Rinコラム 『しあわせに生きるために』

『しあわせに生きるために』2016年4月

「学びの意欲」を育てる、といいますが、果たしてどんな風に育てることができるのでしょう。そしてそれはなぜ大事なのでしょうか。
 不思議に感じたり、わからないことを面白いと感じたりすること、本当はどうなっているのだろう、と探究する能力、問題を見つけたら仮説を立て、解決しようとする心。わからないことに出会うと解決したくなるような態度。これらを育てることが、「学びの意欲」を育てることです。
 「学びの意欲」をそぐことは簡単です。できないことだけを指摘し続けると、人は萎縮して自信を失います。他人の想いに敏感な子は、‘誰かの望む自分‘を演出して、他人からの評価にモノサシを合わせているうち、自分自身の喜びや楽しさを無視する癖がついてしまいます。「自分はこうしたい」という意思が薄れ、決断を人にゆだねはじめます。「次は何をしたらいいの」と、自分のことでも判断できないのが当たり前になっていく…あれ?そんなことをするために、子どもたちはこの世に生まれてきたのかな。
 世界は、それを見る人が意識する方向に動いていきます。「人生はつらい」と思っていると、生きるのはどんどんつらくなっていきます。「こんな体験をしたい」と願っていると、そうなるように人生は動いていきます。これは理屈で説明することはできず、自分で実感するしかありません。「世界は意識によってつくられている」のです。将来の夢を意識すると行動が変わり、行動が変わると人生が変わります。
 人生を創るのは、いつも「今」の意識です。そしてその意識を支えるのは、「学びの意欲」の上にすくすくと育った自分への信頼と、他人への愛でしょう。
 自分がどうしたいか、をおさえ込んで生きる時代は終わりました。これからは、好きなことをして生きる起業の時代に、社会構造がシフトしていきます。魂の喜ぶことを行い、楽しく過ごしながら、人の役に立つ生き方を目指す「好きなことでしか生きていけない」時代です。必要なのは、将来を見据え、決断して、行動できる人材です。未来を想像したときに、旧来の教育システムのままで果たしていいのかどうか。保育者や教育者が最も意識の変革が問われるべき命題でもあると思います。
 よりたくさんの子どもたちが、「自分は何をして、どんなことで人の役に立ち、幸せに生きていくのか」を選択して生きていけるように。新しい時代は、まだぼんやりとその輪郭を見せ始めたばかりです。けれど自発性を尊重され、「学ぶ意欲」をそがれずに成長した子どもたちは、きっと道を切り拓き、新しい生き方と新しい社会を作っていくことでしょう。
(Rinコラム、2016年度からは「ARTのとびら」ページにてお読みいただけます) 
 
レロ由実