花まる通信 『悔しさと向き合う』

『悔しさと向き合う』2014年1月

小学生コースで行われた漢字検定での出来事です。教室の後ろの方から、嗚咽する声が‥。何かと思って近寄ってみると、2年生のTくんが、頭を抱えながら、涙を流していました。

1年生の最後の検定で特待合格をとったTくん。今回初めて「飛び級」することを選択し、自ら高いハードルに挑戦したのです。ところが、学習範囲がグッと広がり、漢字練習が思うように進まないことでTくんに焦りが生まれました。時には、泣きながら漢字練習をしていたこともあったそうです。その時に支えとなったのは、お父さんとお母さん。なんと、Tくんと一緒に漢字検定の試験勉強を始めたのです。親子が三人四脚で取り組むことで、折れそうになったTくんの心を支え、最後まで頑張り続けることができたのです。
そして迎えた漢字検定当日、冒頭のシーンに戻ります。
Tくんと話をしてみると、「どうしても思い出せない漢字がある」とのこと。続けて出てきた言葉が私の心を打ちました。

「お父さんとお母さんが一緒に勉強してくれたのに‥」

そう言って、また涙をポロポロ流すのです。Tくんにとっては、今回の漢字検定は自分だけのものでなく、親子で臨む漢字検定になっていたのです。
その姿を見て、悔しさと向き合うのはこういうことなのだと実感させられました。本気で臨んだからこそ、零れた涙。「悔しい」と思えるのは、そこに至るまでにそれだけの努力を重ねてきたからなのです。しかも、今回はご両親の想いをその小さな両肩にのせて‥。
もちろん、努力が報われてほしいと思います。ただ、社会に出てしまえば、努力が報われることはごくごく僅か。それでも歯をくいしばり、悔しさを乗り越えて、前に進んでいくしかないのです。今ここで経験している全てが将来につながるもの。たとえ結果がどうであろうと、私はTくんを誇りに思います。

結局、涙を流しながらも最後まで問題に取り組んだTくん。目は真っ赤なまま教室を出ていき、泣きそうなのをグッとこらえながら、お母さんに抱きつきました。「頑張れ男の子!」と思って見守っていると、お母さんは何も言わずにギュッとTくんを抱きしめました。そして一言こう言ったのです。

「あらあら、お疲れ様。ここまで頑張ってきたTを見て、お母さん嬉しくなっちゃった。」

さすがお母さん。
Tくんが顔をあげると満面の笑顔がそこにありました。お母さんの言葉と笑顔、そして胸の温かさで、Tくんの心がフワッと軽くなったようでした。ここまで積み上げてきた努力をTくんは決して無駄だとは思わないでしょう。今回の一連の取り組みが、人生における貴重な一コマとして、Tくんに刻まれた瞬間でした。

花まるで伝えられること、それは単なる勉強ではなく、「生き方」です。その想いを胸に、これからも子どもたちの前に立ち続けます。子どもたちが、社会の荒波に負けないように、真正面から立ち向かっていけるように、そして、より良い将来を自分の手で切り拓けるように。

高橋 大輔