松島コラム 『計算ミスは減らせるのか』

『計算ミスは減らせるのか』 2022年6月

 今年の4月から月に一度、ABCラジオ(朝日放送)の「清水章弘の合格への道」(毎週金曜日17時~17時10分)という番組に出演しています。これまでは関西地域にお住まいの方しか聴けませんでしたが、6月よりVoicyという無料のスマートフォンアプリで過去の放送回も聴けるようになりました。通勤や家事・育児のすきま時間などにぜひお聴きください。8月からは花まる学習会やスクールFCの講師も出演いたします。
 5月の放送回のテーマは、「計算ミスを減らす方法」でした。私の持ち時間は正味5分くらいでしたので、そのなかでお話ししたのは一つだけ、「計算練習をする際には時間を計る」ということでした。「そんなこと?」と思われるかもしれませんが、計算に限らず自学をするうえで大切なことは、時間を意識して集中して取り組むことです。小中学生にとって集中できる時間はそう長くはありません。その点では計算練習は、時間を意識して集中力を鍛えることができる、ちょうどいい課題です。
 実際のテストでは「見直しをする」ということもミスを減らすためには効果的です。これも当然のことではありますが、入試直前に計算ミスが減ってくるのは、一つには見直しの精度が上がるためだと感じています。「見直しをしなさい」と何度言われてもミスが減らないのは、子ども自身が見直しのやり方を知らなかったり、本気で見直しをした経験がなかったりすることが原因ということもあるのです。
 コロナ前の話になりますが、スクールFCでは8月に「勉強合宿」という4泊5日の合宿を行っていました。約300名近い子どもたちが日常生活をともにしますので、感染リスクを考え現在は実施を見送っていますが、この勉強合宿では、朝の6時半から計算や漢字、英単語などの小テストを行っていました。寝起きで頭が働かない時間帯ですから、初日はミスを連発する子が出てきます。どの子も次はがんばろうと臨むのですが、翌日もミスはなかなか減りません。そこで合宿の途中から次のようなルールを導入していました。
「一問正解で2点、不正解でマイナス3点」
たとえば問題が10問あるとすると、6問正解しても4問不正解なら得点は0点になってしまいます。このルールを導入以降、クラス全体でミスが減り始めます。子どもたちの何が変わったのかというと、ルール導入前では解き終わったらぼーっとしていた子が、ルール導入後は制限時間ギリギリまでミスがないかを確認していたという、いわば当たり前の光景でした。
そのときの、中3の生徒とのやりとりを思い出します。
生徒「こんなに真剣に見直しをしたのは初めてです」
私「これまではどうやっていたの?」
生徒「間違っていそうな問題を1、2題確認して終わりにしていました」
私「今回は?」
生徒「時間があったので全問解きなおしました」 
私「ミスは見つかった?」
生徒「ありました。解きなおしてよかったです」
個人差はありますが、自分が間違っていないだろうと思うところにミスは潜んでいます。危なそうな問題は慎重にやっているので意外に間違っていない。むしろ大丈夫だろうと思っている問題で勘違いしていることがあります。しかし、この「勘違い」や子どもがよく口にする「思い込み」や「うっかり」といった言葉は、鵜呑みにしてはいけない場合があります。計算のやり方に問題があるのに、本人が気づいていないときがあるのです。
 日頃、私は問題の解き方については子どものやり方を極力尊重し、効率的な解き方(公式や裏技など)を教え過ぎないようにしています。しかし、計算については「いかに効率よく解くか」に重点を置いて指導しています。ミスはゼロにはできませんが、やり方次第で減らすことはできます。
もうすぐ夏休みです。この機会に1学期に学習した計算問題を完璧にできるようにしておきましょう。小学生は小数や分数計算、中学生は文字式、方程式、因数分解や平方根など、2学期ではこれらの計算力が重要になってきます。
 スクールFCでは通常の夏期講習のほかに、小3対象の理社イベントや、勉強合宿にかわる「サマーチャレンジ」(各校開催)など、楽しい企画や充実した内容の講座をご用意しています。ぜひご参加ください。

スクールFC代表 松島伸浩