花まる教室長コラム 『縦にも横にも』梅崎隆義

『縦にも横にも』2026年9月

 花まる低学年授業のキューブキューブの時間。手元のブロックを組み合わせてお手本通りにできたら、チーム全員で「できた!」の声を上げます。この日も、男女ともに元気な2年生チームからひときわ大きな声が上がりました。その後、「別の組み合わせでもこの形つくれるよ!」「奥の方が見えないようにしたら3つめもできた!」と、このチームでは恒例となった別解アピール合戦が始まります。
 このテーブルの中心にいたキューブキューブが大好きな女の子が、今日のお話の主人公です。彼女は、自宅でキューブを使って遊んだことを作文に書くことがありました。一段ずつ螺旋階段になるように積み上げてみたり、最後は斜めにして屋根のようにかぶせたり。バランスをとるのがなかなか難しい……など、自分でこだわって楽しんでいることが細かに伝わる文章でした。
 段ボールひとつあれば、はさみとテープを携えて半日は熱中して遊んでいるとのこと。「家をつくりたい!」という将来の夢ともリンクしました。
 ご家庭の意向で中学受験に挑戦する選択をとり、4年生からスクールFCへ。学校が終わってから電車で3駅の通塾。理科・社会をカルタで覚えるのが楽しかったようで、疲れている日も授業終わりにはむしろ元気になって帰ってくる、と保護者の方が話していました。
 本格的な受験勉強が始まった5年生からは、国算理社のバランスを考えて一週間を設計。模試などの予定にあわせて修正しながらコツコツと積み重ねていきました。
 授業のある日は17時~21時で校舎にいる彼女たち。休み時間にしていた遊びは、「国家形成ごっこ」でした。社会で公民の勉強が進むほど、難しい用語を自分たちの身近なものにして楽しみたくなったようです。
 ○○が環境大臣だから、授業終わったあとの消しゴムのカスが残ってないかチェックして~。先生に連絡するときは外務大臣の□□から言ってもらうからね。あ、△△は天皇なので、先生からだれかに賞状を渡すときは天皇を通してくださいね。私は憲法の条文案をつくらないといけないから忙しいんです。……しゅ、宿題もちゃんとやります!
 男女合わせて10人のクラスで、何かしらの役職がついているようでした。受験塾と聞くと殺伐とするイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、受験勉強も苦にはならないだろうなあと感じるほどに仲の良い代でした。彼女らの作った、FCけんぽうを見せてもらったときのことは、いまでも覚えています。

第一条 FCの受験生として、他人の本気を邪魔しない。

 授業の折に我々から発しているメッセージを一番大切に掲げてくれていることが嬉しく、誇らしくもありました。
 こう書くと遊んでばかりに見えてしまいますが、相当な量の課題をこなし、弱点とも向き合えるようになって受験本番シーズンを迎えます。いわゆる実力相応校の合格をつかみ取り、挑戦校に向かって前進する彼女。1月の挑戦校1回目は、不合格。校舎で辛そうな彼女の顔を見たのは、初めてのことでした。
 いつのまにか国家形成の遊びの時間もなくなり、各人が自分のやるべきことに集中する1月下旬。2月1日、2日……と受験終了となる仲間が増えていきます。挑戦校ラストチャンス、2月4日の結果は……「補欠」。喜ばしいのか悔しいのか、なんとも歯がゆい二文字でした。倍率6倍を超える世界で補欠まで食い込めたのは本当によく頑張ったなと思います。何日まで連絡を待ち、それからは先に合格していた学校への進学、と大人が決めておきましょう。そう連絡しようとした矢先、繰り上げ合格の電話があったようです。
 入試の成績だけで考えると、一番下の順位からスタートだから頑張らないとね、なんて冗談交じりに送り出しましたが、半年後、中学校のパンフレットに彼女の写真とインタビューが載っていました。充実した生活を送れる学校にめぐりあえたのだなと感じます。
 あれから6年。「大学の進路、決まりました!」とクラス10人のうち7人も集まってくれました。だれが天皇で、だれが環境大臣で、というのもバッチリ覚えていました。彼女の進路はというと……建築学科に入るとのこと。あの頃の夢に、一歩近づいています。
 グループとして長く長くかかわることで、大切なものを忘れずに縦に成長していく姿が見えています。それと同時に、出逢った仲間たちとの横のつながりの強さを教えてもらえることも、また嬉しい限りです。

花まる学習会 梅崎隆義