松島コラム 『方法の原理』

『方法の原理』 2019年5月

 「令和」が発表されました。仕事がら来年の入試ではどんな元号にまつわる問題が出るのか、気になります。算数では、元号や西暦をテーマにした問題がときどき出題されます。
 昭和元年は1926年ですから、昭和55年は、55+25=80で1980年です。平成元年は1989年ですから、平成10年は、10+88=98で1998年です。こうしたことを知っていると、「年れい算」という問題で、元号をまたいで年れいを計算する時に役に立ちます。令和元年は今年2019年ですから、令和2年は、2+18=20で2020年になります。算数の講師の間では、「元号に018(れいわ)をたす」ということで、地味に盛り上がっていました。受験生として絶対に必要な知識ではありませんが、過去には上記のような丁寧な導入例が示されないまま出題されたこともありましたので、知っておいてもよいと思います。
 また西暦を素因数分解して約数の個数などを考えさせるような問題もあります。ちなみに、2019=3×673となり、約数の個数は4個、2020=2×2×5×101となり、約数の個数は12個です。2012年に出版した「文章題の合格点が面白いほどとれる本」(中経出版)でも、2020の素因数分解までは紹介していますが、それ以降の2021の素因数分解がどんな形になるのか、またこの機会に約数や素数についていろいろと調べてみると面白いと思います。
 さて、巷にはマニュアル本と言われるものが溢れています。「〇〇ダイエット法」「〇〇日間で話せる英会話」「〇〇合格マニュアル」など、ついつい手に取ってしまいそうなタイトルの本が山積みです。しかし、実際に本の通りにやってみてもうまくいかないということが多いのではないでしょうか。身もふたもない話ですが、その理由は、その方法で成功する条件がすべてそろっている人にしか通用しない方法が書かれているからです。極端な言い方かもしれませんが、もしみんながうまくいくような方法があるとすれば、それはすぐに広まり多くの人が知っているはずですから、その段階で本にまとめて出版する価値はなくなっています。奇抜な方法ほど条件に当てはまる場合にしか効果はないわけです。
 本質行動学という新しい学問の中に「方法の原理」という言葉があります。「方法の有効性は、状況と目的に応じて決まる」という当たり前ことなのですが、前例や慣習、自身の経験や外の評判にとらわれたり、唯一の正しい方法があると信じ込んでしまったりして、現状から抜け出せないケースがあります。学習環境、子どもの性格や現状の学力、成熟度やそれぞれの目標、様々な要因によって学習の仕方は違うはずですし、そのたどる過程も誰一人として同じにはならないと考えるほうが自然だと思います。ぜひとも保護者の皆様には、そうした目でわが子を見守っていただき、今の学習の仕方がうちの子に合っていないのではないか?と感じることがあれば、いつでも所属校の担当者にご相談ください。
 最近は、売れ筋の本をプロのライターが要約して、それを閲覧できる会員制サービスが人気のようです。本は読みたいけどなかなか時間もないし、買ってはみたものの、タイトルと中身がずいぶんかけ離れていて、途中で読むのをやめたという経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。こうした要約サイトのよい点は、内容をざっとつかんでから購入するということもできますし、その本に魅力を感じなければ要約だけでも十分という選択もできるということです。要約だけで読んだつもりになるのではなく、あくまでも本選びの入り口として使うのがよいと思います。もちろん、方法の有効性は状況と目的に応じて決まります。
 他にも、「アクティブ・ブック・ダイアログ(ABD)」という新しい形の読書会も静かなブームです。一冊の本をその場に集まった人と分担して読み、順番に内容をアウトプットして共有、その後対話をするという形です。ABDのよいところは、事前に読んでくる必要がない、分厚い本でも人数によっては2、3時間で内容を把握できる、共有が前提になっているのでそれを意識した読み方をするようになる、対話によって自分や相手の感想、考えを深めることができる、ということです。実は私もオンラインのABDにときどき参加しています。花まるグループの本を教材にするときもあります。どこかでお会いする機会がありましたら、その際には宜しくお願い致します。

スクールFC代表 松島伸浩