花まる教室長コラム 『心のアンテナを大切に』舘岡聡美

『心のアンテナを大切に』2026年7・8月


「お元気ですか? 舘岡先生にお世話になったRです。都立小石川中等教育学校でがんばっています。特別枠で推薦してもらい入学ができました。Iキューブやなぞぺーでワクワクしながらたくさん考えた経験が、自由研究に取り組むときに役立ったと思います。先生には保育園に通っていたときから楽しい授業をしていただきありがとうございました! 僕の好きなことも温かく見守ってくださったことが本当に嬉しかったです! これからも楽しみます!!」

 ふいに届いた手紙でした。彼の字を見て、一緒に過ごした思い出が一気に頭のなかを駆けめぐりました。
 Rが年中の頃、私は授業で「Iキューブの見本とは別のしまい方」をいくつか提示しました。そのなかで、「四隅を一つずつ空けてしまうことができるよ」とさらっと言ったことがあります。すると、その約3か月後、Rが授業後に私のところにやってきて、「先生……、ヒントください」と言ってきたのです。驚きました。この3か月間、彼はずっと試行錯誤していたのです。ここまで粘ることができる彼です。いきなりできるようにしてしまったら達成感や快感は半減してしまうだろうなと思い、お母さんと相談して、毎週の授業で一つずつヒントを渡して次の授業までの1週間で試行錯誤をしてくる、ということを続けました。

 彼の、もう一つ忘れられないエピソードがあります。小学2年生の夏、授業後に「先生に見てほしい」と取り出した巻物。その夏に提出予定の自由研究でした。地下鉄で花まるに通っていた彼は、あるときふと不思議に思うことがありました。「駅によって、電車が入ってくるときの風の強さが違う」ということです。いつも通り「なんで?」と尋ねたその瞬間をお母さんが逃さず、「調べてみない?」と提案したそうです。
 巻物には、手描きの路線図とともに、「調査条件」「各駅で風を感じはじめてから、何秒後に電車が到着するのか」「風の強弱」が書かれていました。「すごいね!」と感動している私に、Rは解説しながら「調べていくうちにおもしろいことがわかった!」と興奮気味にあるページを見せてくれました。
 「駅員さんにきいてみました」という取材記事には、「霞ヶ関」「永田町」「国会議事堂前」、これらの駅では特に風圧を強く感じ、駅員室を訪ねて取材してみると、これらの駅は国の重要施設が近いため、毒ガス対策として「通風孔」が設置されていないことがわかった、とまとめられていました。
 それを読んだとき、鳥肌が立ちました。私もふだん使っているその駅で、そんなことを感じたこともなければ、不思議に思ったこともなかったからです。「電車好き」という彼の興味から、その感性を通して学ばされたのです。

 その後も彼の好奇心は止まりません。お茶の水で開催していたアルゴクラブ(現:算数脳ラボ)の体験時に立ち寄ったJAXAの施設に魅了され、その好奇心は宇宙へと広がっていきました。「はやぶさ」の知識はものすごいものでした。私の故郷にもロケット実験場があって「はやぶさ」の実験がなされており、それなりに情報に触れていたので知識はあるほうだと思っていたのですが、簡単に彼に超えられたことを覚えています(毎回作文のネタになっていて、表現力が一番伸びたのもこの頃だったように思います)。
 こうして、「なぜ?」を毎年調べ、サイエンスコンクールに応募しつづけたそうです。

 大人になって、活き活きとされている方にお会いすると決まっておっしゃることがあります。「いまが一番楽しい!」「未知のことに挑戦するのがおもしろいじゃん!」 。彼らの活躍の根源は「ワクワク」なのです。

 子どもは素晴らしいアンテナをもっています。その「好き」のアンテナを育てるには、大人のかかわり方と眼差しが鍵をにぎる、と日々実感させられます。
 お母さんがおっしゃいました。「私が興味がないと思い込んでいたことも、一緒にやってみたらおもしろいのです。私はRに好奇心を育ててもらいました」と。

 花まるグループでも「自由研究コンクール」が開催されます。今年の夏、お子さんと一緒に「ワクワク」の種を見つけてみてはいかがでしょうか。

花まる学習会 舘岡聡美