松島コラム 『みんなの学校』

『みんなの学校』 2015年6月

先日、「みんなの学校」という映画を観た。この映画は、すべての子どもに居場所がある学校づくりを目指す、大阪市立大空小学校の取り組みを、長期にわたり取材したドキュメンタリーである。特別支援教育が必要な発達障害がある子、感情をコントロールできず人に暴力をふるってしまう子、教室から逃げ出してしまう子、みんなが同じ教室で学ぶ。保護者や地域の住民と協力して見守り育てていく、まさに「地域に開かれた学校」である。そして、何よりも木村泰子校長の人柄、リーダーシップ、子どもたちへのあふれる愛情が映像から伝わってくる。ときに未熟な若い先生を叱咤激励し、子どもと向き合う時に大切なものに気づかせる。こんな魅力的で頼りがいのある校長のもとなら、誇りとやりがいをもっていきいきと働く先生も増えるのではないだろうか。学生時代にこの映画を観ていたら、私も教職に就いていたかもしれないと思わせるほど心揺さぶるものを感じた。
 この作品はテレビで放映されたものを映画化したものだ。テレビ放映後には、支援を必要とする子どもたちが数多く校区内に引っ越してきたという。どんな子どもでも引き受ける。周りから「あの子が来るなら行きたくない」といわれるような子どもがいても、「じゃあ、そんな子はどこに行くの?そんな子でも安心して来られるのが地域の学校のはず。」と木村校長は言う。ドラマではないから現場は筋書き通りには進まない。しかし、「自分がされていやなことは人にしない、言わない」というたった一つの約束事が先生や子どもたちを変えていく。子どもたちと対峙する木村校長の言葉にはぶれない教育者としての厳しさがある。しかし、子どもたちを見つめるそのまなざしにはいつも優しさがあった。
 「校長が変わると学校も変わる」とよく言われる。小学校の講演会に伺う機会が増えたが、学校によってずいぶん雰囲気は違うものだなと感じる。児童も保護者も明るくのびのびしている学校は、校長と保護者の距離が近い。同志のような空気感がある。そういう学校でも数年前では荒れていて、不登校や学級崩壊でたいへんだった、というようなことを聞くことがある。
 特に私学はリーダーの交代によってガラッと変わることが多い。最近では広尾学園がその顕著な例である。改革の原動力となった大橋清貫氏は、現在三田国際学園中高(旧戸板女子中高)の学園長に就任し注目を集めている。今後、他の学校でも2020 年の入試改革に合わせて様々な改革が進むだろう。
 これからの教育はこれまでにないほど多様化していく。知識偏重型の学習は一定の形としては残るものの、多くは主体的に考える力、表現する力を伸ばす方向に進むだろう。すでに一部の学校では来年度から教科横断型入試に変えようとする動きがある。そうした中でわが子の教育環境をどう選択していくか、偏差値ありきの学校選びよりも難しい判断になるかもしれない。
 FCでは今年度から私学の校長をはじめとする現場の先生方を招き、教育をテーマに保護者の方と気軽におしゃべりできる場を設ける。学校説明会のような形式的な場ではなく、先生個人の教育観などもうかがえるような機会にしたい。名称は「花まるカフェ」。当面は一開催30名前後の形で数多くの開催を予定している。ご案内の際にはぜひご検討いただきたい。学校選択の一助になると思う。
 佐賀県武雄市で開校した官民一体型小学校も、先生、保護者のみならず、多くの地域の方々の参加、協力の下で、新しい地域教育の在り方を実現しようとしている。
 少子高齢化の時代、みんなの学校にはお年寄りの力も欠かせない。その時が来たら私も何らかの形でお役に立ちたいと思っている。
 (次号へ)