松島コラム 『卒業生との再会』

『卒業生との再会』 2015年2月

中学入試も終わり、FCでは高校入試の正念場を迎えている。大学入試も今が真っ盛りである。教え子が大学合格の知らせをもって突然やって来る時期でもある。

昨年末、南浦和の代表室で仕事をしていると、内線電話で「卒業生のTさんが受付に来ています。」と連絡が入った。「懐かしい名前だなあ。卒業以来かもしれない。」などと思いながら、部屋を出て事務所に向かおうとすると、すでにドアの前に彼女が立っていた。

「おー、久しぶり。どうした?急に。」と言うやいなや、「先生、大学決まりました。」 そうか、AOの発表の時期か。「どこに決まった?」「東北大学です。」「すごいじゃないか。いつ発表だったの?」「さっきです。」

合格がわかってすぐに中学時代に通っていた塾に報告に来てくれるなんて感動である。合格通知書を握って走ってくる彼女の姿を勝手に思い浮かべながら、「よく来てくれたなあ。うれしいよ。」と言うと、「お母さんから、FCに報告に行って来なさい!って言われたんです。」ガクッ。しかし親御さんがそう言ってくれたことは、塾としてはこの上もない名誉である。

「結構勉強したんだろう?」「そうでもないですよ。でもFCで習ったノート法がとても役に立ちました。」なんとうれしい言葉。手前味噌であるが同じようなことを言ってくれる卒業生は多い。しかし目の前でその言葉を聞くと泣きそうだ。

当時担当していたクラスでは、県立志望であっても国私立最難関を目指す授業をしていた。一時的な目標は高校入試ではあるが、その先の大学入試を考えると、私立中高一貫校のカリキュラムと同等かそれ以上の学習をしておいたほうがよい。授業中に定期テスト対策はせず、テスト期間中でもカリキュラムを進める。したがって普段から定期テストの勉強を各自で進め、学校の成績もしっかり取ることがこのクラスに入るための条件になる。中3までの内容を早い時期で終わらせ、そのあとは難関私立校の入試問題をひたすら解き進める。最初はほとんどの問題が自力では解けないが、ここを乗り越えると数学の本当の面白さに出会える。

中3の勉強合宿のとき、こんなことがあった。

突然、このクラスのある女子生徒がしくしくと泣き始めた。問題が解けず情けなくて悔しくてたまらないのだ。声にもならない状態で、「トイレに行ってきます。」と彼女が教室を出て行ったあと、私は他の生徒たちに、「どうする?」と尋ねた。すると、「先生、大丈夫ですよ。いつものことだし、彼女、しっかりしているから、またすぐに復活しますよ。そっとしておきましょう。」こう答えたのが合格報告に来てくれた彼女だった。他の子たちも顔を見合わせながら「放っておこう」という結論のようだった。このクラスは男女2人ずつの4人のクラスだった。それぞれの個性が強すぎて、口の悪い言葉が飛び交うこともある。その反面、ときにお互いを認め、尊敬し合う様子も見せる。受験勉強は個々の闘いではあるが、共に高め合い、励まし合う仲間がいることによって成長できる面もある。その点でこのクラスはいいチームだった。

あの時から3年。風の便りではこのうちの2人が、この春東大を目指していると聞く。普通の中学生だった子たちが日本の頂点を目指している。あと伸びし続けている。東大ばかりが大学ではないが、FCを離れても勉強に対して前向きに挑戦していることが何よりもうれしい。

春の訪れと再会を楽しみにしながら、これからも目の前の子供たちに勉強の楽しさを伝えていきたい。