西郡コラム 『公立小学校でもいける』

『公立小学校でもいける』 2015年12月

11月1日の朝日新聞に、佐賀県武雄市の「官民一体型学校」の記事が載ったが、後半部分を削除させた。
 「花まるタイムの『命』はテンポとリズム。例えば、全員が問題を解き終わるまで待たない。その理由を花まるの西郡文啓講師は『できる子についていこうという気持ちを引き出すため』と説明する」ここまではいいのだが、再序されたのはこうだ。
 「また、間違い直しは特に低学年には苦痛だという。『サボテン(花まる式計算問題)は類題が多いつくり。やり直させて計算嫌いにさせるより、翌日また類題に挑戦し、できるようになればいい』と西郡さん。計算の速い遅いがプレッシャーにならないよう、『周りと比べず、昨日の自分に勝つことが大事だよ』とも繰り返し子どもたちに伝えている」
 その日のニュースの重要度によって紙面、字数の制限もあり、削除されるのは仕方がない。取り上げてもらうだけでも有り難い。しかし、削除された後半部分は花まるメソッドの核心だけに、ここで補足しておく。
 もう一つ「先生の熱意に頭が下がる思いした」これはまさにその通り。特別支援学級は情緒面と知的面の2学級に分かれる。頭が下がる思いがした先生は、知的な面で支援を要する学級を担当する先生のこと。
 「花まるタイム」では15分で、四字熟語の音読、キューブキューブ、サボテン、あさがお(書写)の四つの課題を学習する。同じ課題をどう特別支援学級の子どもに実践するか。
 四字熟語音読では、先生役は先生自身が録音したテープが担当。先生は児童の一人になってともに音読する。元気のいい一斉音読はマンツーマンの特別支援学級では難しい。少しでもより多くの人の声、そして寄り添いともに音読する心遣いからくる、このアイデア。そして、タンバリンを横に置き、児童自身がタンバリンを叩いてリズムをとりながら音読する。心地よい音読。
 キューブキューブでは、2つのピースを組み合わせた図形を示し、その図形を再現する。提示する図形は黒の縁取り、解答には二つのピースを色分けしてどう結合しているかよりわかりやすく示す。この先生は特別支援の子どもにこの課題では難しいと判断。キューブキューブの一つ一つを色分けして、子どもにより理解しやすい、取り組みやすいカラフルなキューブキューブに変えた。
 この日使用していた「サボテン」は少数×整数の問題。この子はまったく計算ができなかったので、まずは計算機を使ってやる。次に同じページをコピーして何度もやる。そして少しずつ毎日ページを変えてやっていく。私が見た段階では、ほぼ1ページを3分内で終えるまでになっていた。「先生(西郡に)この子、すごいでしょう。ここまで成長したのですよ」という先生に私は頭が下がる思いがした、のだ。
 花まるメソッドを理解して、その子の最も適切な花まるメソッドを見出す。

西郡学習道場代表 西郡文啓