松島コラム 『2024年入試をふり返る』

『2024年入試をふり返る』 2024年3月

 今年の入試もいち段落しました。受験生のみなさん、本当にお疲れ様でした。ここまで支えてくださったご家族のみなさまにも感謝申し上げます。
 2024年の中学入試をふり返りたいと思います。今年は一時的に首都圏の小学6年の児童数が5000人ほど減少しましたが、受験者数は前年とほぼ変わらず、結果として受験率は微増となりました。来年は児童数が例年並みに戻るため、しばらくは中学受験人気が続くと予想されています。
 昨年は芝国際が大きな話題を集めましたが、今年はコロナが5類になったこともあり、全体的には落ち着いた入試だったと言えます。そのなかでも開智所沢が5420名の受験生を集め、埼玉県の受験者数が前年比120・6%になったという結果(首都圏模試センター調べ)をみると、新設校が与える影響の大きさを改めて感じます。また、今年は入試問題における問題不成立や適切ではない出題などが多かった年でした。毎年大学入試をはじめとして、運営上の手違いや出題ミスがニュースになりますが、過去に私も何度もそうした場面に遭遇しています。不合格だった生徒が間違って合格として掲示されたために最終的に合格となったケースや、入試問題の大問がまるごと問題不成立だったためにかなりの受験生が繰り上げ合格になったケースなど、入試の世界ではそういう想定外のことが起こるのも事実です。人生の一つの分岐点とも言える入学試験ですから、可能な限りの防止策を講じていただきたいと願うばかりです。私たち自身も子どもたちの学習の妨げにならないよう、教材・テスト等には細心の注意を払ってまいります。
 今年の入試でもう一つ話題になったことがあります。それは慶應義塾普通部が入試データを公表したことです。これには私も驚きました。桜蔭や女子学院など一部の最難関校や学校の方針などで公表をしていない学校はありますが、多くの学校は受験者平均点、合格者平均点、合格最低点などを公表しています。慶應附属校は非公表の学校として知られていましたが、なぜ今年から公開に踏み切ったのか。事情に詳しい方にその理由を尋ねたのですが、現在のところ明確な回答は得られていません。これまでは普通部の合格者平均点を7割から8割くらいと予想する塾関係者もいましたが、実際にはそんなに高いはずがないというのが一般的な見方でした。今回そうした議論にも終止符が打たれました。実際今年の合格最低点は222点(満点400点)で、算数の合格(者)平均点は55点(満点100点)でした。超難問は出ないとは言え、難易度も問題数も40分で取り切るには大変な問題構成ですから、私自身は以前より算数の合格者平均点は6割台ではないかと予想していました。しかし今年はそれよりも低めでした。いずれにしても、来年の問題もみながら改めて検証したいと思っています。
 慶應義塾普通部が入試データを公表したとなれば、慶應義塾中等部にもその期待がかかりますが、こちらはその可能性は低いのではないかと思っています。普通部は男子校ですが、中等部は共学校です。募集定員は男子120人に対し女子50人ですから、女子は男子よりも狭き門です。入試結果にも差が出ていると考えられます。私学には私学の考え方がありますから、今後の動向に注目していきたいと思います。
 先日フェリス女学院中学が2026年2月1日の日曜日の入試日を変更しないと発表しました。ご存知の方も多いと思いますが、一部のプロテスタント系の中学は入試日が日曜日にあたる場合は、礼拝や安息日を理由に入試日を変更するのが慣例です。これを受験業界では「サンデーショック」と言い、プロテスタント系以外の学校の入試にも大きな影響を与えます。今回その代表的な学校であるフェリス女学院中学が入試日を変更しないというのは、受験生ファーストとも言える大変すばらしい決断であると感じています。
 さて、他にも入試要項を変更する学校、共学化する学校など、来年度以降の変更点が発表になっています。「幸せな受験ラジオ」(Voicy)でも最新の入試情報をお届けしています。また受験を終えたご家族のインタビューなども随時アップしてまいります。こちらもチェックしてみてください。
 新学期が始まります。それぞれの新たな目標に向かっていいスタートを切っていきましょう。

スクールFC代表 松島伸浩