、公務員になり「母親たちの子育て支援」を本職にしていました。私も多少なりとも影響を与えたかもしれません。

大きな教会。いわゆるバージンロードを、腕を組んで歩く父と娘。歴史をよく知っていればこそ、涙が止まりませんでした。「お父さん、おめでとう。きれいな花嫁さんになりましたね。あなたの行動は今もずっと父親学級のお手本として語り続けていますよ」そんな思いにあふれました。

そして、披露宴の会場に入って席次表を見て驚きました。私の肩書は「花まる学習会代表」ではなく「新婦恩師」になっていました。言葉を大切にしていたSちゃんからの、心のこもった贈り物だと思いました。

花まる学習会代表 高濱正伸