松島コラム 『よく学び、よく遊べ』

『よく学び、よく遊べ』 2015年5月

先日、講演会の関係者の方と打ち合わせをしている中で、「息子が結婚するようには到底思えないのでとても心配している。」という話になった。26歳でちゃんと仕事もしているが、休みの日は一日中家にこもっている。これまで女性と付き合ったような様子もない。結婚については、「自分で稼いだお金でなぜ他人を養わなければならないのか。」と否定的だという。横で聞いていた女性からも、「うちの息子も似たようなことを言っているんですけど、大丈夫でしょうか。」と同じ相談。
 少子化の問題では、待機児童や育児を支援する社会制度の充実が課題とされるが、それ以前に草食・絶食男子や晩婚化の問題がある。しかし、そもそも「恋をしよう!」なんてことを声高に叫ばなければいけない世の中にどうしてなってしまったのか。私は専門家ではないのではっきりとしたことは言えないが、ネット文化が一気に若者の間に広がったことがその原因の一つである可能性は高い。
 今の若者はたくさんの友達とLINE やFacebook でつながっている。彼らは広くゆるく友達を増やすことが得意であり、そこにおいては高いコミュニケーション力をもっている。逆に言えば、上司部下、師弟のような狭くて濃い縦の関係があまり得意ではないのかもしれない。友達のような親子を「友達親子」と言うようだが、親子という上下関係を横の関係にしたほうがお互いにコミュニケーションがとりやすいということだろう。
 しかし実社会では横の関係だけでは成り立たない。ネットの世界なら嫌な相手をボタン一つでブロックできた。家の中なら理解のある親が守ってくれた。しかし、社会に出ると、気に入らない先輩や嫌みを言ってくる上司を簡単には拒否できない。だから最終的には自分からその場を退いてしまうのである。同じようにリアルな人間関係を面倒くさいと感じて、恋愛に腰が引けてしまうこともありそうだ。
 人生は「よく学び、よく遊べ」だと思う。外に出て行って、いろいろなことから学び、遊び、吸収し、幅を広げておいたほうがいい。若いうちの失敗は必ず財産になる。恋愛もすばらしい教科書になるだろう。そして、一見無用に思える打算なき経験によって生まれるオリジナリティこそが、予測不可能な未来を生き抜くための武器になると思う。
 この春、我が家では長男が進学のため家を出るのだが、「まだ入学もしていない段階からもう就職のことを考えている」と妻から聞いた。私から彼に伝えたことは、「大学に行ったらまず彼女を作れ。世の中どうなっていくかわからないんだから、就職のことを考えるよりも幅を広げることを考えろ。」である。妻からも「とりあえず楽しめばいいんじゃない。」と。「おお、いいこと言うじゃないか。」と思いながら、留年して学生生活を大満喫した私は、その流れで、「留年したって長い人生まったく問題ないから。」と調子よく続けたのだが、すかさず妻から、「それはだめ!」とピシャリ。「よく学び、ほどほどに遊べ!」、これが母心なのかもしれない。
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