松島コラム 『地球はひとつ』

『地球はひとつ』 2019年8月

 「SDGs(エス・ディ・ジーズ)」という言葉をご存じでしょうか。英語では、「Sustainable Development Goals」、日本語では、「持続可能な開発目標」と訳されます。2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193ヶ国が2030年までに達成しようと掲げた目標のことです。17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。17の目標とは、「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」「3.すべての人に健康と福祉を」「6.安全な水とトイレを世界中に」「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「11.住み続けられるまちづくりを」「12.つくる責任つかう責任」「13.気象変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」などがあります。これらは、一つの村、一つの地域、一つの国の話ではなく、一つの地球の問題として、誰も取り残さないことを目指し、先進国も途上国も一丸となって取り組むべき課題と位置づけています。たとえば、国際シンクタンクであるGFN(グローバル・フットプリント・ネットワーク)によれば、2018年のアース・オーバーシュート・デー(1年間に地球が生産または再生できる資源を使い果たす日)は、前年よりも2日早い8月1日だったそうです。同様に日本のアース・オーバーシュート・デーを計算すると、世界よりも約3ヶ月も早い5月10日になるというのです。また世界中の人々が日本人と同じ生活をするには、約2・8個分の地球が必要になるというデータもあります。いずれにしても人類は、利息(自然の恵み)を生み出してくれるはずの貯金(生態系そのもの)を取り崩して生活している状態なのです。これまでこうした環境問題については、企業のCSR活動としての取り組みが求められてきました。しかし、実際に環境に影響を与えている活動の6割以上が家庭にあると言われています。私たち一人ひとりの問題として行動を起こさなければ、いつしか地球の資源は底をつくということがはっきりしているのです。
 もちろんこれは大人だけの問題ではありません。「SDGs」の17の目標は、子どもたちが近い将来必ず直面する問題です。それは決して開発途上国だけのことではなく、急速に進む日本の少子高齢化から生まれてくる様々な問題も含んでいます。子どもたちには、自分事としてこうしたことに関心を持ってもらいたいですし、そのためにも家庭でいろいろなテーマについて話し合う時間をつくってほしいと思います。実際に中学入試でも、「SDGs」に関連する内容が様々な形で出題されています。
 また最近では、「SDGs」を題材にして授業を行う学校や模擬国連に参加する学校など、世界の環境問題、格差問題の教育に力を入れている私学も増えています。SGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)指定校や国際バカロレア認定校では、高校での海外研修や留学を積極的にすすめています。今の中高生には、こうした世界を知る機会が豊富に用意されています。チャンスがあれば、ぜひ世界から見た日本の姿を自分の目で確かめてきてほしいと思います。そこで感じこと・考えたことは、その後の人生に大きな影響を与えてくれるかもしれません。もちろん留学することがすべてではありません。ただ、「自分さえよければいい。私には関係ない」という気持ちだけは持ってほしくはありません。「すべての人が幸せになる。これを邪魔している最大の敵は、私たちの心の中にすむ隣人の苦しみ、痛みへの無関心ではないでしょうか」とはマザーテレサの言葉です。広大な宇宙からみたら地球で暮らす私たちはすべてが隣人なのかもしれません。
 FCや道場に通う子どもたちには、困っている人を見かけたら、自然に手を差し伸べることができる人になってほしいと願っています。

スクールFC代表 松島伸浩