花まる教室長コラム 『悔しさから伸びる力~花まる漢字検定~』

『悔しさから伸びる力~花まる漢字検定~』

今回は、ある男の子の漢字にまつわるエピソードをご紹介します。
一人っ子の男の子Bくん。1年生から花まるに通っていました。2月からスクールFCへと移動が決まっていたため、3年生の12月がBくんにとって、最後の花まる漢字テスト(小学生が学期末に受ける漢字のペーパーテスト)でした。並々ならぬ意気込みで臨んだ最後のテスト、がんばった練習の成果も出て、Bくんはすべての答えを埋めることができました。さっと目を通した限り、ほとんど間違いはなさそう。「がんばったね!」と声をかけてBくんを送り出しました。しかしその日の帰りの車の中で、Bくんは大号泣したそうです。

―悔しい悔しい。最後の花まる漢字テストだから、100点を先生にプレゼントするつもりだったのに。“落ちる”の送り仮名だけをまちがえちゃった― 結果はBくんのその言葉通り、1問間違い、98点特待合格でした。

そんなBくん。最初から負けず嫌いな性格だったかというと、実はそうではなく、むしろ正反対の性格でした。一人っ子の二月生まれということで、ともかくマイペース。何をするにもゆっくりゆっくり。「うちの子競争心が無くて…」とお母さんが心配されていたのを覚えています。

1年生の7月。初めての花まる漢字テストの結果は不合格でした。1年生の1学期は、ひらがな・カタカナ中心+漢字という内容。しかしようやく学校でカタカナの練習が始まったばかりということで漢字学習方法に関して、お母さんとご相談しました。

楽しんでいる時が伸びるとき、というのが花まるの理念です。勉強は好きでいることが一番。ただ、実は、漢字に関してだけは、“泣いてもわめいても、大人が鬼になってやらせるべき”と考えています。「根気が必要な漢字練習から逃げる=自分がぐっとこらえてやらなくてはいけないことからも逃げてしまう」傾向があり、結果、受験勉強や社会に出てからも、自分に耐性がないことに向き合いきれない…ということが多々あるからです。花まるは学習を楽しむ場所。しかし、漢字だけは、どんなに辛くても“逃げない練習”と位置付けて、毎日少しずつでも向き合い続けることを強くおすすめしています。
 
お母さんはこの理念に非常に共感してくださっていました。そして、だからこそ、ある決断をされました。
「Bには今回、思いきり、悔しい思いをしてもらおうと思います」
(―今回はひらがなとカタカナを中心に練習する。書けない漢字が出てきて悔しい思いをするかもしれないが、それも経験。その悔しさをばねに2学期から漢字の学習にしっかり取り組ませます。だから先生、不合格になったらなったで、それをしっかり本人に伝えますから大丈夫ですよ)とおっしゃっていました。Bくんから、あえて「手を離し、見守る」という決断です。

結果、不合格。表情には出さなかったものの内心悔しかったのでしょう。次の花まる漢字テストから、Bくんの取り組み方は変わりました。とはいっても、まだまだ低学年。やる気はあっても行動がともなわず、やっぱりついつい、なまけてしまうこともあります。しかし“泣こうがわめこうがやらせるのが漢字練習”ということで、お母さんは「自分がやると決めたのだからやる」ということで、そこからはかなり厳しく、Bくんの漢字練習につきあって下さいました。段々と口が達者になるBくん。時には深夜までケンカが続くことも。それでも逃げずに練習を重ねれば重ねるだけ、Bくんの漢字の力、並行して文章題を読み解く力、集中力などもあがっていき、2年生の3学期の漢字テストは96点と見事特待合格。そして、3年生の2学期、飛び級をして3年生の全ての範囲の漢字のテストを受けた結果が、冒頭の場面につながります。

最後のお母さんの一言が忘れられません。「たかが漢字一つですが、この3年間、一生懸命に物事に当たるという経験をさせてもらい感謝しています」と―。こちらこそ、という気持ちでいっぱいです。かわいいかわいい我が子に対して、最初に手を離すという決断をされた時。鬼になって漢字の練習をさせている時。想像でしかないのですが、きっとお母さんが一番苦しかったのではないかと思います。それをおくびにも出さずに、本当に二人三脚で漢字練習をすすめてくださいました。そのお母さんのサポートなくしては、1問間違えて大号泣するBくんの姿はなかったことでしょう。
「手を離す」「とことんつきあう」どちらもとても大切なことだと思っています。そして「今がそのどちらのタイミングなのか」一番我が子に近い位置にいるご家族の方の感じたタイミングがすべてです。迷われた際は、外の私たちの目から見た、今のその子のご様子をお伝えしていきます。最後に、その子もご家族の方も笑えるように。精一杯サポートさせていただければと
思っています。